気候が温暖で日本の都市部に比べると比較的物価の安いマレーシアは、定年退職後のセカンドライフを送る地としても日本人にとても人気です。
外務省の発表によると、2015年10月時点でのマレーシア在住の日本人は2万2千人を超え、その数は年々増加しています。
私は、そんなマレーシアの首都クアラルンプールの日系企業に20代で転職しました。マレーシアを選んだ理由や仕事を探した方法、渡航するまでの手続きなど、その道のりをご紹介します。
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クアラルンプールで働くための準備
父親の仕事の都合で、シンガポールやマレーシア、オーストラリアで暮らした経験のある私にとって、海外で働くことはいつか実現してみたい課題でした。
大学院修了後、すぐにでも海外で仕事をしたいと考えていましたが、親の勧めで5年間は国内企業で社会人経験を積むことにしました。そして、マレーシア転職する直前まで大手企業の事務職として働きます。
社会人5年目のゴールデンウィークと夏休み、転職先の候補地を絞るため東南アジア各国をめぐる旅に出ました。視野に入れていたのはマレーシアの他、シンガポール、タイ、ベトナムです。
自分の目で見て直接情報収集
当時の私が最後に目にした東南アジア諸国は、アジアの通貨危機によって経済が冷え切り、まだまだ立ち上がりきれていない状況でした。
しかし、その後は各国の急成長が著しく、日系企業の進出も盛んに行われています。現状を自分の目で実際に確かめるのが一番だと考えたのです。
各国にいる学生時代の先輩、後輩、同級生たちにFacebookで片っ端からメッセージを送り、旅先で会う約束を取り付けました。そして、海外転職を考えていることや、日本人はどんな仕事をしているのか、どんな需要があるのかなどを聞きました。
中には高校時代に一度くらいしか話したことがない人もいましたが、そんなことを気にしている余裕はありません。
現地の知り合いからチャンスが生まれる
幸運なことに、知人たちの親や上司にも会う機会に恵まれ、現地で仕事をしている人から直接話を聞くことができました。
東南アジアでは未だにコネ社会の名残があり、現地の知り合いを通して話を聞くだけでも仕事のチャンスが生まれることがあります。海外就職を目指すなら、どんな小さなツテでも大いに活用するのが得策です。
少しでも興味があれば、実際にマレーシアで就職・転職している方の話をどんどん聞いていきましょう。
クアラルンプールを海外転職先に選んだ理由
東南アジア各国をまわり、最終的に私が選んだ地はマレーシアのクアラルンプールでした。
決め手となったのは、物価がそこそこ安く、治安も比較的安定しており、英語が通じるという点です。
生活しやすい物価
日本に比べて光熱水費が安く、物価もさほど高くないので暮らしやすいといえます。
日本人の給料水準も現地で普通に生活するには充分なもので、休暇に海外旅行を楽しむ余裕もあります。
女性にとってより重要な治安
特に私のような女性の場合、治安の良し悪しが重要なポイントとなります。
タイやベトナムも物価の安さの面では申し分ないのですが、ひったくりや誘拐、詐欺事件が頻繁にあると聞いていました。安全面を考えると心配な点が多かったのです。
英語が通じる方が仕事もしやすい
海外転職だけでも大きなチャレンジですが、そこに言葉の壁があると大きなストレスを抱えることになります。
タイやベトナムは一部のホテルや観光施設でしか英語が通じず、レストランで食事を注文するときも文字が読めなくて苦戦しました。
そこで、英語が通じる地域に限定した方が仕事をする上でも円滑だろうという結論に至ったのです。
日本の店や医療施設も多い環境
英語が通じることに加え、衛生面や医療の質を考慮すると断然シンガポールがいいのですが、物価が高いということで、結果的にマレーシアに落ち着きました。
マレーシアの首都クアラルンプールにも、シンガポールほどではありませんが日本人が多く住んでいます。日系デパートやスーパー、日本の食材を扱うお店も多いため、生活には困りません。
