海外に移住する場合、子供を持つ人であれば、その教育は主要な関心事でしょう。ローカルスクールに入れるという選択はありえるでしょうか。やはり日本人学校に入れた方がよいでしょうか。
子供がいない人であっても、以下の点を理解しておくと、中国の人たちとより良い関係を築きやすいことでしょう。中国の子供たちは一体どのような学校生活を送っているのでしょうか。親は子供の教育で何を重要視しているのでしょうか。
今回は中国の一般的なローカルスクールや教育制度について、押さえておきたい特徴をご紹介します。
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中国の教育制度の概要
中国の学校制度も、基本的に6・3・3・4年制なのは日本と同じで、小学校「小学(シャオシュエ)」・中学校「初中(チューチョン)」・高校「高中(ガオチョン)」・大学「大学(ターシュエ)」と言います。大学卒業後、修士「硕士(シュオシー)」、博士「博士(ボーシー)」を目指す人もいます。
小学校と中学校の合計9年間が義務教育なのも日本と同様です。小学校の前に幼稚園「幼儿园(ヨウアーユェン)」に3年ほど通う子供が大半で、この点も日本と似ています。
小学校に入る前の1年はそのまま幼稚園の年長クラスに行くか、「学前班(シュエチエンパン)」という小学校の内容を先取りして学ぶところに行くかを選ぶそうです。新学期はアメリカなどと同じで、9月に始まります。
クラスの様子
日本と違うのは、小学校の時から教科ごとに担当する教師が違うことです。ただし、「班主任(パンジューレン)」というクラス担任の教師はやはりいます。
地域や学校によって違うようですが、小学校1年生から主要教科として英語を学ぶ学校が少なくないとのことで、ちょっと驚きました。2年生や3年生から学ぶ場合もあるようです。
私の友人の子が小学1年生なので、時間割を見せてもらいました。中国の小学校の主要3教科である国語・数学・英語の占める比率が、日本よりも高い印象を受けました。
1クラスの人数は45人程度までという国の規定はあるようですが、1クラス70人などの学校もあって、必ずしも徹底されてはいないようです。そうなると、一人ひとりの子供に注意は行き渡りにくいでしょう。
成績の良い子を前に配置して、後ろの方の子はあまり構わない場合も残念ながらあるそうです。
成績重視で宿題が多い
日本以上に主要科目の成績を重視し、子供も大人も成績の良い子を評価する傾向が相当強いです。日本だと成績がそんなに良くなくても、スポーツがよくできるとか、リーダーシップがあるとかいう理由で好かれる子も多いのとは状況が違いますね。
先生にもよるようですが、日本と比べて宿題が多いです。小学6年生の子の話ですが、下校してから食事以外ずっと宿題をし続けても、夜12時過ぎまでかかることもあるそうです。
小学1年生でも宿題が毎日結構あり、年々増えていくそうで、子供なのに遊ぶ時間が少なくてかわいそうになります。
なお、高校入試を「中考(チョンカオ)」、大学入試を「高考(ガオカオ)」と言うのですが、これらの試験の点数と名前を、成績の良い生徒を中心に電光掲示板で発表したり、校門近くに大きな掲示板を立てて外部の人に対して公開したりしているのにはちょっと驚かされます。
普段の知り合いとの会話でも、前回の期末テストはうちの子は国語が何点で数学が何点だったなどという話が出てくるので、公開するのに抵抗感が薄いのかもしれません。
日本でも子供の成績が大人の話題にのぼることはありがちなことですが、中国では聞いている私が心配になるほど、かなり具体的に話すのが印象的です。
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親もストレスが多い
親は子供がやった宿題をチェックしてサインするよう求められます。先生は親に「微信(ウェイシン)」(中国版LINE)などで宿題の内容を伝えて、監督を徹底させることが多いです。
子供の学習態度や成績が良くないと、先生の「微信」上に子供の名前を載せられたり学校に呼び出されたりするので、ストレスを感じている親も少なくありません。
少しでも成績を上げるために子供を塾に入れる親も多く、特に親が自分では教えにくい英語の塾は人気のようです。幼稚園児や小学生の中には、ピアノ・ダンス・美術・スポーツなど様々な習い事をしている子供もたくさんいます。
基本的には住んでいる場所によって行く学校が決まるのですが、そこよりも成績が良いと評判の学校に行かせたいと考える親がとても多いです。小学校にしろ、中学校にしろ、どの学校に入れるかは親の大きな関心事です。
希望の学校に入るために、コネを頼ったりもすることもあるようです。
登下校の送迎は大変
