ベトナムで保育士・幼稚園教師として働く方法

絵本 ベトナムでの働き方

私の場合は正直「運と成り行き」の要素が多いため、じっくり計画型の人にとってはあまり参考にならないかもしれません。でも海外で働くための一つの例としてとらえていただければと思います。

今ベトナムに興味がある方、将来保育士として就職を考えている方の参考に、少しでもなれば。そして今は全く考えていない方も、海外に興味を持つきっかけになればうれしいです!

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保育士・幼稚園教諭の仕事の内容・特徴

幼稚園の作品

さて保育士・幼稚園教諭の仕事についてです。皆さんのイメージ通り、様々な活動を通して子どもたちに生活習慣や必要なスキルを身につけさせるために支援やサポートをします。わかりやすく言うと、手助けする仕事です。

もちろん現地の職員も、基本的には高校や大学といった教育機関で幼児教育課程を勉強してきた有資格者です。定期的に研修に参加することが必須、と基本的なことは日本との大きな変わりはないと思います。

が、ベトナムの保育士または幼稚園の先生はほとんどが女性、そしてローカル園の実態は私にはとても衝撃的だった……ということくらいでしょうか。詳細は以下にお伝えしていこうと思います。

保育士・幼稚園教諭の転職希望が増える時期はある?

幼稚園

ベトナムの学期制度からみた転職増加時期

ベトナムの学期制度は他の海外同様9月スタート。9月に入園式があり、5月に卒園式があります。

つまり、間の6〜8月は夏休みとなるため、基本的には休園になります。が、実際は働く親の要望や園側の利益目的のため、夏季保育や預かり保育など希望者のみ子どもを預かっている園が多かったです。

なのでもし転職を考えているなら、9月の新学期に向けて当然保育士の需要も増えるため、求人が多く出る傾向はあります。

ベトナム人の国民性から見た転職増加時期

しかし、ベトナム人は日本人とは仕事に対する考え方が少し違います。

日本人なら大抵の人がこう考えます。「今やめたいけど代わりの人を探さないといけないし、会社にも迷惑がかかるから学期末までは頑張って続けよう!」「せっかくここまで見てきた子どもたちを途中で他の人に預けるわけにはいかない、自分が責任をもって最後まで見届けよう! 」。

こういったことはベトナム人はほとんど考えないため、雇用条件や会社のやり方が合わないと思ったらすぐに転職してしまいます。なので、時期はあまり関係なく求人はあるので、年間通してチャンスは多いと思います。

ベトナムの幼児教育制度と幼稚園

ベトナムの幼児教育施設は3種類ある

ベトナムには現在、下記3種類の幼児教育施設があります。

  • 保育所(生後3カ月から3歳までの乳幼児を保育する)
  • 幼稚園(3歳から6歳までの幼児を教育する)
  • 幼児学校(保育所と幼稚園の両方を併せ持ち、対象年齢は3カ月から6歳)

各施設における目的や特徴

日本では「保育園」と「幼稚園」ではそれぞれ目的や対象が違うことはみなさんご存じかと思います。が、ベトナムではどうなっているのでしょうか?

実は、ベトナムではこれら3種類の幼児教育施設はすべて教育省によって監督されています。そのため、幼児教育に関する行政はすべて一元化されているというのが現状。

保育園的要素が含まれているかどうかに関係なく、0〜3歳未満の子どもを預かる施設は「保育所」。3歳から就学前の子どもを預かる施設は(インターナショナルスクールを含め)すべて「幼稚園」ということになります。

つまり、対象年齢によってわかれているだけで、教育内容に差はないようです。

日本保育から見たベトナムの幼児教育制度の印象・実態

私が現地で実際に保育士として働いた印象です。

現段階のベトナムの幼児教育施設の実態はまだ、日本や諸外国のような考え方はありません。「遊びの中で、必要なスキルや生活習慣を自然に身につけていく」というのではなく、あくまでも「幼児教育」という教育的要素を重要視する傾向にあると感じました。

幼稚園・保育園の役割

子ども

さて、一概に「幼稚園・保育園」(就学前の子どもを預かる施設)といっても、ベトナムでは大きく3つに分かれています。ローカルの園、日系の園、インターナショナルスクールです。

それぞれに特色があるため、親は目的によって子どもを預ける園を選ぶことになるのですが、この「園選び」はとても大切!なぜなら、「脳の9割は6歳までに作られる」といわれています。生まれてから6歳までの間に過ごす環境によって、その後の人生が大きく変わるといいます。

その大事な時期を過ごすのが、「幼稚園」または「保育園」だからです。それは、ベトナム国に限ったことではなく、世界中共通して言えること。

このように、私たち保育士って、本当に責任重大なんですよね!

