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フィリピンの仕事中に目撃した珍事件簿

驚き

ここはフィリピンです。日本で静かにシステムエンジニア(以下SE)をしていると到底お目にかかれない、「なんでそうなるの?」という珍事件の宝庫です。

”文化の違い”は最大限に尊重すべき!そんなことは赴任前に耳にタコができるほど聞きました。わかっています。でも、それでは片付けられないこともあります。

SEの仕事と言ってもその範囲は意外と広いのですが、ここでは「ある日系企業様のフィリピン新工場設立」時に遭遇した出来事をお話ししたいと思います。時にはクスリと笑ってしまい、時には危険をもはらむ実体験です。

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目次

スケジュール順守に向け緊迫したシチュエーション

設計

新工場設立プロジェクト推進の主体は日系ゼネコン。我々はそのゼネコンからの発注を受け、ITベンダ(納入業者)として作業をしていました。

工期も大詰め、進捗は当初のスケジュールよりも1ヶ月遅れています。それでも、C/O(カットオーバー=お客様への引き渡し期限)は厳守せよ!との強いご指示。

昼夜問わず、急ピッチで作業が進められていました。それでもスケジュールの大幅短縮計画には劇的な効果は見られません……。

とうとうお客様自らが全体作業をチェックすることとなりました。そんな緊迫した状況下、私もITベンダの責任者として、部下(フィリピン人作業員)への監視の目を厳しくせざるを得ない状態でした。

フィリピンでの珍事件1. 工場内でガンシューティング!?

ガンシューティング

灼熱の太陽の下、「日差しを直接浴びるよりは涼しいから」と、私には到底理解できない理由で長袖長ズボンに身をまとうフィリピン人作業員たち。せめて理由は「露出していると危険だから」ではないのかい?(私の疑問はどうでもいいですが……)

実態は、想像していたよりも本当に真面目に黙々と働くフィリピン人。休息時間はランチのみです。

私を含め、日差しを遮る工場内での休憩など許されないベンダ作業員は、建築資材の隙間に日陰を探し、屋台で購入してきたランチを貪るように完食。つかの間の昼寝タイムに落ちていました。そんな時にそれは起こりました。

突然の銃声に緊張が走る

「パァン!パァン!パァン!」破裂音よりももっと乾いた、瞬間的に銃声とわかる音に皆飛び起きました。てっきり銃声には慣れていると思っていたフィリピン人たちも、騒々しくあたりを見回しています。油断すると、まだ遠くの方から音が聞こえています。

工場と言うと、その敷地は広大です。端から端までは車で移動しなければならないほどです。幸か不幸か、我々が待機していた場所からはほど遠いところで何かがあったようでした。

耳を澄ませてもう音が聞こえないことを確認した時、2人のフィリピン人作業員がやってきて仲間内で何かをまくし立て、ドッと笑いが起きました。

発砲の原因は資材盗難

タガログ語で騒ぐ彼らの言葉が全く理解できなかったので、聞いてみました。「何があったんだい?」

すると、隣で腹を出して休んでいたフィリピン人、「資材を盗んで逃げた奴がいたらしい。警備員が追って発砲したんだろう」続けて笑顔で「はっはっは」……。笑いごとではありません。

救いはただ1つ、我々が雇っていた労働者ではなかったということ。まだ赴任して数ヶ月での出来事で、この先どうなるのか?と不安に思ったのを覚えています。

フィリピンでの珍事件2. 仕事中にハイ、ポーズ!

カメラマン

遅々として進まない工事進捗。お客様も、この頃の安定しない天気が全体スケジュール遅延に大きな影響を及ぼしていることはご承知なのですが、じゃあ仕方がないですね、なんて言えるはずもありません。

日本本社から圧力をかけられ続けており、それはもう私から見ても気の毒なほどでした。業を煮やしたお客様はとうとう「毎日全ベンダの作業をチェックする!」と言い出しました。

少しでもサボりを発見したら該当ベンダを叱りつけ、同時に自分の保身、つまり「ここそこの作業が遅れているから悪いんだ!」と日本へ提示する証拠を探しているようでした。その”証拠”は毎朝の日本人だけの定例会で開示されることになります。

言い逃れできない1枚の写真

実施されて1ヶ月、幸い私は怒られることもなく、優秀なフィリピン人作業員たちに誇りすら持ち始めていました。

一方、その傍らでは「重機を設置するのにここを傷つけた」「計画していないところに穴を開けて雑に埋めただろ?」他ベンダの日本人責任者が子供のように叱られ、対策を講じるようきつく言われています。

”明日は我が身”という言葉をすっかり忘れていました。今日の朝礼ではどこが怒られる?そんな態度で臨んだ時、見破られたかのように1枚のポラロイド写真が私の前に投げつけられます。

「そのTシャツはおたくの作業員だよね?」その言葉だけで全てを理解できるくらいシンプルな写真でした。

  • 私の作業員です
  • 完全にサボっています
  • 本当にすみません

私の頭を1秒で駆け抜けた言葉たちです。

立ち入りベンダが多いので、混同しないようTシャツの色で自他作業員を見分けるようにしていました。被写体は、青いTシャツを着た2名の作業員。工場内でタバコを片手に笑顔でピースサインをしています。

