海外で思いがけず怪我をしてしまったら、どうしたらいいか動揺しますよね。しかし、その国の医療システムを知っていて、どのように病院に行けばいいか、どんな流れで治療していくかを知っていれば、かなり気持ちが違ってくるでしょう。
私はアイルランドで足を骨折した経験があります。今回は、そのときの体験談と救急病棟への行き方、治療の流れを紹介したいと思います。病気の場合も流れは同じです。是非参考にしてくださいね。
※2019年6月、1ユーロ=122円
アイルランドの基本の医療制度
アイルランドの医療制度は、HSE(Health Service Exective)の管轄のもとで成り立っています。ホームドクター制で、どんな病気や怪我のときでも自分のかかりつけのGP(General Practice)に行かなければいけません。
GPとは一般開業医で、登録したGPにのみ行くことができます。GPでは簡単な診療だけなので、さらに詳しい検査や治療が必要な場合は、GPから紹介状を書いてもらい、専門医に診てもらいます。
GPの診察料は50~80ユーロ(6500~10,400円)です。保険に加入していればカバーされますが、種類によって戻ってくる金額は違います。
子供も無料ではありません。無職の人や給料が一定金額に届かない場合のみ、メディカルカードが発給され、無料で診察を受けることができます。
専門的な治療の場合も、無料の場合と有料の場合があります。
怪我をしたときの病院への行き方
GPへ行く
急を要さず動けるようなら、かかりつけのGPへ行きます。ウォーク・イン(Walk in)と言って、飛び込みで診てもらえるGPもありますが、ほとんど予約制です。電話で予約を取ってから行きます。
怪我の症状によって、レントゲンが必要だったり縫う必要があったりする場合は、A&E(緊急病棟)へ行くように紹介状を書いてくれます。ほとんどの場合は、すぐに行くように勧められます。
私の場合は、骨折に気づかず日数が経ってから受診したので、次の日の朝一番に行くように言われました。
アージェント・ケア・GP(Urgent Care GP)へ行く
GPの時間外や休診日のときは、各地域にアージェント・ケア・GP(緊急ケアGP)があります。かかりつけ等関係なく誰でも行けます。
場所によりますが、平日は午後6時〜午前10時まで、休日は午前10時〜午後6時までやっています。
通常ダブリンではイースト・ドック(East Doc)やダブ・ドック(Dub Doc)、コークではサウス・ドック(South Doc)、ゴールウェイではウエスト・ドック(West Doc)と呼ばれています。
電話をかけて、名前や誕生日などの基本情報、病気や怪我の症状を伝えます。すると、看護師からアドバイスをもらえるか、病院へ来るように言われますので、指示に従います。
参考ウェブサイト
HSEのホームページから、各地域のアージェント・ケアが探せます。
- West Doc:http://www.westdoc.ie
- South Doc:http://www.southdoc.ie
救急車を呼ぶ
交通事故など自分では動けないくらいひどい場合は、救急車を呼びましょう。999か112に電話をかけます(112はEU共通の電話番号です)。救急車は、直接A&Eへ連れて行ってくれます。
電話代は無料ですが、救急車は有料です。アイルランド人とEU出身者は100ユーロ(13,000円)。EU以外の出身の場合はそれ以上にかかります。保険でカバーされるので、救急車代も請求できます。
A&Eとは?
A&Eとは、Accident&Emergencyの略で、救急病棟のことです。救急車で運ばれるときだけでなく、GPから紹介状をもらって行くこともできます。
GPでは簡単な診療や処方箋は出してくれますが、治療行為はしません。そのため、病気でも怪我でもレントゲンや検査、治療が必要な場合はすべてA&Eへまわされます。
ですので、基本的にA&Eはいつもとても混んでいます。6~8時間待たされることは珍しくありません。私の旦那は2回A&Eに行きましたが、どちらとも夕方A&Eに行き、帰って来たのは夜中でした。
私は朝一番に行ったので、運良く2時間半で終わりました。それでも、レントゲンだけで2時間半。日本と比べればかなり長いですね。
A&Eのメリット・デメリット
メリット
GPからの紹介状があればレントゲンや治療は無料です。GPでは診察料がかかりますが、専門の治療がいる場合は無料です。
ちなみに、救急車で、またはGPを通さず直接A&Eに行くと、一律100ユーロ(13,000円)かかります。EU以外の出身の場合はそれ以上です。
A&Eは一度きりではなく、次の診療にも行かなければいけないこともあります。その場合は無料の場合と有料の場合があります。
デメリット
とにかく待たされます。先ほども書いたように、6~8時間待たされることが普通です。緊急を要する患者や子供を優先するので、緊急度の低い人は待たされる時間が長くなります。
レントゲンを撮るだけに5時間待たされたりするので、皆できるだけA&Eは行きたくないと考えています。もう何十年も長時間待たされることが問題になっていますが、未だに大きな改善はありません。
年配あるいは症状が悪い場合でも、A&Eの廊下に簡易ベッドで寝かされて一夜を過ごす人も多数いるほどです。
治療の流れ(体験談)
怪我からGPまで
私は3年前のクリスマスイブの日に、自宅ではしごを1段踏みはずし足をくじいてしまいました。歩くのが困難なほど腫れましたが、クリスマス時期はGPも休みだし、まさか骨折しているとは思わず2週間放置。
しかし痛みと共に痺れが出てきたためGPを受診しました。GPでは、医者が私の足を見るなりすぐに骨折しているだろうと言い、私は問診と触診後、A&Eあてに紹介状を書いてもらい、翌日の朝一番にA&Eへ行きました。
A&Eから外科のある病院へ移動
A&Eではレントゲンを撮りました。医者も不在で怪我をしてから日数も経過していたので、ギブスではなくしっかり固定できるブーツを履くことになりました。
次の週にまたA&Eに行き、骨折と判明。外科のある病院へ予約を入れてもらい、外科へしばらく通う事に。
外科からリハビリへ
外科でもまたレントゲンを撮り、10日に1度の割合で病院へ行きました。毎回、触診や問診をしてもらい、3週間後再びレントゲンを撮り、ブーツを取ってもいい許可がおりたのです。
ブーツが取れた後は、フィジオセラピー(physiotherapy)というリハビリが始まり、3度ほど通って終了でした。
まとめ
日本人の多い国では、日系病院があったり通訳をつけたりすることもできますが、アイルランドでの選択肢は公立病院か私立病院のみです。私の知っている限りでは、ほとんどの人が公立病院を受診します。
A&Eは長時間待たされますし、病院はベッドが足りない、急を要しない手術は1~2年待ちなど問題点も多々あります。それでも、骨折時にはリハビリまできっちりやってくれて、アイルランドの医療は手厚く、信頼もできると感じました。
救急病棟へ行くことになっても、きちんとした治療を受けられますので安心してくださいね。
専門医やA&Eに行く際には、身分証明書 (GNIB 現IRPカード)を持参することと、保険加入者は有料の場合にレシートをもらうことを忘れずに!
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