東南アジア諸国の中でも、タイやシンガポールに次いで日本人の多く住む国、マレーシア。首都のクアラルンプールをはじめ、主要な地域には日本人学校や数々のインターナショナル・スクールがあります。
多くの日本人子女が通う教育施設がいくつもあり、筆者が英語を教えている日系の学習施設もそのうちのひとつです。グローバル化した今の時代、小学生のうちから英語を学ぶことは当たり前になってきています。
マレーシアで英語講師として働く私のある一日を公開します。
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マレーシアで働く一日:自由に過ごす午前
8時:起床
マレーシアは赤道近くに位置するため、日の出が午前7時半前後です。部屋の窓が東向きなので、朝日の差し込むタイミングで目覚めます。
バルコニーから日の出を見ながら紅茶を飲むのが日課です。
8時30分:朝ヨガ
自宅から徒歩5分くらいのところにヨガスタジオがあり、会員になってからは朝ヨガに通っています。ヨガマットなどの道具は貸し出してくれるので、タオルと水だけ持参して参加。
朝一番のクラスはさほど混んでおらずゆっくり受けられるので、リラックスしながら一日のはじまりを迎えます。呼吸を整えながら少しずつ身体を伸ばしていき、1時間後にはスッキリとした気持ちになっているので不思議です。
10時:朝食&片付け
ヨガクラスから帰ってきたらシャワーを浴び、朝食です。昼食や夕食は自炊できないので、朝はヘルシーな野菜中心メニューを心掛けています。
朝食を摂っている間に洗濯機を回しておき、食べ終わったら片付けながら部屋の掃除まで一気に終わらせてしまいます。
洗濯物を部屋の中に干して、身支度を整えて出かける準備をします。天井にあるファンのタイマーをセットしておけば、帰宅する頃に洗濯物は乾いているのでとても便利です。
12時:カフェで友人と会う
自宅近くにはカフェやレストランもたくさんあります。この日は、たまたま近くで用事のあった友人が訪ねてきたので、出勤前にカフェで会うことに。
朝食からさほど経っていませんが、仕事中はゆっくり食事をする時間がないので、このタイミングで軽めのランチ。友人とのおしゃべりに花が咲き、週末に飲みに行く約束をしてカフェをあとにします。
マレーシアで働く一日:出勤・授業準備
13時:家を出発
自宅から職場までは車で10分くらいです。朝夕は通勤ラッシュで大渋滞するマレーシアですが、昼間は渋滞の心配は要りません。
始業は午後1時30分なので余裕を持って出勤できます。
13時30分:始業
生徒たちが来るのは午後3時過ぎですが、保護者からのメール問い合わせへの対応や電話連絡を済ませ、授業準備に入ります。
多いときは一日に5コマの授業を受け持つので、予習や授業計画は事前にしっかり行わなければなりません。小テストの範囲を決めたり、宿題用のプリントを印刷したり……。
バタバタと用意しているうちに、あっという間に時間は過ぎていきます。
15時:ミーティング
この日最初の授業である小学生英語を担当するネイティブ講師が出勤してきたら、授業内容を確認するためのミーティングをします。クラスの様子を聞きながら、その日の授業で必ず押さえてほしいポイントを伝えます。
小学生のクラスは、生徒たちの習得度合いに合わせてレベル別に分けられています。上達の早い生徒は、他の講師とも相談してどんどん上のクラスに入れていきます。
ネイティブ講師陣は、イギリスやアメリカで英語教育を勉強してきた人がほとんどです。ケンブリッジ教授法を学んだ先生も数名いて、イギリスの植民地だったマレーシアならではの特徴といえます。
マレーシアで働く一日:授業3コマ
15時30分:授業1開始(小学生英語)
ネイティブ講師とペアになり、小学生英語のクラスを受け持ちます。クラスを2つのグループに分け、ネイティブ講師と別々に各グループ1時間ずつ授業を行っています。
フォニックス(英語の発音ルール)を中心とした発音指導やスピーキングは、外国人であるネイティブ講師の担当です。子どもたちの吸収力は驚くほど早く、ネイティブ講師との会話を通して瞬く間に会話力を鍛えていきます。
