フランスといえばヨーロッパを代表する国。そして、その首都であるパリは、世界でもトップクラスの経済都市として位置付けられています。
労働時間が短く、バカンスを謳歌(おうか)する国としても有名なフランスですが、経済大国・経済都市としての発展と休暇の多い生活のバランスは、どのような労働環境から生まれているのでしょうか?
フランスに住み、実際に現地での仕事を経験した私から、パリをはじめとするフランスで働くメリットとデメリットを紹介したいと思います。
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パリで働くメリット
メリット1. パリは日本人が多く暮らしやすい
外国人がいるのが当たり前
フランスは国民の10パーセント以上を移民が占める移民大国です。中でもパリは大都市だけあって、フランス国内からだけではなく世界中から仕事や留学などで人が集まってきます。
外務省の統計によると、2018年10月現在フランス全体で約4万4千人の日本人が在留していますが、その約4割がパリにいます。
そのため、パリには日本人向けのレストランや書店などもあって、ある程度までは日本と同じような感覚で住むことも可能です。また、日本人向けの求人や賃貸物件も充実しています。
そんな都市で暮らし、働くのは、外国人としてはとても居心地が良いです。
地方都市よりも利点が多い
現在、私はフランスの地方都市で暮らしているのですが、日本食材は手に入りにくく、パリより高価です。パリに比べて外国人も少なく、日本といってもどこにあるどんな国なのか分かってもらえないこともあります。
パリではありがたいことに、日本人というと好意的に見てもらえることが多いです。それは、パリに住む日本人が一定数いることで認知度が高く、さらに日本人に対するイメージが良いことが理由だと思います。
メリット2. みんなが正規雇用
フランスにはアルバイトというものはなく、雇用期限で分けられている次の2つが主な雇用形態になります。フランスで働く労働者の約9割がこれらの正規雇用契約で雇われています。
- 無期限雇用契約(通称:CDI):雇用契約に期限がない。
- 期限付雇用契約(通称:CDD):雇用契約に期限がある。最長18ヶ月、期間中の更新は1回まで。それ以上雇用を継続したい場合はCDIへ転換しなければならない。
CDIとCDD、この2つの雇用形態の差は雇用期間に定めがあるかどうかだけで、有給休暇など福利厚生の待遇の差、時間当たりの給与の差はありません。
私はCDDでフルタイムで働いたことも、CDIでパートタイムで働いたこともありますが、本当に雇用期間が違うだけで、そのほかの待遇の違いは全くありませんでした。
メリット3. 最低賃金が高い・法定労働時間が短い
世界的にも高めの最低賃金
フランスの2018年の法定最低賃金(SMIC)は時給9.88ユーロ(約1,265円)で、ヨーロッパのみならず世界でも上位に入るほど高額です。
またフランスには、同一の仕事(職種)に従事する労働者は皆、同一水準の賃金が支払われるべきだという同一労働同一賃金の概念があります。
そのため、同じ仕事をしているのに性別、年齢、人種、宗教等によって賃金に差をつける差別に当たるとして禁止されています。これは、労働条件が悪くなりがちな外国人にはありがたい制度だと思います。
給与は、合計支払額(Brut)から社会保障負担金が差し引かれた後、手取り額(Net)を手にすることになります。だいたい提示された給与額から25パーセントを差し引いた金額が手取りとなります。
※1ユーロ=128円(2019年4月現在)
週の労働時間は35時間
フランスの法定労働時間は35時間/週と圧倒的に短いのが特徴です。
企業によっては40時間など、もう少し長く設定していることも多いです。40時間に設定されている場合、5時間は時間外労働として換算され、賃金が25%割増で支払われます。
ただし、最長労働時間は1週48時間で、超える場合は罰金が適用されます。
給与額と勤務時間のズレに注意
気をつけなければいけないのは、合計支払額が35時間分のものか、その会社で定められた時間分のものかをしっかり確認するということです。
私が働いたある会社の話ですが、面接のときに給与額を伝えられて満足できる金額だったので喜んでいたら、それは37時間/週のものであることが後になって分かりました。
面接で聞き間違えたのかと仕方なく思いましたが、後から入ってきた同僚たちが次々に最初の給料明細を見ながら「面接で言われた金額と違う!」と言っていたのを聞いて、会社側がわざと給与額と勤務時間を分かりづらく説明していたのだと気付きました。
面接のときにしっかり賃金と労働時間を確認した方が良いです。
メリット4. バカンス(有給休暇)が取りやすい
フランスでは年間で5週間の有給休暇を取ることができます。やはりバカンス大国ですね。日本のように有休未消化ということもなく、みな自分の権利として全てきっちり取得します。
夏にまとめて取る人が多く、夏はバスなどの公共交通機関の本数は減り、お店は閉まり、個人の歯医者や主治医などもいなくなるため、街は閑散とします。
自分が「客」「旅行者」でいるときは不便に感じましたが、「労働者」の立場からするとしがらみがなく堂々と休暇を取得できるので気が楽です。
パリで働くデメリット
デメリット1. パリは住まいが見つけにくい・家賃が高い
東京ほど公共交通機関が発達していないせいもあり、パリとパリ周辺の市に人口が集中していて家賃も高騰を続けています。
私もパリでの家探しがトラウマになっているほど大変で、退居が決まるたびに約3ヶ月間、就職活動のように毎日新着物件をチェックして内覧のアポイント取りの連絡をしました。
友人からも、半年以上を物件探しに費やしたとか、子供がパリ郊外の学校に進学が決まっていたのにパリ市内に好条件の物件が現れ、結局子供の進学をあきらめて物件の方を取ったなどの話を聞きます。
それほど、パリでは希望する物件にめぐり合うことが難しいのです。
デメリット2. 税金が高い
前述したように、毎月、給与から年金や社会保障などの負担金が25パーセントほど引かれますが、年末にさらに所得税が課せられます。これは年収によって比率が変わりますが、フランスの平均年収を稼ぐ人なら30パーセント程度です。
消費税も20パーセントと高いため、フランスに住んでいるととにかく税金の支払いについて意識させられることが多いです。
デメリット3. 手厚い失業保険で労働意欲が湧きにくい?
社会保障が手厚いので、もちろん失業保険も手厚く、EU圏内でもっとも好条件だと言われています。
失業理由にもよりますが、最長で2年間、50歳以上なら3年間、失業保険が支給されます。上述したCDD(期限付雇用契約)でも4ヶ月働けば失業保険受給の権利が発生します。
すでに、いったんCDI(無期限雇用契約)で雇用されると解雇されにくいと言われているのに、万が一解雇されたとしてもこの高待遇なので、やはり働く意欲がなくなる人も中にはいると思います。
手厚い社会保障というのは本来メリットのひとつなのですが、フランスの失業率が約10パーセント(2018年)というのは、仕事が見つからないという理由以外にこの充実した失業保険のためだとも思います。
まとめ~無理をしすぎない働き方
フランスに住んでみると、なぜこんなに社会が機能していないのに改善しないのだろう?と思うこともありますが、自分が労働者側に立つと、無理をしすぎない働き方ができる社会であることが分かりました。
無理をしないということは、子育て中の女性でも、高齢者でも、労働に参加し続けられるということだと思います。
少ない力で細く長く、そして多くの人が労働に参加できる社会であることが多様性を生み労働力を高め、結果的に世界的経済大国でいられる理由かもしれません。
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