結婚や出産、介護、夫の転勤などで専業主婦になったのち、さまざまな理由で再就職を希望される女性は多いかと思います。しかし、資格や経歴がなく、ブランクが長ければ長いほど再就職活動は不安に感じますよね。
今回ご紹介するのは、ニュージーランドで夫の急死後、14年という長いブランクを経て再就職を果たした日本人女性。仕事の探し方から再就職にいたるまでの経験談、そして現在のお仕事についてお話していただきました。
再就職活動にいたった経緯
ニュージーランドのオークランド市在住のあゆみ(仮名)です。
私は2011年にニュージーランド人の夫とオークランドに移住してきました。それまでは夫の仕事の都合で海外を転々とし、私はビザの関係もありどの国でも働くことはできなかったため、結婚以来14年間ずっと専業主婦でした。
そしてオークランドに引越し、やっと落ち着いてきたときに夫が急死しました。39歳の若さでした。
しばらくは何もする気が起きませんでしたが、家で1人でいても気分は晴れず「とにかく動かなければ」という気持ちになり再就職活動を始めました。
資格とスキルアップ
国立専門学校の無料講座を受ける
結婚するまでは東京の外資系の会社でOLをしていましたが、それも14年以上も前の話。仕事の経歴はないも同じです。
特に再就職に役立つような資格もない、コンピュータースキルもないといった感じでしたので、まずは資格取得に努めることにしました。
オークランドにはTe Wānanga o Aotearoaという国立の総合専門学校があります。そこにあるコンピュータースキルアップコース「NZ Certificate in Computing」は、政府が援助を出しているため無料。
ニュージーランドの市民権・永住権を持っていれば誰でも受講できますので、私も早速受けることにしたのです。
- Te Wānanga o Aotearoa「NZ Certificate in Computing」:https://www.twoa.ac.nz/
コンピューターコースの概要
内容は以下の通りです。
- さまざまなデジタル機器の使い方
- コンピューターの基本操作方法 (ファイルの整理の仕方・セキュリティ対策の仕方)
- ハードウェア、ソフトウェアのトラブルの原因の見つけ方と解決策
- データの同期の仕方
- MS WordとMS Excel の使い方
- MS PowerPointの使い方
- Adobe InDesignの使い方
コース修了証明書とその成果は?
内容は私が既に知っているものもありましたが、マイクロソフトWordやExcel、PowerPoint、そしてAdobe InDesignの最新版の使い方などを勉強できたのが良かったですね。また、ラップトップも無料で貸し出してくれました。
このコースは18週でレベル3までを終了するもので、最後に一定の点数をクリアした場合のみコース終了証明書が発行されます。
証明書をもらうことで履歴書に書く項目が増えます。実際に面接官が履歴書の資格特技欄の「Indesign」を見て、「おっ、君Indesignできるんだね」と言われ、現在の仕事に結びついたのだと思います。
就職活動
次にしたことは履歴書の作成ですが、その道のプロにアドバイスをもらうべく、まずは人材派遣会社にいくつか登録しました。
ニュージーランド政府の就職支援ウェブサイト「careers.govt.nz」には数多くの人材派遣会社が紹介されています。
それぞれ特徴があり、ただ履歴書を登録するだけのところやある1つの業界に特化した派遣会社などさまざまです。私は履歴書の書き方やインタビューの受け方などを教えてくれるサービスもある会社を数カ所選んで登録しました。
- ニュージーランド政府の就職支援サイト「careers.govt.nz」:https://www.careers.govt.nz (2019年8月時点)
人材派遣会社に登録
人材派遣会社に登録し、自分の履歴書の内容とお仕事の内容が合致するとメールがきます。興味がある場合は応募をすると派遣会社からテストに呼ばれます。応募者が募集されている仕事に適しているかどうかを判断するための一次試験のようなものです。
私はオフィスワーク志望でしたので、コンピューターソフトの使い方やタイピングの速さなどのテストを受けました。
その後、仕事の説明を派遣会社の担当者から受けつつ、その場で簡単なインタビューも同時に行われました。
ニュージーランドの就職活動事情