小学生は特に登下校の送迎が必要です。自転車や電動バイクの後ろに子供を乗せたり、自家用車・バスなどを利用したりします。子供同士で歩いて通うことが多い日本の登校風景とはかなり違います。スクールバスがある場合でもバス停まで送迎します。
主な目的は、子供を誘拐などの犯罪から守るためです。男の子だと特に高学年になるにつれ自分で自転車通学をする子も増えてきますが、女の子は親が送迎する期間が長いようです。
しかも中国の学校(小学校から高校まで)は、昼食は学校ではなく家に帰って食べる場合も少なくなく、そうなると送迎は1日合計4回におよびます。
例えば、朝7時台くらいに送って昼11:30くらいに迎えに行き、午後2:30くらいに送って夕方に迎えに行くのです。下校時間は学年が上がるにつれ遅くなります。
親が仕事で忙しい場合は、祖父母その他の家族や友人に送迎を頼んだりして、手分けをしている場合も多いです。子供が学校に通う数年間通学に便利なように、持ち家があってもそれとは別に、学校付近に家を借りて住むという選択をすることも珍しくありません。
「托管班(トゥオグァンパン)」という民間の小さな施設にお金を払って、子供を預かってもらうことにする親もいます。子供はそこで食事をしたり、宿題をしたりします。
中国の学校で行われる特別な活動
中国では、大体新学期が始まる9月頃に「军训(ジュンシュン)」があります。訳すと軍事訓練なので、初めて聞いたときはびっくりしました。内容としては行進の訓練をしたり、走ったり、軍歌を歌ったりするようです。
時期や内容は地域や学校によって違います。全学年ではなく、中学高校大学は新1年生が1~2週間するのが一般的なようです。小学校は高学年の時に数日ある場合が多いです。
毎週月曜日の朝には国旗敬礼もあります。
どちらも基本的に全学生が参加するよう求められている活動です。
また、小学生は「红领巾(ホンリンジン)」という赤い布を首につけて学校に通います。この三角の赤い布は、国旗の一部を意味します。
ストレス最高潮の高校時代
中国の大学入試「高考」は、日本でいうセンター試験のような統一テストで、毎年6月7、8日に行われます。ただ、日本と異なり2次試験は無く基本的に一発勝負のため、それにかける思い入れは並大抵のものではありません。
小学校から高校に至るまでの全ての教育は、その統一テストのためにあるかのようです。高校生は夜遅くまで学校に通い、夜10時くらいに全ての授業が終わるようです。
もっとも、その方が少なくとも平日は塾に通わなくて済むのかもしれません。さらに宿題もあるようで、睡眠時間を削って必死に勉強することになります。
日本のように高校生が部活に力を入れるというのは、中国ではかなり理解しがたいことです。スポーツにしろ芸術にしろ、それを生涯の仕事にしようとするごく少数の人以外は、高校時代はずっと受験勉強に専念するのが当然とされています。
6月の「高考」が終わり、2週間ほど後にネットを通して得点が知らされると、各家庭はまさに笑いあり涙ありです。高得点だと、真夜中であっても花火を打ち上げる家庭まであり、「高考」熱のすごさがうかがえます。
大学生になり、就職へ
「高考」が終わって大学に入ってしまえば、一段落という感じですっかり解放された気分になる人が多いようです。これは日本と似ていますね。
大学生は大学の宿舎に住む人が大半です。1部屋4~8人くらいで、二段ベッドがいくつか置いてある形が多いようです。今の日本人学生からするとかなり受け入れ難い環境でしょう。
中国も一人っ子が多い現代では、集団生活になじめない学生も多く、いろいろトラブルがつきません。それでも外に部屋を借りることができる人は多くはなく、大半の学生は我慢するしかないのでしょう。
専門について言えば、仕事の内容に直結しそうな分野が好まれる傾向がかなり強いです。もちろん卒業後、その専門に合った仕事につけない人も数多くいます。
ちなみに就職は、新卒ではないと良い条件のものが見つかりにくい日本とは状況が違います。卒業後すぐは希望の仕事につけなくても、社会経験を数年積んでから条件のいい仕事を目指す人も少なくないです。
「高考」と違って、こちらは一発勝負ではないようです。
まとめ
中国人の教育にかける思い、親や子供の抱えているストレスを感じ取っていただけたでしょうか。
6・3・3・4年制という共通点があるので、日本人にもなじみやすい仕組みと思いきや、中身は違う部分もたくさんあります。
もしローカルスクールに日本人である我が子を通わせるとなると、大変な部分も出てきそうです。子供を連れての移住を考える場合は、行く都市に日本人学校などがあるかなども決定のポイントになるでしょう。
また、中国で一緒に仕事をする同僚や上司たちは、こういう厳しい競争社会を生き抜いてきた人たちということになります。そのことも念頭に置いて良い関係を築いていけたらいいですね。
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