文法や読み書きは日本人である私の担当です。中学生レベルのテキストに沿って、受験でも使える英語の知識を身に付けることを目標にしています。中には、英検3級程度の実力を持つ小学生もいます。
意味は知らなくても発音はできる
小さなうちからフォニックスを習っている子どもたちは、知らない単語でも発音できてしまいます。マレーシアでの生活は英語に触れる機会も多く、街中で見かけた難しい言葉を意味がわからないまま覚えてくる生徒もいます。
「この前、スーパーに行ったらプロモーションをしてて……何かをパーチェスすればiPhoneが当たる!って書いてあったんだけど。先生、パーチェスって何?」と聞かれたことがあります。
Purchase(購入する、仕入れる)は日本では高校生で習う単語です。意味がわからなくても、しっかり読めてしまう小学生に脱帽したエピソードです。
「習うより慣れろ」の方針
授業中はとにかく賑やかでうるさいほど。おとなしく「授業を受ける」のではなく、自発的にたくさんしゃべることで英語に慣れてもらうことを心掛けています。
生徒たちには積極的に手を挙げてもらい、疑問に思ったことはその場で聞いてもらっています。
17時30分:授業1終了・バス見送り
授業が終わると、生徒たちをスクールバスに乗せてお見送り。南国でのびのびと育っている小学生たちはとても元気です。
一方、2時間の授業が終わる頃には、大人の私たちの声は枯れ、体力的にも消耗しています。
それでも、素直で明るい生徒たちがバスの中から手を振ってくれると、「また来週、会いましょう!」と思い切り手を振り返してしまうのです。
17時45分:授業2開始(インター生)
※クアラルンプールにあるインターナショナル・スクール
小学生たちを見送って一息つくと、インターナショナル・スクールに通う生徒(インター生)のクラスがあります。
インター生たちは、学校で学ぶ全教科を英語で勉強しなければなりません。数学(算数)や理科、社会なども英語で学ぶので、幅広い語彙力が必要になります。
日本人は欧米人に比べて数字に強く、理数系が得意です。しかし、日本語で理解していても対応する英単語を知らないと、学校の授業やテストで実力を発揮しづらくなってしまいます。
そのギャップを埋めるのがこの授業の役割です。
わかっているのに言葉にできない
この日の授業内容は図形やグラフ。前半は二等辺三角形や平行四辺形、台形などの図形について、違いや特徴を英語で説明する練習をします。
後半は、折れ線グラフや円グラフ、棒グラフを含む説明文を読む課題に取り組みます。ある程度の読解力も必要ですが、グラフの読み取りやデータ比較をするときの表現は社会系科目にも役立つ内容です。
わかってはいるのに、上手く言葉にできなくて悔しがる生徒たち。覚えることが多く、慣れない言葉が並ぶので、1時間の授業が終わると生徒たちはヘトヘトです。もどかしさをバネに、どんどん吸収していってもらいたいものです。
18時45分:休憩&食事
日本で働いていた頃は、1時間の昼休憩をしっかり取っていました。しかし、マレーシアに来てからは変則的な授業スケジュールのため、ゆっくり休憩できない日もあります。
この日は、なんとか30分の食事時間を確保。職場近くのお店でローカル食を手早く済ませます。お店の人たちとは既に顔見知りで、なぜかここでも「センセイ」と呼ばれています。いつも生徒たちに「先生!」と呼ばれているからでしょうか。
選んだメニューは、アヤム・パンダン・ゴレン(Ayam Pandan Goreng)というもの。鶏肉をパンダン(タコノキ属の植物)の葉で包み、素揚げにしたものがメインです。10MYR(約260円)で、辛いスープと目玉焼きのせカレーご飯もついてきます。
※1MYR(マレーシアリンギット)=約26円(2017年6月)
19時15分:授業3開始(中学生)
夜の授業は中学生の受験対策講座です。
マレーシアには日本人向けの高校がないので、大半の生徒は高校入学のタイミングで帰国します。中には、隣国のシンガポールにある早稲田渋谷シンガポール校に進学する子もいます。
いずれにせよ、ハイレベルな帰国子女入試をクリアする必要があり、生徒たちは互いに切磋琢磨しながら熱心に勉強しています。早い段階から英語学習に触れていることもあり、基礎力は総じて高い傾向にあるようです。
生徒にとってはやや厳しい時間帯
