アイルランドで子供と一緒に住むことになったり、これから家族を持とうと考えていたりする人には、アイルランドの学校制度がどんな感じか気になりますよね。
学校の決め方や小学校が始まる年齢、学校での日々の生活など、日本とちょっとした違いがあります。
日本に比べると、学校探しや送迎など親が関わる部分が多いアイルランド。今回は、アイルランドで小学生を育てている在住者の目線で、アイルランドの学校制度、特に小学校の種類や仕組みについて紹介します。
アイルランドの学校制度
アイルランドは日本と同じく、初等教育・中等教育・高等教育の3段階に分かれています。
初等教育の小学校(Primary school)が8年間、中等教育の中学・高校一貫のセカンダリー・スクール(Secondary school)が5〜6年、高等教育の大学が4年です。義務教育は5歳から15歳までで、日本より少し長いのが特徴です。
新学期は9月に始まり、3学期制です。通常、入学式や始業式はなく、初日から授業が始まります。
日本と比べると、夏休みが長いです。小学校では2ヶ月、セカンダリーでは3ヶ月もあります。夏休みの間は、宿題は一切ありません。
小学校入学前は、プレクスール(Preschool)と呼ばれる、小学校に行くための準備の学校に行きます。
プレスクールとは
プレスクール(Preschool)は小学校に行く前に通う場所で、3歳から2年間無料で通うことができます。基本的には幼稚園と同じような感じですが、9時〜12時までの3時間のみです(午後に3時間のところもあります)。
プレスクールでの生活は、集団生活に慣れること、お絵描きや遊びを通して学ぶことが中心で、少し数字やアルファベットを書くことはあっても本格的ではありません。
申し込み方法
プレスクールへの応募は、親が行かせたいところに直接申し込みに行くだけです。
申し込みに行く時期は、たいていはプレスクールへ行く1年前で大丈夫ですが、住宅地など子供が多い地域だと既に満員で入れない場合もあります。そうした地域では、2年前など早めに申し込みをすることも可能です。
最初の申し込みは親の名前と電話番号を伝えるだけの簡単なもので、入学する年の6月頃に申込書を提出します。最近では予防接種を受けた証明など、以前はいらなかった提出物が必要なところもあります。
小学校の決め方
アイルランドの小学校は、5歳になる年から入学することができますが、親が1年遅らせたいと思えば、6歳になる年から入学させることも可能です。
アイルランドの新学期は9月からなので、誕生日が3月以降の子は、1年遅らせて入学する子が多いです。そのため、日本の小学校より1学年の年齢の幅が大きいです。
学区もないので、基本的にどこの小学校へでも行くことができます。家の近くの小学校に通う子が大半ですが、親の仕事の都合で、家の近くの小学校より職場の近くの小学校に通わせたいと思えば通わせることも可能です。
体験入学と説明会を参考材料に
小学校も、プレスクール同様早くから申し込めます。特に人気の小学校は、早く申し込まないと入学が難しいときもあります。私立の小学校はほとんどないので、受験や面接はありません。その点は気が楽です。
たいていは各小学校で体験入学の日があります。子供が実際に学校生活を数時間体験し、親が説明会を聞きに行きます。
どこの小学校にしようか悩むときは、いくつか申し込んで、体験入学と説明会の結果で決めてもいいでしょう。
小学校の種類
アイルランドの小学校は3種類あります。どの小学校も無料です。ただし、教科書は有料、Contribution feeと呼ばれる学校教材への出資などは必要です。子供保険にも加入します。
公立小学校(National school)
正確に訳すと「国民学校」ですが、一般的な公立の小学校を意味します。アイルランドのほとんどの小学校が公立で、第2言語である英語で授業をします。
アイルランドは国民のほとんどがカトリック教徒で、昔は教会の力がとても強かったため学校の運営もカトリック教会が行っていました。
公立小学校は、今でもカトリックの影響を大きく反映しています。カトリックの授業は必須、コミュニオンやコンファーメーションと呼ばれる宗教儀式も学校で練習し、小学校の近くには必ず教会があるため、儀式もその教会で行います。
カトリック教徒でなくても入学可能
厳しい小学校では、洗礼を受けていない子は入学できない規則もありました。今年(2019年)からやっとこの規則はなくなるそうです。
現在では、アイルランドには色々な人種が増えたので、宗教の授業も選択できるようになっています。我が家の娘達も公立小学校に通っていますが、洗礼は受けておらず宗教儀式にも参加していません。
無宗教の小学校(Educate together)
公立小学校がカトリック教なのに対し、エデュケート・トゥギャザーは無宗教です。