また、クアラルンプールには日本人医師が開院したクリニックもあり、大きな病院には日本人看護師や日本語を話すスタッフもいるため、いざというときも安心です。
クアラルンプールの仕事探しには転職エージェントを利用
マレーシアの求人を探す方法としては、転職エージェントを利用するのが王道です。
ただし、日系企業で働きたいのか外資系・現地企業で働きたいのかによってエージェントの選び方が変わってきます。
どこにどんな求人が出るのか把握する
日系企業が希望なら、マレーシアに支店を持つ日系の転職エージェントを選ぶのが一番の近道です。日系企業が求人を出す場合、必ずと言っていいほど日系エージェントを通して求人情報を掲載します。
一方、外資系企業の場合は、ビジネス版SNSであるLinkedin(リンクドイン)を通じたスカウトや、外資系エージェントへの求人情報掲載が一般的です。
私は日系・外資系問わず探していたので、マレーシアにある日系エージェントに登録し、さらに外資系エージェントでも求人情報を提供してもらいました。
求人条件はほぼすべて現地法人での採用で、案件数は外資系や現地企業よりも日系企業の方が圧倒的に多くありました。
私が利用した転職エージェント
ここでは、私が実際に利用したエージェントとそれぞれの特徴を紹介します。
JAC Recruitment
中国などアジア各国やヨーロッパに拠点を持つJAC Recruitmentのマレーシア支店では、多くの大手企業の求人案件を扱っている印象でした。
日本人コンサルタントによる東京での転職個別面談なども年に数回開催されており、私はそのタイミングで登録を行いました。
事前に希望条件などをメールで伝えておき、個別面談では自分の適性に合ったものをいくつか紹介してもらえます。仕事の紹介も終始、日本人スタッフが担当してくれるので安心感がありました。
紹介案件の勤務地はクアラルンプール以外にも、日系企業が多く所在するジョホール州やペナン州、マイナーなところではマラッカ州やパハン州、ネゲリセンビラン州などマレーシア全土に渡っていました。
きめ細かいサポートがうれしい
海外就職となると、面接のために現地に行く必要がある場合もありますが、JAC Recruitmentでは企業との連絡も密に取っていて、先方の担当者の日本出張スケジュールに合わせて面接を設定してくれました。
私は最終的に、このJAC Recruitmentでお世話していただいた企業に採用されました。
また、採用決定後も渡航準備に必要な書類の揃え方を教えてくれたり、渡航後も本採用が決まるまではメールで近況を聞いてくれたりと、きめ細かなフォローがあったのが助かりました。
現在、日本で働いていて、マレーシアの日系企業に転職したい方におすすめのエージェントです。
- JAC Recruitment(マレーシア):https://www.jac-recruitment.my/ja
桜リクルート社(マレーシア)
現地に住む日本人の間で認知度が高く、とにかくたくさんの案件を扱っています。
日系企業の他に、現地企業の求人情報も多く扱っている印象でした。紹介案件の多くはクアラルンプール近郊やペナン州がメインでした。
日本人コンサルタントにはいつでも相談できるようになっています。ただし、仕事紹介は特に担当者が特に決まっているわけではなく、現地スタッフ数名が毎日のように新しい案件を紹介してくれました。
転職先をじっくり選びたかった私にとっては、条件や待遇を検討しているうちに次の案件紹介があり、正直なところ情報過多になってしまいました。
例えば、「いろいろな可能性を探りたい」「どんな仕事があるのかとりあえず調べたい」という人にはおすすめのエージェントです。
- 桜リクルート社(マレーシア):https://sakura-r.net.my/
ヘイズ(マレーシア)
イギリスに本社を置くグローバルな人材紹介会社ヘイズもマレーシアにオフィスを構えています。外資系や現地企業の案件をメインで扱っているので、日系企業以外への転職を考えている人におすすめです。
ただ、外資系のエージェントにありがちな押しの強さがあり、さほど自分の適性に合っていないものでも勧めてきます。