この日のテーマは長文読解。さまざまなジャンルの読解問題に慣れ、高得点を稼げるようになってもらうのが狙いです。
実際に入試問題として出題された過去問を使い、制限時間内で解いてもらう緊張感のあるスタイル。しかし、食後ということもあり、生徒(特に男子)たちにとっては集中力が途切れやすい時間帯でもあります。
私が働いているこの学習施設は比較的、自由な雰囲気をモットーにしています。講師の中には自己責任として、授業中に生徒が居眠りをしていても許容範囲とする人もいます。
勉強ができることのありがたさ
それでも私は、授業中は真剣に取り組んでほしいと厳しく言っています。「進学できる機会が与えられていることに感謝し、精一杯勉強しなさい」と常々言い聞かせています。
経済成長を遂げているとはいえ、いまだに発展途上国であるマレーシアでは、貧富の差を垣間見ることがあるからです。外国人労働者を中心に、中学生と変わらない年齢の青少年が働いている光景を目にすることもあります。
生徒たちも日々の生活の中で、そんな現実を肌で感じているのでしょうか。水を飲んだり、顔を洗ったり、鼻の下にメンソールのリップクリームを塗ったり……さまざまな工夫を凝らして眠気と闘っています。
答え合わせは大騒ぎ
問題を解き終えると、答え合わせと解説タイムに入ります。間違った箇所は宿題で解き直し、全問正解するまで繰り返しやる方式です。
そのため、答え合わせ中は「合っていた!」や「間違った!」で大盛り上がり。難易度の高い設問や、ひっかけ問題で正解した生徒が、しばし優越感に浸る時間でもあります。
21時15分:授業3終了・バス見送り
2時間の授業を終え、生徒たちの乗ったスクールバスを見送ります。思春期真っ只中なはずの中学生ですが、人懐っこい笑顔でバスの中から手を振ってくれます。
最後のバスを送り出すと、無事に一日が終わったという安心感から、どっと疲れを感じます。
21時30分:ミーティング&片付け
オフィスに戻り、他のスタッフたちと締めのミーティング。この日あったことを共有し、次の日の予定を確認し合います。
ミーティング後は、片付けや掲示物の更新を行います。宿題の出し忘れや小テストの結果などが一目でわかるような表になっていて、生徒たちもいつも気にして見ている順位表です。
マレーシアで働く一日:仕事終わりの夜
22時:帰宅
勤務を終え、帰路につくのが午後10時です。
この日はオフィスから駐車場に行く途中で、ばったり友人と会いました。
聞けば最近、フードビジネスを始めたとのこと。マレーシアの国民的な飲み物である紅茶とミルクを混ぜたドリンク、テタレ(Teh Tarik)と、これまた代表的な軽食のカレーパフ(Kari Pap:カリパッ)をカフェなどでプロデュースしているとか。
せっかくなのでお裾分けしてもらいます。
23時:夜食&翌日の予習
帰宅してシャワーを浴びたら、先ほど友人にもらったカレーパフを夜食に、翌日の授業の予習をします。
私は理系出身ということもあり、英語科目以外に中学生の理科も担当しています。オシャレなボトルに入ったテタレを飲みながら、明日教える予定の化学の範囲を頭に入れておきます。
24時30分:就寝
勤務時間が遅めなので、日付が変わってからベッドに入ることがほとんどです。
昼間は暑くてエアコンが必要なマレーシアですが、夜は涼しいので天井のファンを回しておけば寝苦しいことはありません。
一日中、立ちっぱなしで浮腫んだ脚をマッサージしたら、翌日に備えて眠りにつきます。
まとめ~大変でも充実した毎日
一般的なオフィス勤務とは異なり、体力的にもタフさが必要な英語講師の一日。
学校の定期テスト対策から帰国後の受験準備、インターナショナル・スクールに通う生徒のための英語強化など、さまざまなニーズがあります。教える立場として求められることも多く、プロ意識を持って臨まないと務まらないと思います。
しかし、真っ直ぐで明るい生徒たちとのふれあいはかけがえのない時間で、前向きな思考を持つ彼らから学ぶこともたくさんあります。また、工夫次第では趣味や友人と会う時間も確保でき、充実した生活を送ることが可能です。
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