ニュージーランドでシェフをしながら永住権取得! そのプロセスとオークランドのシェフ事情

小川清美 ニュージーランドの働き方

ニュージーランド移民局のサイトには「長期不足職種リスト」が公表されていますが、そのリストに毎年載っている職業が「シェフ」というのを皆さんご存知でしょうか?(2019年9月時点)

今回は、海外移住目的のために日本でシェフとして修行し、40歳で奥さんとニュージーランドに渡り永住権を取得された小川清美さんに、ニュージーランドへの移住・永住権取得までのプロセス、そしてオークランドで働く現役シェフとしてお仕事についても語っていただきました。

海外移住を目的にシェフになる!

小川清美

私がシェフを目指したのは35歳のときです。私も妻も「海外に永住したい」という夢を結婚当初から持っていて、シェフという職業がビザを比較的取得しやすいという話を聞き、そのためにシェフの道へ進みました

まずは、知り合いが経営するイタリアンレストランで働き、そこで料理の基本を学ばせてもらい、調理師免許を取得しました。

その後は、妻と2人で全30席ほどのイタリアンレストランをオープンし実際にオーナーシェフとなったことで、シェフという仕事の実態、そしてレストラン経営の基本を学びました。

ビザ取得のために寿司職人に

レストラン経営を始めしばらくたったころに「海外移住をするには同じシェフでも日本独自の文化である寿司職人のほうがビザ取得に有利になるかもしれない」という情報を入手。

イタリア料理が好きでイタリアンの修行をしましたが、確かに海外で働くのなら「日本人がイタリアン」より「日本人が寿司」のほうが、ビザ申請の際に説得力があるだろうと思ったのです。

そこで経営していたレストランをたたみ寿司屋に就職し、そこでは寿司の握り方はもちろん、魚のさばきかた、刺身の作り方などを勉強させてもらいました。

ニュージーランドに渡る

オークランド

正直なところ、絶対にニュージーランドがいい! と思っていたわけではなかったのです。

アメリカ、カナダ、オーストラリアなども候補として上がっていたのですが、当時はその3カ国はビザの取得が難しいとされており、比較的ビザが取りやすいといわれていたニュージーランドに「まずは偵察に行ってみよう」というくらいの気持ちで行きました。

オークランドでの時間に限りがありましたので、いくつかの日本食レストランにしぼって訪問し、オークランドで働く実情を探るべくオーナーにいろいろ質問したところ、1人のオーナーが私の日本でのレストラン経営話に興味を持ち、私が寿司も握れる、とわかった途端「うちで働かない?」と言われたのです。

ワークビザが出たものの

あっという間にそのレストランのオーナーがビザの手続きもしてくれ、気づいたら1年間のワークビザが下り、「刺し場」といわれる生魚を扱うポジションを任されていました。それが40歳のときです。

しかし、喜んだのも束の間、レストランが入居しているビルが改装工事を決め、結局そこは1年で去ることになりました。想定外のことに妻と私は戸惑いましたが、とりあえずビザが切れるので、ほかの選択肢も検討すべく二人でイタリアに渡りました。

イタリアでは当時1年に1回しかビザの申請ができないということはわかっていましたが、そのためにしっかりと準備をし申請しても結局ビザが下りない、という周りの厳しい状況を見て早々と撤退したのです。

永住権取得

オークランド

そんな折、オークランドで以前働いていた雇用主から連絡が入り「レストランを再開するので寿司職人として働かないか」というオファーをいただき、再びそこで働き始めたのです。

数年経ち、ワークビザの更新料が上がったのを契機に永住権取得に乗り出しました。私の場合は、シェフとしての職業経験と雇用主からのジョブオファーがあり、また職歴・年齢・給与レベルなど必要なポイントを満たしていたので申請から1カ月で永住権が下りました