就職活動をしている中でいろいろな人と話して分かったことは、ニュージーランドは人材募集をかける際まず社内公募をする会社が多い、ということです。
人材派遣会社に委託すると募集するたびにお金がかかってしまいます 。したがって、まずは社内公募をかけて、社員の知り合いや友人のツテから人材を確保しようとしているようなのです。
そこで私もニュージーランドに来てまだ間もなく知り合いも少なかったのですが、作戦を少し変えました。亡くなった夫の会社の同僚たちに連絡をとって「仕事を探していますので、何か情報があったら教えてください」と頼み始めたのです。
役員秘書業務をゲットをしたが
いろいろな方にコンタクトを取ったのが功を奏し、ある会社の新規事業部の役員の秘書業務というお仕事を得ることができました。
しかし……1年もたたないうちにその新規事業プロジェクトは頓挫し、その部署の社員のほとんどがリストラ解雇となりました。私はまたもや就職活動に励むことになったのです。
何事も無駄な経験はない
正直、やっと得た仕事でリストラ解雇されとても落ち込みました。しかし、その会社で出会った人たちが、再び無職となった私のことを気にかけてコーヒーなどに時おり誘い出してくれたのです。私も誘いがあれば積極的に出かけるようにし、「まだ仕事探してます」とアピールしました。
そんなある日「短期のお仕事だけどやってみない?」と前の会社の友人から紹介を受け、どんな短い仕事でも経歴になると思い、「やります!」と即答。
リストラされて苦い経験をしましたが、結局はそこで知り合った友人に救われ、つくづく「無駄な経験はないんだな」と思いました。
アルバイトから正社員へ
実は、そのとき短期のお仕事をくれた会社が現在でも働いているところです。
短期3週間のオフィスアシスタントのアルバイトのお仕事でしたが、私の働いていた部署以外の業務が多忙化。その後、他部署に移動となったがために短期採用が長期採用になり、のちにこの会社で正社員となったというわけなのです。
現在は銀行向けのソフトウエア開発会社のテクノロジー部門に所属しています。
ここでは多くのソフトウエアエンジニアが勤務しており、それぞれのエンジニアのプロジェクトが円滑に期限通りに進行しているかを確認。それをレポートとしてまとめ、本社に報告するというのが私の主な仕事で、ほかにプロジェクトマネージャーのアシスタント業務もします。
オークランドの仕事環境
国際色豊かな同僚たち
国内最大の都市オークランドは移民が多いところです。社員が多国籍で、中国・インド・パキスタン・シンガポール・マレーシア・ニュージーランドといった具合に人種はさまざまです。彼らと直接話し、多様な文化と触れ合うことはとても楽しいですね。ちなみに社員で日本人は私だけです。
フレックスにフリーアドレス
仕事形態はフレックスを取り入れており、出社時間は午前8時から9時、退社時間は午後4時から5時といった感じでかなり自由になっています。
面白いのはHot Deskingシステム(フリーアドレス)を導入している点です。自分の机というものがなく、毎日どのデスクに座ってもよいのです。結局私は同じ席に座ってしまいますが、天気が良い日などは窓際の席に移ったりできますので、良い気分転換になりますね。
今後の目標
この会社で上司や同僚といった人間関係に大変恵まれていますので、今は自分に与えられた仕事を一生懸命することに専念しています。
もちろん、会社に貢献すべく、これからはさらにファイナンス系の知識を増やしていきたいと思っています。また、銀行ソフトウエア関係のニュースなどは常にチェックし、会社で新しいソフトウエアがリリースされた際はその製品について勉強もしています。
私は辛いときに友人や周りの人たちに本当に助けられました。その出会いや人間関係を大事にしながら、これからも今のお仕事を頑張りたいと思います。
まとめ~インタビューを終えて
今回インタビューを終えて感じたことは、あゆみさんが「とても行動的で前向き」だということです。
旦那様の急死という辛い出来事と14年間という長いブランクを乗り越え、再就職を果たしたあゆみさん。彼女の経験談は長いブランクの後に再就職活動をされる人にとって、参考になる点がたくさんあるのではないでしょうか。
「とにかく動かなければ」と行動した彼女の勇気に、なんだか私まで元気をもらった気がします!
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