もしあなたがフランスで子育てをすることになったら、小さい子供を預けるための保育園が必要になることがあるかと思います。
共働きの多いここフランスでは、0歳から2歳までの子供を保育園に預けることができます。小さいうちから子供が保育園などで他の子供と触れ合うことは、成長過程において社会性を身に付けるために大変大事なことだと言われています。
また、働いているママだけではなく、仕事をしてないママだって子育てだけに追われることなく「自分の時間」を持つ権利をしっかりと守ることもまた、当然と受け入れられています。
3歳になったら、100%公立の幼稚園に入園できる権利があるので、実質保育園にいる期間は長くて2年半程度なのですが、育児保障制度が日本よりもしっかりしていると言われているここフランスでも、公立の保育園の数が足りていないのが現状です。
それでも、待機児童の数が日本に比べて圧倒的に少ないフランスには、認可保育園の不足を補う保育ママさんなど優れた保育制度があります。
今回はフランスでの子育てにおいて、知っておいたら探しやすい保育園について皆様にご紹介します。
フランスの保育園(Crêche collective)とは
フランスの保育園(Crêche collective)は日本の認可保育園に一番近い形の保育園で、市町村によって運営されている公立の保育園がほとんどになります。
ここ入ることができるのは、共働き、求職中のワーキングマザーの2ヶ月~2歳(幼稚園入園前)の子供たちで、定員に空きがあればという条件で、働いていないお母さんの子供も入れることになっていますが、ウェイティングリストに多くの児童が名を連ねる中、席に空きがあるなんていう状況はまずあり得ないのが現状です。
フランスでは、妊娠がわかった時点でこの保育園に申し込むのですが、それでも入れる確約はなく、職場復帰に必死なフランス人母たちは、書類を提出して登録をし、空きの連絡をただ待つのではなく、週に1度は手紙での問い合わせをしたり、小さな赤ちゃんを連れて
- 私はもう来月職場復帰しなくてはならないの!
- そのためにはどうしてもこの子を預ける必要があるんです!
と自分の現状を訴えかけ、直談判をしに行くことも珍しくありません。
実際にこの方法で席を勝ち取ったママ達が私の友人の中にもいるのですから、れっきとしたひとつの手段と言えるかもしれませんね。
ここでの保育時間は、施設によって多少の差はありますがだいたい朝の7時から夕方18時ぐらいまで。市販のレトルトがほとんどですが、月例に応じたミルク・離乳食・給食などの食事が出されます。
保育料は日本と同じように各家庭の収入によって10段階に分かれており、 保育園での食費、おむつ、その他は全て保育園負担になり、保育料は所得税の控除対象になるのがフランスの良い点です。
認定保育ママ(Assistantes maternelles)
アシスタント・マテルネル(Assistante Maternelle)と呼ばれる保育ママさんとしてはたらいているのは、保育士の資格は持っているものの保育園に働き口が見つからなかった人から、子育てを終えて一段落している主婦など様々です。
認定保育ママとして役所に登録されるためには保育方法の訓練や各自の保育へのモチベーションを表明するなど、厳しい審査が行われる60時間ほどの研修を受ける必要があります。
この審査を通り認定保育ママとして登録された人は、親と直接雇用契約を結び、基本的には自分の家で在宅で子供達の面倒を見るという形での保育サービスを提供します。
1人の保育ママさんが1度に預かることができる人数は最高で4人までで、お預かりの時間帯や曜日は、各親と相談しながら決めて行きますので、保育園よりは融通が利くことが多いのが利点です。
保育料は各家庭の収入によらず一定料金になりますので、認可保育園に預けるよりは割高になります。ただし、保育ママさんに払う保育料も保育園の保育料と同じように所得税の控除対象になるのが救いです。
保育ママさんを希望する親は、各市町村の役所に、自分の住む地域の認定保育ママさんたちのリストをもらい、何人かの方と面接し、自分が信頼でき、教育方針にも納得できる方を選ぶ形になるのですが、一般保育園に空きがなく困っているママさんたちには大変ありがたい存在となっています。
もちろん、自分の自宅で子供達を預かるにあたって、自宅の安全性や清潔さ、子供達が十分に楽しむことができるおもちゃが備えられているかなど、厳しい審査が行われます。年に2回の定期検査に加え、年に1回の抜き打ち検査が行われるなど、非常に厳しく管理され、安心して子供達を預けることができる環境作りをしています。
家庭型保育園(Crèche familiale)
家庭型保育園とは、日本では聞いたことがない名前ですよね。これは、保育ママさんと、一般保育園を上手に組み合わせたフランス独自のなかなかに良い制度です。
簡単に言うと、保育ママさんの自宅に子供を預けるのは認定保育ママさんと同じですが、週に2~3回、市町村が運営する公的な保育施設に保育ママさんは自分の預かっている子供たちを連れて行ってくれるのです。この場合、保育ママさんは最低週に1回は子供たちを連れて行くことが義務づけられています。
他の保育ママさんたちと会って情報交換をしたり、子供達を他の子供達と遊ばせたりし、保育ママさんが子どもたちと自宅に引きこもって偏った自分だけの教育方針で子供を保育してしまうのを防ぐことを目的としています。
認定保育ママさんと違って、家庭型保育園に所属の保育ママさんとの契約は、家庭型保育園と親との間でとり行われます。保育ママさんに子供を預けていても、保育費は保育園に支払う形になり、料金も認可保育園に預ける際と同じように両親の所得に応じて決まるのが特徴です。
親参加型保育園(Crêche parentale)