明らかに呆れるお客様からの「記念撮影ですか?」という、叱責よりもよほどこたえる問いに、言い返す言葉など見当たらなくなっていました。

フィリピンでの珍事件3. 設置しているように見えたカメラは…

防犯カメラ

何とか工期短縮を図ることができましたが、当初の予定を達成できるかどうかの瀬戸際でした。

お客様からは最大限に譲歩をいただき、工場全体リリースではなく、お客様の優先度を加味して区画を設定し、順次リリースというご提案をいただきました。

お客様としては、「毎日記念撮影しているわけにはいかない」、本来やるべき作業をできるところからしていきたい。それは当然です。最初のリリース区画がお客様によって設定され、全ベンダがそこに注力しました。

それぞれ担当区画を確認

リリース前日、「確認は各ベンダの日本人にて」とお客様から指示され、最終チェックへと向かいました。区画と言っても工場です。学校の校舎よりもずっと広大です。

IT担当である我々は、サーバ室を筆頭に構内ネットワーク網を図面と共にチェックして回りました。

ネットワーク網を分岐するジャンクションと呼ばれる部分の天井を開け、設計図と同様の配線がなされているかを確認。簡単な作業なのですが、その数には参りそうになりました。

監視カメラを設置中、と思いきや

途中、脚立に乗った数名のフィリピン人作業員が監視カメラをいじっているのに出会います。監視カメラは我々の担当ではありません。

確かにこのチェック前、「まだ作業の終わっていないベンダがいる」とお客様がおっしゃっていたので、気にも留めないで自作業に徹しました。

数時間のチェックを終え、ベンダの集合場所に戻ると、雰囲気で何かが起こったのだ、と推測できました。全ベンダの日本人が戻ると、お客様が開口一番「監視カメラが盗まれました!」

見抜けなかった自分を反省

私が見た、どう見ても設置・調整していた彼らは窃盗の最中だったのです。「すみません、目撃しました」素直に謝りましたが「別ベンダでの出来事、わかるはずがない」そうおっしゃってくれました。

聞けば「作業の終わっていないベンダがいる」という私が聞いた言葉には大事な部分が抜け落ちていて、「リリース箇所以外で」の接頭句が抜けていたのでした。会社として大事には至りませんでしたが、個人として大変反省した出来事でした。

フィリピンでの珍事件4. テレビ会議は手話ですか?

会議

新工場として順次稼働を開始したお客様との次の商談は、業務に必要となる機器を工面するためのものです。

各居室のレイアウトなど、もちろんお客様は工場建設前から計画していたはずです。しかし、実際の建物を考慮し微調整を入れて最終決定が成されたようでした。

ご相談をいただいたのは、ここフィリピンの会議室と日本を結ぶTV会議システム一式です。

当たり前ですが、私は日本人です。そしてSEです。日本から、必要となるスペックを日本語で述べるお客様の真意を汲み取って構成図を起こします。原則ここまでがSEの仕事。フィリピン人営業へ説明と共に構成図を渡しました。

フィリピンメーカーのモニターでプレゼン

日本で手配できるものが必ずフィリピンでもできるという訳ではありません。万が一お客様からメーカーを指定されても、フィリピンでは購入できないものがあります。

それをフィリピンで購入できる同性能のものへと置き換えるのがフィリピン人営業のなせる技です。

1週間後、現地にいるお客様先へ赴き、フィリピン人営業から手配機器の説明をさせました。日本からもTV会議システム(レンタル)にて責任者が会議へ参画しています。

一通りの説明を終えると、日本サイドから質問が入りました。「他社よりはるかに安いですね」好感触です。

「これはTVモニターですよね、チューナーは内臓されているんですか?」通訳してフィリピン人営業へ伝えます。「No, sir」通訳するまでもありません。

まさかのスピーカーなし

日本ブランドではない格安モニター。「画質にこだわるつもりはないのですが……」日本からの声が続きます。「音量は十分ですよね?」それを通訳すると、フィリピン人営業から爆弾発言が投下されました。「スピーカーは内蔵されていません

絶句です。

続いて発せられたお客様の言葉に、「センスいいなぁ」などとは口が滑っても言えません。TVモニターに映し出されたお客様、「会議は手話ですか?」

顔は全く笑っていません。現地のお客様日本人責任者は目を閉じてしまっています。私は入るべき穴を探しました。隣でニコニコしているフィリピン人営業をつねりたいのを我慢するのがやっとでした。

帰社し彼と話すと、もらった構成図にスピーカーが描かれていなかったからだ、そう言われました。

まとめ~文化の違いに優劣はない

フィリピンは日本よりも下。そんな固定観念をお持ちの方が日本には多くいらっしゃると思います。かくいう私もフィリピン赴任前、そして赴任当初までそうでした。とても恥ずかしいことです。

上とか下などどこにも存在しません。お互いの文化を知り尊重する、時には歩み寄る。そうやって仕事はしていくものです。

しかし、「ミスしたときにはちゃんと叱らないと」とフィリピン人を見ると、屈託のない笑顔で私を見つめています。あの笑顔を見たら……。人命に関わるような場合以外、私は怒れません。

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この記事を書いた人

海外就職・海外求人マッチングサービスGuanxiを運営しているIT企業。
世界各地をお仕事で飛び回っています。

世界各地で滞在し、見たもの、感じたもののリアルを届けます。

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