ニュージーランドに来て間もない頃、私の英語力はといえば日常会話はなんとかなるけれどビジネス英語は全く自信がありませんでした。英語で電話をとるなんて怖くて仕方がなく、家の電話でさえ夫にいつもとらせていたくらいです。
そんな私が現状打破のためにある歯科技工所の求人に応募し、就職しました。英語で電話・来客応対と、忙しいオフィスを取りまとめる日々。なぜか半年後にはオフィスマネジャーの肩書を得ていた、というニュージーランドでの就職体験談をご紹介します。
ニュージーランドで初めての就職活動
当時の私は英語に全く自信がありませんでした。いつもネーティブスピーカーの夫の陰に隠れて、難しいことは全て夫に丸投げしていました。
そんな生活を続けていたら自分が赤ちゃんになってしまったような気になります。英語の面だけでなく、本当に自分自身に自信が持てなくなってしまったのです。
だんだんと鬱のようになってきてしまい、「これではマズイ」と思った私はとにかく外に出てみようと思いました。そして、英語がそんなにできなくてもなんとかなりそうな業種に絞って、仕事を探しました。
見つけたのが歯科技工所の雑用係です。仕事内容はかぶせ歯を作るのに一番最初に必要となってくるモデル形成と、できた商品の配達というものでした。
面接行ったらジョブオファー?
履歴書を送りましたが、私の経歴は全て日本でのもの。ニュージーランドでは知人の会社で短期アルバイトをしただけでした。
面接に呼ばれ、ドキドキしながら行ってみました。面接官が私の履歴書を見ながら「あなたの仕事の経歴は全てオフィス業務だね……」と言いました。
「あ~、この仕事には合格しないかも」と思ったその瞬間です。「受付兼オフィス担当の人が急きょ辞めることになったからやってみない?」と言われたのです。
私は特に考えもせず「Yes, Please!!!」と即答していました。
取りあえず動くことで道が開ける
もし、この状況がメールでのジョブオファーなら、どうだったでしょう。私の考えすぎる性格から「ビジネス英語を使って電話なんかとれないよ」と時間をかけて考えた末に、断っていたでしょう。
しかし、面接の場で気持ちも高揚してたせいか、本当に何にも考えずに「やります!」って言っていたのです。
仕事のための準備で必死に取り組んだこと
初めての英語での受付・オフィス業務、何を準備したらいいのでしょうか?
ニュージーランドでオフィス業務の経験がなかった私は、義理の家族や友達にいろいろ聞いてみたのです。「まずは電話の基本的な取り方をマスターしろ!」と言われて、夫を巻き込んで自宅でロールプレーイング練習をしました。
もう1つは、小切手の切り方とデポジットの仕方です。今ではインターネットバンキングが主流で、小切手を切ることはほとんどありません。
が、当時は買い掛け支払いには小切手を切り、売り掛け入金にはデポジットスリップを記入して入金処理をしなければなりませんでした。ですから小切手の扱い方の練習もしました。
英語の名前の発音練習
もう1つみっちりと練習したことは、クライアント(主にドクター)の名前を正確に発音する、ということです。
仕事の初日にクライアントの名前が書いてあるリストをもらいました。それを家に持ち帰って、夫に名前の発音練習に付き合ってもらいました。
意外に思われるかもしれませんが、一番難しかったのが「Smith」という名前です。何度やっても上手に発音できず、特に最後の「th」の部分が本当に難しく苦戦しました。
肩書敬称「Dr.」を忘れない!
義理の家族から「これは注意するように」と言われたのは、ドクターには必ず名前の前に「Dr.」を付けて呼ぶことです。
当たり前ですが、彼らは自分の仕事や肩書にとてもプライドを持ってます。ドクターと知らずに「Mr.」と呼んだら「僕はドクターだよ」と言われたこともありました。
そんな感じで、仕事が始まる前に最低限のことを練習して備えました。「あとは仕事をしながら覚えていくしかない!」と腹をくくったのを今でも覚えています。
仕事の内容は総務&経理の事務
仕事の内容は、主に電話応対・来客と患者の応対・売り掛けと買い掛けの処理・仕事の受注発注管理などでした。とにかく、クライアントの歯医者側からの電話がとても多かったです。
しかし、そのお陰でレギュラークライアントの名前をすぐに覚えることができました。初めはドキドキしながら電話に出ていたのですが、そのうち緊張している暇もない職場と自覚。英語での電話応対能力を比較的早く身に付けることができました。
文化の違い?苦労した点
この仕事を始めて一番苦労したのは、なんだったでしょうか?それはどんなにこちらが注意をしていても、歯医者側の不注意でトラブルに巻き込まれることでした。こちらが送った成果物をなくしたり、保管場所を間違えたりとミスはさまざまです。
例えば、17日までに送らなければいけない成果物は、遅くても2日前の15日に届くように発送していました。実に多かったのが「ちょっと~!届いてないんだけど!」と当日になって担当ナースからかかってくる電話です。
慌てて宅配便会社の配達記録をチェックしてみると、配達完了で受取人はサインもしているという状況。それを伝えると、9割は「あった~!見つけたわ!じゃあね!」という返事。
ニュージーランド人は謝らない?
このようなとき、謝る人はほとんどいません。ナースは患者が来ているのに出来上がったクラウンを準備していなかったことで、歯医者から怒られているらしいのです。私は八つ当たりの標的となり、電話をガシャン!と切られたことは何度もあります。
日本人だったら謝りますよね?でも、ここはニュージーランド。謝るときはよっぽどのときという環境で育ってきているのでしょう。笑ってごまかすか、逆切れというパターンが多かったです。
ここで誤解していただきたくないのは、もちろん全員がそうではありません。ただ「ニュージーランド人は日本人ほど簡単には謝らない」というのを覚えておくと、あまりショックも受けません。
なぜか歯科技工所のオフィスマネジャーに
こんな感じで英語での電話の応対、働く上での文化の違いなどにも慣れてきた頃、小さい技工所でしたが私にも部下ができました。仕事が忙しくなってきて残業が続いていたため、アルバイトの若い子を上司が雇ってくれました。
そのタイミングで、サプライヤー(材料業者など)とのやり取りが増えてきた私にも名刺を作っていただけることになったのです。すると上司が「部下もできたし、オフィスマネジャーって役職つけといたから」と一言。
いいかげんニュージーランド万歳!
内心「部下1人しかいないのにマネジャーって名乗っていいの?」と思いました。私の心を読んだかのように、上司がこう言ってくれました。
「やっていることはマネジャーだよ。多くのオフィス業務の采配は君がしてるんだから。それにマネジャーって履歴書に書くと箔(はく)がつくよ」
日本でしたら部下1人でマネジャーという役職はくれないと思います。ニュージーランドのそういういいかげんな点は「本当に最高」と思った瞬間でした。
実際、その後にキャリアアップのため転職した際には面接官の注意を引くことができました。「オフィスマネジャーやってたのね。どんな仕事内容だったの?」と聞かれました。本当に当時の上司には感謝です。
まとめ~棚からぼたもち
このお仕事は私がニュージーランドで働いていく上で、プラスになりました。履歴はもちろん、大きな自信をくれました。
上記の通り、履歴書を送ったとき全く違ったポジションをオファーされました。最終的にはキャリアアップにつながるオフィスマネジャーの肩書を得たのは、本当にラッキーだったと思います。
皆さんも「ビジネス英語なんて無理」と思わず、まずは最初の一歩を踏み出してみましょう。そこから想像もしていなかった道が開けるかもしれません。
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