公立小学校でも宗教の授業を受けないという選択もできますが、最初からカトリックの環境下に子供を置きたくないという考えなら、無宗教の小学校であるエデュケート・トゥギャザーに行かせることもできます。
無宗教なので、外国人が多く通っています。公立小学校に比べるとかなり数が少ないため、入学させたい場合は、小さい年齢から申し込みをしなくてはいけません。田舎の方にはないことも多いです。
アイルランド語小学校(Gaelscoil)
アイルランド語小学校は、全てアイルランド語(ゲール語とも言います)で授業を行う小学校で、ゲールスコルと呼ばれています。
アイルランドの第1言語はアイルランド語で、ゲールタクト(Gaeltacht)と呼ばれるアイルランド語使用地域では、小学校もアイルランド語のみです。
近年は母国語を守ろうとする活動が強いので、ゲールタクト以外にもゲールスコルがあります。国が力を入れているだけあり、新しくできるゲールスコルはとてもモダンで立派な学校ばかりです。
日本語を学ぶ環境
アイルランドに全日制の日本語学校はありません。日本語補習校が首都ダブリンにあり、毎週土曜日にダブリン近郊の子供達が通っています。その他の地域にはありません。
先日、日本大使館の方とお話する機会がありました。アイルランドは、在留届けを出している日本人が2017年時点で約2,300人だそうです。そのうちの約半数が首都ダブリンに住んでいます。そのため、ダブリンには日本語補習校が2校あります。
しかし、他の地域には日本人がそれほどいないため、残念ながら日本語が学べる学校はありません。
子供の日本語を上達させるには 、かなり親の努力が必要です。我が家の娘達も、私と少し勉強する程度なので、なかなか日本語が上達していないのが現状です。
小学生とその親の生活
授業時間が短め
小学校の最初の2年(5歳と6歳)はインファンツ・クラス(Infants class)と呼ばれます。
日本の幼稚園は午後3時までだと思いますが、アイルランドのインファンツは午後1時半(学校により多少前後します)に終わりです。娘の小学校は午前9時〜午後1時半です。
1年生(7歳)から午後2時半までになります。6年生でも同じです。高学年になると、明らかに日本より授業時間が短いです。
小学校では部活動はありませんが、アフター・スクール(After school)という活動があり、曜日によってヨガやギター、アイリッシュ・ダンス、フランス語などのレッスンが受けられます。希望する子だけ参加でき、レッスンの値段も良心的です。
アフター・スクールを取った場合は、午後3時半に終わります。
4歳から宿題がしっかりある
インファンツ・クラスには4歳の子もたくさんいますが、宿題が毎日あります。日本ならまだ幼稚園の年中さんです。
毎日の宿題は、最初はぬりえやアルファベットの練習など簡単なものですが、それでも小さな子が毎日やるのは大変です。だんだん単語を覚えたり本を読んだりと難しい内容になるので、下の娘はまだまだ嫌がります。
上の子は今3年生ですが、3年生になると一気に宿題が増えます。日本のように時間割がないので、毎日大量の教科書やノートを持って帰ってきて宿題をしています。
宿題の量は学校によって差がありますが、規則やルールが少なくゆるい雰囲気の割には、IT教育も進んでいて勉強はしっかりやるようです。
どこへ行くにも常に送迎
アイルランドでは、小学校はもちろんのこと、お友達の家に遊びに行くにも習い事へ行くにも、全て親が車で送迎しなければいけません。
よっぽど街中に住んでいない限り、徒歩で小学校へ通う子はいません。歩道がきちんと整備されていない所も多く、近くても車で行かざるを得ない場所もあります。
お友達と遊ぶ約束がある場合も親同士で担当を決めて送迎します。住宅地に住んでいる子は歩いて近所のお友達の家へ行ったりできますが、そうでない場合は車で連れて行かなければいけません。
我が家は街から外れているので、全て送迎です。もしかすると、セカンダリー・スクール卒業の18歳まで送迎しなければいけないかもしれません。
今でも娘2人の学校が終わる時間が違う上、習い事やお友達の家に行くタイミングまで重なると、本当にタクシー・ドライバーの気分です。
まとめ
アイルランドへ家族と一緒に来る方は子供が小さい場合が多いと思うので、今回は特にプレスクールと小学校のことを中心にお伝えしました。少しでも参考になれば幸いです。
アイルランドは、日本の学童ほど長く預かってくれる所も少なく、親は日々の送迎も考えなければいけません。近所に祖父母など手助けしてくれる人がいないと、長時間働きに行くことも難しいです。
しかし、私は親子の時間が増えて家族の絆が強くなるかなとポジティブに考えて、日々の生活を送っています。
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