永住権取得までに1年費やす人もいますので、私は早かったほうだと思います。永住権取得までの道のりはケースバイケースですので、プロの移民コンサルタントからアドバイスを受けることをお勧めします。

オークランドのレストランで働く

小川清美

現在は、オークランドのビジネス街の中心部で、ラーメンや丼を提供する日本人経営のレストランで店長として働いています。そこでは、シェフとして働くのはもちろん、シフト作り、売上収支報告書の作成などの事務作業も任されています。

従業員は日本人のほかに韓国人や中国人が50名ほどいますので、ホールも厨房も英語でマネジメントしなければなりません。

勤務体系は、朝から夜まで1日9時間勤務とランチまたはディナーだけの1日6時間勤務の2形態のシフト制で平均週40時間勤務です。私の場合は、フルタイムで働いている妻との時間も大切にしたいのでシフト制には変わりありませんが、土・日はお休みをいただいています。

ニュージーランド雇用主のもとでニュージーランド流働き方を経験

現在のレストランで働く前は、ニュージーランド人が経営するレストランで主に肉を扱うポジションで働いていました。そこでは、日本人雇用主とはまったく違うニュージーランド流の働き方を経験しました。

その特徴としては、従業員それぞれの役割が細かく明確化されており、その為いくつかの小さなポジションが存在してました。

例えば、Kitchen Keeperといわれる片付け専門のポジションがあったのですが、私がつい皿などを洗ってしまったらKitchen Keeperの人に怒られ、「時給なのだから君が僕の仕事をすると早く帰る羽目になるから止めてくれ」と言われたのです。

また、時間が来れば仕事が終わっていなくても皆すぐ帰って行く、など正直驚きの連続でしたね。

英語力も精神力も鍛えられた

そこでは日本人は私ひとりで、ホールは全員ニュージーランド人を含む英語圏のスタッフでした。英語環境での職場に慣れていなかったため、最初は失敗だらけ。

ある日の営業終了後、私がホールの人たちのまかない食を作らなければならなかったのですが、その指示が英語で私はまったく理解できておらず、厨房を掃除し帰ろうとしたところ、お客さんはいないはずなのに注文機械からオーダーが入ってきたのです。そうです、それがまかないのオーダー……。

「言っても理解できないから機械で注文入れてわからせよう」という合理的なブラックユーモアで、ここでは英語力はもちろん、精神面でもバッチリ鍛錬させてもらいましたね。

ワーク・ライフ・バランス

ニュージーランド

シェフの仕事は何年経っても「楽しい!」のひと言です。確かに歳とともに疲れを感じやすくなってきているかもしれませんが、常連のお客さまから「今日も美味しかったよ!」とひと言お褒めの言葉をいただくと、とても嬉しくなり疲れは吹き飛んでしまいますね。

また、ニュージーランドは労働基準法で「毎年4週間の有給休暇を必ず取得」と定められてますので、まとまった休みを取って日本へ妻と帰省し家族や友人に会うことも楽しみの1つになっています。

ニュージーランドでの今の暮らしは、オフの時間も十分にあり週末は妻とトレッキングをしたりといったこともでき、ワーク・ライフ・バランスがちょうどよく取れていてとても満足しています。

まとめ~インタビューを終えて

小川さんによると、和食の海外での評価は依然として高く、日本人シェフは仕事が丁寧で責任感が強いという好印象がこの国ではありますので、これからも日本人シェフはとても重宝されるでしょう、とのことでした。

小川さんが、当初から海外移住を目的に調理師の資格を取得し、数年かけて日本でシェフの経験を積んでニュージーランドに渡られたお話はとても興味深いもので、常に目標を明確化し行動してきたからこそ、永住という夢を実現されたのではないでしょうか。

補足情報

記事中の永住権についての情報は小川さんが取得された当時の情報となり、また長期不足職種リストの情報は2019年9月時点のものとなります。

最新の情報は下記のニュージーランド移民局のサイトを参考にしてください。

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