私が転職活動をしていた当時は、採用に至らなくても面接を1回でも受ければ会社からコーディネーターへインセンティブが入るシステムだったため、とにかく面談や面接に出向くことを勧められました。
よっぽど体力と時間に余裕がない限りは、自分の希望条件と照らし合わせて求人内容をしっかり見極める必要があります。
- ヘイズ(マレーシア):https://www.hays.com.my/
クアラルンプールの日系企業に採用!就活期間と採用までの流れ
エージェントに様々な求人情報を紹介してもらい、最終的に私が選んだのは日系現地法人での正社員職でした。転職活動を始めてから1ヶ月程度での採用決定です。
たまたま適性に合った求人があったことと、採用担当者が日本へ出張に来るタイミングで面接をしてもらえたのが幸いでした。
面接方法は企業により様々
流れとしては、まずエージェントに応募の意思を伝え、それを受けてコーディネーターが先方企業に確認を取り、面接日時を設定してくれます。
私が応募したのは小さな会社だったので、いきなり社長面接で採用が決定。面接当日の夕方に先方から採用の電話連絡があり、翌日には雇用に関する書類を交わし、条件の交渉や細かい内容の確認を行いました。
一方、同時進行していた日系IT企業の事務職の選考は人事担当とのスカイプ面接から始まり、二次面接は東京の日本法人のオフィスで、そして最終的に現地法人の社長による面接があるという案内でした。
エージェントを上手に使って費用を節約
面接の回数やスカイプ面接の可否などは、会社規模や採用方針によっても違ってきます。
日本にいながら就職活動を行う場合は、スカイプ面接や日本での面接が可能かどうかをエージェントに聞いてもらうと費用が抑えられます。
クアラルンプールへ渡航までに必要な手続きや準備
採用が決まったら渡航準備に入ります。ビザ申請や国際運転免許証の取得、役所関係の書類提出など、意外と国内にいるうちにやることが多かった記憶があります。
就労ビザの申請
マレーシアで働くために必要な就労ビザの一つで私が申請したのがEmployment Pass(EP)です。2年以上の雇用期間があり、原則として月額の給与収入が5,000MYR(約13万円)以上ある人が対象です。
日系企業の場合は会社側が就労ビザの申請手続きを行い、手続きにかかる費用も会社負担になるのが一般的です。
一方、外資系企業の場合は自分で申請するか、コンサルティング会社に頼んで申請・更新手続きをする必要があります。
※1MYR=約26円(2017年7月)
就労ビザ申請に必要な書類
- 申請書:2部
- 雇用契約書
- パスポートサイズの写真:2枚(背面青、白黒不可、3ヶ月以内に撮影したもの)
- パスポート原本(有効期間が18ヶ月以上あるもの)
- パスポートコピー(全ページ)
- 最終学歴の英文証明書
- 英語基礎能力試験の英文証明書(英検やTOEICなど)※不要な場合もある
私が採用されたのは日系企業だったので、申請書や雇用契約書は会社側が用意し、現地で申請してくれていました。
また、職種によって英語レベルを証明するものが必要になりますが、こちらはケースバイケースなので確認が必要です。
なお、書類提出時に日本にいる場合は、マレーシアに渡航してから移民局にパスポート原本を提出するか、日本のマレーシア大使館でビザを受け取ることになります。
後者はビザを取得してから渡航する場合です。
ビザが下りるまでに時間がかかることも
一般的にEPが下りるまでは数ヶ月を要し、長い人では1年も待たされたケースもあります。私は申請後4ヶ月で取得できましたが、前任者は13ヶ月もかかったと言っていました。
場合によっては観光ビザで入国し、3ヶ月毎に国外へ出ながらEPが下りるまで待つこともあり得ます。
EPを取得するまでは銀行口座の開設もできないので、採用された企業側とビザ申請の流れについて事前にしっかり確認しておきましょう。
国際運転免許証の取得
マレーシアは車社会なので、生活するには自動車が必須です。運転手付きのよっぽどの好待遇でない限り、自分で運転する必要があります。
