多くの日本人は豚肉が大好きです。トンカツ、チャーシュー、しょうが焼きなど豚肉料理を挙げたらキリがありません。日本の食卓には欠かせない存在です。
しかし、僕が住むマレーシアでは豚肉料理を作って食べるのは大変なんです。というのも、マレーシアの国教はイスラム教だからです。イスラム教徒は豚肉を食べないので、日本のようにどこででも買えるわけではありません。
では、マレーシアで豚肉を手に入れるにはどうすればいいのでしょうか。
半数以上のマレーシア人にとって豚肉は不浄の食べ物
マレーシア政府の発表によると、マレーシア人のうち半分以上はイスラム教徒です。イスラム教徒にとって豚は不浄な動物です。つまり、過半数の人は豚肉を食べないということです。
汚れているという扱いであり、半分以上の人が食べることができない豚肉をスーパーで普通に売ることはできません。したがって、その辺にある店でも魚や鶏肉は簡単に手に入りますが、豚肉は置いていないのです。
豚肉を食べたい人も存在する
ただし、イスラム教徒でない人もたくさんいます。
マレーシアは多民族国家です。マレー系だけではなく、中華系、インド系、ボルネオ島に多くいるイバン族、ドゥスン族、オランアスリと呼ばれているグループ等、多くの人々で形成されています。
さらには世界中から人が移り住んで来ていて、その中にもイスラム教徒ではない人がたくさんいます。
それらの非イスラム教徒にとって豚は不浄でも何でもありません。むしろ美味しく食べたいと思います。
そう言う僕も豚肉をこよなく愛する者の一人です。できれば毎日でも食べたいのですが、前述の通り近所のスーパーに行っても豚肉は置いていません。
スーパーなどで普通に買えないのであれば、一体どこで手に入れたらいいのでしょうか。
マレーシアではノンハラル店で豚肉が買える
ハラルという言葉を聞いたことがあるでしょうか。これはアラビア語で、意味は「許されている」。つまりイスラム法上で、食べたりすることが許されている料理や食材のことを指します。
その逆がノンハラルです。許されていない料理や食材。豚肉は当然のことながらノンハラルの位置づけです。
豚肉に限らず、ノンハラルに該当する物はすべて隔離されて売られています。まるで価値のないもののような扱いを受けていて、なんだかちょっとかわいそうです。
でも、これでわかりました。豚肉はノンハラル店に行けば買えるということです。ちなみにマレー語ではノンハラルのことを「Tidak Halal(ティダ ハラル)」と呼びます。意味は同じです。
ハラルとノンハラルの違いは非常に重要
ノンハラルの店やコーナーはかなり目立ちます。店によっては、店舗そのものの看板よりノンハラルの看板の方が大きく目立つくらいです。
なぜそんなに目立つ看板を付けているのか地元の友人に何気なく聞いてみたところ、その答えが非常に興味深い。
「間違ってイスラム教徒が入ったらクレームが来るからだよ」
その場合、悪いのは店側なんだそうです。
「しっかりとノンハラルとアピールしないから間違って入ってしまった。どうしてくれるんだ!」と難癖付けられても文句は言えないそうです。なるほど。面白いです。
マレーシアで豚肉を買いに行こう
では、実際に豚肉を買いに行ってみましょう。今回訪れたのは、クアンタンという町にある市民の食糧調達所、朝市(通称パサパギ。モーニングマーケットの意)です。
野菜や魚、豆腐、香辛料、衣料品などが一つの大きな体育館のような場所に所狭しと並べられています。
肝心の豚肉コーナーはどこでしょう?正解は外です。ここだけ別の建物内にあり、当然のことながら隔離されています。
しかも、建物の壁には豚の絵も描かれています。明らかに仲間外れです。ここまでされていると、なんだかかわいそうな気持ちになってきます。
さて、中は一体どうなっているのでしょうか。
豚肉ショップがある建物に潜入
ゲートをくぐり中に足を踏み入れると、10軒程の店が並んでいます。日本で言う屋台のような感じの店です。全店が豚肉を売っています。
意外と豚肉を扱う店の数が多いことに驚きます。このうちの1軒で買い物をしてみました。
コンクリートパネルを置いただけの簡素な台の上に豚肉が乗っています。日本のようにきれいにパッキングなどはされていません。肉の塊が部位ごとに分けてあります。
かわいそうだけど美味しそう
上に目を移すと、何かが吊るされています。豚の顔の皮です。顔の皮をはいで、それを吊るしているのです。鼻の部分にホックをかけて吊っています。