同じ地域内に住む乳幼児を持つ親が一定数以上集まった場合、市町村から援助を受けることができるので、自分たちで保育士さんを雇って共同で保育園を作ってしまおう!というユニークな制度が、こちらの親参加型保育園です。
保育をする場所は、各親の自宅を提供するのが主で、親自身も交代で保育に参加することによって保育費を抑えることも可能ですし、子供と密に触れ合うことができるのが最大のメリットです。
基本的には両親共働きの家が多いので、親自身が保育に参加できる人が少ない分、公立の保育園や保育ママさん、家庭型保育園に比べると、親参加型保育園の数は決して多くありません。
しかし自分達で保育内容を決めることができ、自分の子供がどのように過ごしているかを知ることができるので、公立の保育園の方針に納得がいかず、自分の納得いく方法で育児をしていきたいという理由でこちらの保育園を選ぶ親も多くいるようです。
一時預かり保育園(Halte-garderie)
1~4までにご紹介してきたのは働くお母さんが子供を預ける毎日の保育園ですが、毎日ではなく時々預けられる一時預かり保育園ももちろんあります。
共働きが多いフランスですが、もちろん専業主婦のお母さんもたくさんいます。そんなお母さんたちだって、病院や買い物に出かけたり育児の疲れからの気分転換など、子供を預けたい理由はたくさんありますよね。
フランスでは、母親の「自分の時間を保つ」権利が推奨されているので、ここは母親が働いていなくても子供を預けることが可能です。
私も出産後はすぐに職場復帰をしなかったのですが、「子供を預けて自分のリフレッシュする時間を持つことによって、より良い育児ができる」と周りに勧められ、子供を週に3日預けていました。
一般保育園と同じように市町村が運営する一時預かり保育園は、0歳児~2歳児(就園前)までの子供を預けることができ、終日、半日、週に行ける日数も一時託児所の空き具合などを相談して決めていきます。
料金的にもかなり安く、気軽に利用することができるのが利点ですね。
また、「お母さんの息抜き」と共に、幼稚園に入る前に「社会性を身につけるために他の子供達と触れ合う時間を持つことが大事!」という子供にとっての大事な目的もあり、フランスでは小さいうちからいろいろな人に出会える環境で育てていくことが推奨されています。
私も実際に子供を預けていたのですが、「集団生活」が自然に身についていて幼稚園に上がったときすぐにお友達と馴染むことができたので、短い時間でも定期的に預けていて本当に良かったと思いました。
大企業内の保育園
日本にも企業内に保育園が併設されているケースはあると思いますが、ここ、フランスでも同じ様に、大企業では保育園を併設し、働くママさんたちを推奨しています。
就業時間前に預け、就業時間後にすぐに引き取ることが原則となっていますので、仕事帰りにちょっとお買い物を、なんていうことはできないのが残念ですが、職場に保育園が併設されているのは、やはり便利と言うよりほかにありません。
子供の庭(Jardin d’enfants)
フランスでは0歳から2歳代までが保育園、3歳から幼稚園に通い始めるのが一般的ですが、2歳~6歳まで(公立は4歳まで)の子供を預かってくれる公立または私立の施設があり、こちらは子供の庭と名付けられています。
預ける時間は半日、終日、時々と選ぶことができます。一般保育園より施設が大きく園庭や遊具が充実しており、大きい子供向けには幼稚園と同じようなカリキュラムが組まれ、小学校入学の準備もしてくれるのです。
小学校に入った時点での遅れなどを心配する必要もないので、小学校入学まで幼稚園ではなく、こちらの子供の庭で過ごすことを選ぶ家族も多くいます。
日本の保育園とフランスの保育園の違い
さあ、これまでにフランスに存在する子供を預ける保育園について書いてきましたが、最後に、日本の保育園とフランスの保育園の違いを簡単に述べたいと思います。
一般保育園への入園は日本と同じように激戦でなかなか席を確保するのが難しいフランスですが、その分、認定保育ママさん制度が充実していて、すべての保育システムを合わせると、全体の6割の子供を保育できているそうです。
しかし、日本では当たり前になっているその日の子供の様子を事細かに知らせる連絡ノートなどもなく、お迎えに行くとざっくりと口頭で「今日も良くミルクを飲んでうんちしたわよ。」などと伝えられておしまいだったり、用意するものも、オムツ、ドゥドゥと呼ばれるこれがあれば大丈夫!というぬいぐるみひとつ、着替え一組、以上と、かなり簡単なものとなっていて、ドキドキしながら保育園に連れて行った小心者の母は、あ、こんなに簡単な感じなんだ、と、ちょっと拍子抜けしてしまうほどでした。
日本は手厚いイメージですが、フランスでは、保育園の先生達は、親に時間を取られるのではなく、子供達の時間をしっかり大事にし、用意するものも簡単なもので無駄を省き、親も保育園側も最小限の負担で済む、そんな効率的なやり方をしているのでした。
まとめ
日本と同じように、ここフランスでも保育園の席は決して足りているわけではありません。しかし、保育ママさんという素晴らしいシステムの元、足りない席がある程度補われているので、待機児童が少ないのです。
やはりフランスは少子化対策に成功し、先進国では唯一の出生率2.0を誇っている国だけのことはありますよね。
とはいえ、日本とは異なり、子供は3歳になったら100%みんな公立の幼稚園に入ることが約束されているので、実質保育園を探さなければいけない期間も日本よりだいぶ短いということになり、働くママさんたちを大いに助けています。
育児休暇も子供が3歳になるまで取ることができますし、やはりどの面を見ても、子育てをしやすい環境をフランスは作り出しているのがわかると思います。
海外求人
あなたの挑戦を待っている!あこがれの海外企業へ就職しよう(海外求人)
フランスで働くには?フランスでの就職方法や仕事・求人の探し方
あわせて読みたい