ベトナムの社会変化に伴う各園の取り組み

私が住んでいたダナンはホーチミンなど他の都市に比べるとまだ人口は少なく、小さな街なので、子どもを預かる施設もまだ少ない方だといえます。

しかし、近年、日系企業も含め外資系の企業の参入に伴い、当然、人口は急激に増加しています。そのため、幼稚園も現地の子どもたちはもちろん、そういった外国人の子どもたちの受け入れにも力を入れています。

園児確保の競争率は高く、保育の質はもちろん、立地や学費など、常に他園を意識していく必要があります。

厳しい競争社会の中で新入園児を確保するため、各園ではしのぎを削っています。プロモーションやカリキュラムの充実、新しい取り組みなど独自の特色を生かした保育になってきているのです。保育環境も大きく変化しています。

ベトナムの幼稚園の現状、日本の幼稚園との違い

ベトナムは「30年前の日本」といわれていることからもわかるように、他国と比べてると、まだまだ遅れている面が多いというのが事実です。それは、幼児教育においても同じです。

「しつけ」のための罰

例えばローカルの幼稚園では、子どもが何か悪いことをしてしまったとき「怒る」「殴る」「罰を与える」といった方法が使われています。「しつけ」のためです。それは、就学前の5〜6歳の幼児だけではなく、1〜3歳の乳児に対しても同じでした。

先生に怒られて遊びの時間に廊下に立たされている。給食やおやつの時間に食べ物をもらえず、待たされている(ずっと与えないのは保護者からのクレームにもつながるため、お預け状態)。こういった場面を何度も目撃しました。

また、言うことを聞かない子や騒いでいる子を静かにさせるために、大声を出します。また、おもちゃや物で壁をドンドン叩いて黙らせる、悪いことをしたら叩いて叱る、といった感じです。

保育士不足による定員超過

対人数に関しても、一応国が定めている規定はあるものの、子どもの数に対して保育士の数が足りていないのが現状です。特にローカルの園では規定を満たせず、人数オーバーで保育を行っている園も多くありました。

「食育」に対する考え方の違い

食育に関しても知識は薄く、子どもたちがおいしいと思って自分で食べることより、与えられたものをすべて食べさせることが重視されていました。そのため、立ち歩いている子どもを追いかけ、食べたがらない子どもに無理やり先生たちがスプーンで口に入れて食べさせていました。

そしてミルク・加工乳・乳飲料を含め「牛乳」の存在がとても大きかったです。「牛乳ですべての栄養が採れる」という偏った考え方が強かったため、登園中も午前・午後の牛乳の提供は欠かせません。

お腹がいっぱいになって給食が食べられなかったとしても、「牛乳さえ飲んでいればいい」という考え方なのです。

保育時間の違い

ベトナムは朝が早く、お父さんお母さんが仕事に出ていく時間も早いため、朝食も園で給食を食べるのが一般的。

そして、「お昼寝」の考え方も、日本とは大きく異なる点です。ベトナムでは幼稚園・保育園だけでなく小学校まで、お昼寝の時間があります

またお昼休みは職員が一斉に電気を消し、布団を敷いて昼寝時間を確保している企業がほとんどです。子どもだけでなく大人も昼寝をしているなんて、ちょっとびっくりですよね。

私も最初は信じられなかったのですが、しかしこの時間が午後の活動や仕事の効率アップにもつながっているのは事実かもしれませんね。

そして土曜日も働いている保護者が多いため、基本は土曜も開園しています。

子どもを第一に乗り越えよう

子ども

このように、日本では考えられないような衝撃的な場面も多々目にする現場です。

最初は保育環境の違いに戸惑いとショックを感じることもでてくると思います。が、1日の大半の時間を園で過ごす子どもたちや、未来のベトナムの幼児教育のためです。「自分の力で少しづつ変えていくんだ!」という気持ちで現場に入ってほしいと思います。

海外で保育士・幼稚園教諭の仕事をするために必要なスキル

幼稚園

日本の資格も武器になる!

冒頭でもお伝えした通り、ベトナムの園で働くためにも資格があった方が断然有利です!

もし現在すでにベトナムに住んでいるなら、なくても現地採用で何とかなる場合もあります。が、日本から渡航する場合はVISAなども絡んでくるため、事前に企業に採用されてきちんと契約を結んでから渡航した方が安全だと思います。

外国人を雇うとなると当然、雇用側は現地の保育士の何倍もお給料を払うことになります。するとやはり、少しでも質の高い保育士を採用したいと思っています。その1つの目安として、保育士資格や幼稚園教諭免許を持っていることは重要です。

日本での実務経験は大きな強み!