オーナー曰く、鼻の穴にホックをかけるとちょうどいい具合に吊るせるから便利なんだそうです。
しかも、何やらガスバーナーを使ってその顔の皮を火であぶっています。何をしているのかと思い聞いてみました。すると、
「顔の毛をあぶっているんだよ。毛がない方がいいだろ」
と、とっても素敵な笑顔で教えてくれました。またもやなんだかかわいそうです。
しかし、その辺り全体には香ばしいにおいが漂っています。お腹が減ってきます。かわいそうだけどゴメンねという気持ちになります。
豚肉を買う時は中国語で
今回は地元の友人と一緒に来たので、彼女に手伝ってもらいながら実際に豚肉を買ってみました。まずは部位を指定します。
豚肉を扱えるのはイスラム教徒ではない人です。そうなると、店員は中華系の人が多くなります。この店もそうです。
注文は華語(いわゆる中国語ですが東南アジアのアクセントが強く、中国語とは違うように聞こえます。地元の中華系の人は中国語だと言い張りますが)で行います。広東語でも可能です。
ほしい部位を言って、値段いくら分かを伝えます。部位の名前が分からなかったり、華語や広東語ができなかったりする場合にはどうすればいいのでしょうか。
その時はジェスチャーです。買いたい肉を指さして、あとはジェスチャーでどれだけほしいかを伝えれば大丈夫です。
目の前で切ってくれる
買いたい部位や値段が相手に伝わると、そこから店員さんは真剣な表情で切り分けてくれます。慣れた手つきで素早く切り分けていきます。プロの技ですね。
あまりに上手なので、ちょっと写真を撮らせてほしいと頼んでみました。すると、わざわざ手を止めて、しっかりポーズを決めてくれました。エンターテイナーです。
ちなみに、注文が挽き肉の時はどうするのでしょうか。試しに挽き肉を頼んでみました。すると、お隣のカウンター(店)にあるミンチ機を使って作ってくれました。共同で使っているようです。
切り終わった肉は新聞紙に包んでくれます。なんとなく昔の日本を思い出します。頼めばビニール袋にも入れてくれます。
あとはお金を払って終わりです。日本人は珍しいのか、一緒に記念写真も撮ってくれました。
客層は中華系が中心
僕らが買った店に限らず、他の店も繁盛しているようです。お客がひっきりなしにやって来ています。
客層を見ていると、中華系を筆頭にいろんな人種の方がいます。店員さん曰く、一番多いのはやはり中華系。他にもミャンマーやタイ系の客も多いということでした。面白いですね。
店の入っている建物を出ると、そこはまたイスラム教色の濃いエリアです。建物の中と外でこんなにも雰囲気が違うのかと驚きます。
豚の看板に見送られながら家路につきます。帰宅したら、早速買ったばかりの豚肉をお昼ご飯にしようと思います。
朝市基本情報
- 名称:Kuantan Central Market
- 住所:クアンタン市中心、スタジアムの裏
- アクセス:クアンタン市中心バスターミナルから徒歩1分
- 営業時間:午前7時くらいからお昼くらいまで(なくなり次第終了。午前11時過ぎには売り切れの場合が多い)
マレーシアの豚肉は日本の豚肉より濃厚
実は、マレーシアの豚肉と日本の豚肉は味が違います。
日本の豚肉はとにかくキレイです。しっかり洗ってあって、においもあまりしません。マレーシアでは、基本的にあまり洗われていません。皮にはまだ毛がついている場合もよくあり、においも強烈です。しかし、その分、味が濃いです。
おそらく、日本ではしっかり洗いすぎて、その時にうま味成分が流れてしまっているのでしょう。あまり洗われていない分、マレーシアの豚肉はしっかりと味が残っています。
鍋料理やスープにした時にその違いが明白になります。とにかくマレーシアの豚肉はダシが出て美味いです。
まとめ~日本とは一味違う豚肉体験を
マレーシアには美味しい食べ物がたくさんあります。でも、毎日外食ばかりしていると段々と飽きてきます。そんな時には、自分で調理するのも楽しいです。
旅行中に自分で食材を買って料理することはなかなかないかもしれませんが、もし機会があるならばぜひ豚肉を買うところからトライしてみてください。
特に、ノンハラルの豚肉コーナーを見つけたのであればチャンスです。日本とは違った豚肉の美味しさを堪能できますよ。
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