そのため、採用条件として「運転免許保持者」と書かれていることが多いのもマレーシアの求人案件の特徴です。
マレーシアでは日本の運転免許証は使えないので、現地の運転免許証もしくは国際運転免許証が必要になります。
しかし、現地でマレーシアの運転免許証に書き換えるためには就労ビザが必要です。渡航後すぐに運転する場合は、事前に日本で国際運転免許証を取得しておきましょう。
国際運転免許証取得に必要な書類
- 日本の運転免許証
- パスポート
- 手数料:2,400円
- 写真:1枚(縦5センチ×横4センチ、6ヶ月以内に撮影したもの)
- 渡航期間を示す雇用契約書などの書類(現在の運転免許証を更新する場合)
必要書類を揃えて行けば、管轄の警察署で即日発行されます。
また、渡航期間中に現在の運転免許証が失効する場合、講習を受ければ更新してもらえることもあります。私は無事故・無違反だったので30分程度の講習をその場で受け、有効期間5年分を更新してもらいました。
違反記録がある場合については、管轄の警察署や運転免許センターに問い合わせてください。
役所関係の手続き
海外で生活するのであれば、住民票や年金、健康保険などの手続きもしなければなりません。
住民票
住民票を抜く場合は、海外転出届を市町村の窓口に提出します。
住民票が日本国内にないことになるので、住民税が課税されません。ただし、住民税は前年度所得に基づいて計算されるので、渡航後1年間は支払いが義務付けられます。
国外にいると日本の支払い期限に合わせることが難しいため、私は日本にいる兄弟に納税管理人となってもらい、代理で支払ってもらうことにしました。
国民健康保険
住民票を抜くと、自動的に国民健康保険からも抜けることになります。国民健康保険には任意継続のシステムがありません。
慢性疾患のある人や歯の治療が必要な人は住民票を抜かず、国民健康保険も継続することをおすすめします。
私のような日系現地法人での採用だと、会社側で日系の海外旅行保険に加入してくれることが多いです。突発的な病気やケガによる通院・入院までカバーしてくれました。
現地企業や外資系企業の場合は自分で保険に入るケースもあるので、国民健康保険からの脱退は慎重に決めましょう。
日本法人で採用される場合を除き、保険などの待遇については会社側とよく話し合っておくべきです。
国民年金
国民年金は海外転出届を出しても任意で納付することができます。年金は20歳~60歳の間に通算10年以上納付がないと給付を受けることができません。
将来、老後をどこで過ごすのか、どこに住むのかなどが決まっていない場合は、任意で払い続けていた方が無難です。
マレーシアの年金制度
マレーシアにはEPFと呼ばれる年金システムが存在します。現地企業や外資系の現地法人ではこのEPFに加入させてくれることがあります。
基本的に日本の厚生年金と同じようなシステムなので、採用が決まったら確認しておきましょう。
仕組みとしては、毎月の給料からEPF積み立て分の半額が天引きされ、残りの半額を会社が負担します。
また、EPFシステムで付与される個人番号は職場を替えても引き継がれるので、基礎年金番号のように継続して使うことができます。
日本の国民年金とダブルで入っていれば、老後に必要な資金を充分貯めることができます。マレーシア企業に就職する場合はぜひ活用しましょう。
まとめ~海の向こうで可能性を試してみよう
日本国内での転職に比べてすることが多く、ハードルが高いイメージの海外転職。確かに、自ら道を切り拓き、海外で働くチャンスを手にすることは簡単ではありません。
でも、ぜひその一歩を踏み出してみてください。
人種や宗教の異なる様々な人たちが互いを尊重し合って暮らしているマレーシアには日本人も多く、たくさんの求人があり、自分の可能性を試すのに最適な地です。あなたの適性を活かせる仕事がきっと見つかりますよ!
※この記事は筆者の当時の体験に基づいています。現在の状況とは違っている可能性があるため最新情報をご確認ください。
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