子ども

そして最も重要視されるのは、日本での実務経験があることです!いくら有資格者の日本人保育士でも、現場での実務経験がないと即戦力にならない可能性があるため、採用されるのは難しいと思います。

「日本人保育士」として求められるもの

ベトナムの園で保育士・幼稚園教諭として働く際に求められるものは、園によってもさまざまなので、一概には言えません。が、こちらではあくまでも「日本人保育士」として働く際に求められるものについて、私の実体験からお伝えしたいと思います。

私の場合は日系の園だったこともあり、「現地で日本保育の良さを伝えてほしい」という条件で雇われました。

日本の四季や季節行事、礼儀・マナーの大切さなどの日本文化。保育の基本である環境作りの大切さ。そして、「安全と安心」に重点を置き、子どもたちへの関わり方なども現地スタッフに一からしっかり伝えていくことでした。

実際に行っていた現地での私の仕事内容

掲示板

日系の園といっても実際現地にいる日本人は私1人だったため、できることには限りがありました。

現地保育士たちへの指導

実際クラスに保育に入り、自分がお手本になりながら、その中で現地の先生たちにも日本保育の良さを学んでいってもらう。

保育士だけでなく、園の経営者も含め、現地職員への研修

日本保育の実態や考え方についてビデオや資料を使って研修する中で、日本保育というものを知ってもらい、理解してもらう。

Japanese Class(日本クラス)を担当

日本クラスを通して、現地の子どもたちに日本の歌や手遊び、伝統遊びや絵本を読んで文化を伝える。年齢によっては簡単な読み書きなど、日本語を身近に触れてもらう。

日本の礼儀・マナーの大切さについて伝えていく

日常のあいさつや順番に並ぶことなどの生活習慣。運動会や夏祭りなどの季節行事を含む日本文化の伝承。避難訓練やお誕生会、午睡チェックの方法なども、それをやることの意味から全て現地の保育士たちに伝える

戸惑いのなかから見えてきたもの

何もなかったところからのスタートです。いくら「日本保育を取り入れたい!お手本にしたい!」と相手が言っても、言葉はもちろん、文化や考え方も大きく違う外国人の私

話をスムーズに理解してもらうことは簡単ではなく、何度もぶつかり、討論になりの繰り返し。正直、気の遠くなるような道でした。注意して一度は良くなったり、「わかった」と言っていたりしてもすぐにまた元に戻ってしまう。何をやっても無駄だと諦めかけたことも何度もありました。

しかし、すべてを「日本のように」しなくても良いのです。国も環境も条件も違います、保育に求められるものも当然違います。そのことをよく理解した上で相手に柔軟に対応してくれる人を、園は求めているのだと思います。

日本人という立場の自分に何ができるか

文化

時には、当初の内容とは違うこともありました。例えば、日本人でなくてもできるようなことを求められたり、明らかに当初の仕事内容から外れている仕事を任されたり。

しかしそんなとき「これは私の仕事ではない」と思うのではなく、「自分を試すチャンス! 」と考えるようにしていました。

必要に応じて、自分がどこまでできるのかとりあえずやってみます。これは結果に関わらず自分にとってもプラスになると思います。

そしてやっぱり無理だと思ったことは、はっきり「自分には無理だ」と言ってください。経験上、失敗したり、断ったりしたことに対して責められることはまあなかったです。それだけ、日本人保育士という存在は大きく、貴重だということですね。

ベトナム人と働くこと

作品

今ベトナムでは、日本保育の良さを取り入れていこうとしている園がたくさんあります。しかし、ベトナム人はまだまだ、これまで自分たちが守ってきたものを今後も変えていきたくないという思いも強く残っています。

その中で現地職員たちとうまく働いていくには、現場環境の違いにも動じないことです。自分が日本で学んだことを惜しみなく伝えていく、そして受け入れられなくてもへこまない、そんな覚悟も必要ではないかと思います。

まとめ

かき氷

保育士に限らず、海外で現地の人たちとストレスなくやっていくには日本人ということをいったん忘れましょう。状況に応じて柔軟に対応していくのです。

これまでの常識や固定概念は一度全部捨て、その国の良さを十分理解した上で、自分の役割や考えを伝えます。考えを一方的に押し付けるのではなく、人の言い分を受け入れられるようになって私も気持ちがずいぶん楽になりました。

日本から出て働くのであればベトナム人のようにいい意味で「適当さ」を持ちながら、折れることも必要です。

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