ドイツの学校システムとは?ドイツに行ったら子どもの教育はどうなるの?

ドイツの大学 ドイツ生活・移住

小学校6年、中学校3年、高校3年、そして大学という日本の学校制度は世界共通ではありません。ドイツではどうなっているのでしょうか。

小学校に入る段階では日本とあまり差のないドイツの教育制度ですが、小学4年生頃から日本とは大きく変わってきます。ドイツでは10歳の時に将来の進路選択をしなければならず、近年このシステムを巡ってさまざまな議論がなされています。

中等教育までのドイツの学校制度を見ていきながら、私も在住するドイツに日本人が住んだ場合、どのような学校の選択肢があるのかもご紹介します。

ドイツの学校教育制度

ドイツ

ドイツは16の州からなっています。それぞれに州政府、州議会、州憲法、州裁判所などがあり、州が一つの国家のような役割を担う地方分権制です。

16の州でそれぞれの決まりごとや祝祭日、法律が違い、教育制度も少しずつ異なりますが、ここではだいたい共通している大枠を紹介したいと思います。

義務教育は9年が基本

ドイツの義務教育は9年(州によっては10年)です。

基礎学校に4年通い、10歳で進路を選ぶ

幼稚園や保育園を卒園して最初に入る学校はグルントシューレ(Grundschule)と呼ばれていて、日本語では基礎学校と訳されています。

これは日本でいう小学校と同じような学校で、6歳になるとみんなこの基礎学校に入学します。そして、10歳になる4年生で初等教育が終了し、今後の進路に沿った進学先を決めます

これが最初の大きな分岐点になります。

就職か大学か、3つの中等教育機関から選択

この時点で子どもたちは将来進む道を考えながら、中等教育機関として位置づけられている3つの学校のうち1つを選ばなければいけません。

その3つの学校とは以下の通りです。

  • 基幹学校(ミッテルシューレ/Mittelschule、旧ハウプトシューレ/Hauptschule)
    卒業後、就職し職業訓練を受ける
  • 実科学校(レアルシューレ/Realschule)
    職業訓練をメインに、高等教育に関する授業も実施
  • ギムナジウム(Gymnasium)
    大学進学が目標

それぞれの学校の内容や特徴は次項で説明しますが、簡単にいうと、この進路選択では就職するのか大学に進むのかがポイントです。そして、それぞれの選択した学校を修了し、社会に出て行くのです。

現システムに対する問題も

ドイツでは、この進路選択が早すぎるのではないかということが議論されています。

また、高等教育を受ける子どもの増加により、就職を目指す基幹学校について、成績の悪い子や移民の子が通うというイメージが定着してしまうなどの問題も起きています。

それを解決するために、一部の州では総合制学校(インテグリールテ ゼクンダーシューレ/Integrierte Sekundarschuleまたはゲザムトシューレ/Gesamtschule)と呼ばれる、基礎学校からの一貫校が設置され始めています

ドイツの学校の役割と特徴(初等・中等教育機関)

ドイツの学校

学校改革を何度も重ねているドイツですが、大枠は大きくは変わっていません。それぞれの学校の特色は次の通りです。

初等教育機関:基礎学校(Grundschule)

上述したように、子どもたちが最初に入学する学校です。日本の小学校と違う点は、これもすでに述べた通り4年制であることです。

入学式には特別なプレゼントを用意

記念すべき基礎学校の入学式には、シュールトゥーテ(Schultüte)という特別な贈り物を子どもたちに用意するのが慣わしになっています。

直訳すると「学校袋」なのですが、円錐形の大きな紙製の入れ物に、親がお菓子や文房具、本人が欲しがっていたおもちゃなど、子どもの喜びそうなものを詰めてプレゼントするのです。

この伝統は1810年にまでさかのぼり、当初は入学式の子どもの緊張を和らげるため始まったそうです。

ドイツの新学期は9月なので、毎年、夏休み頃からこのシュールトゥーテが店頭に並び始め、入学に合わせて親が準備します。すでに出来上がっているものもあれば、工作して手作りを楽しむことができるものもあります。

中等教育機関1:基幹学校(Hauptschule)

5年制の学校で、卒業後、就職し職業訓練を受けます。最終学年に上がるときにだけ進級試験があり、最終的に卒業者には修了証が発行されます(日本の中学卒業資格に相当)。

通常、この基幹学校から、大学進学を目指すギムナジウムへの編入は難しく、ほとんど例がありません。というのも、進学する意志のある子どもは最初から別の学校を選択するためです。

基幹学校を選択した子どもは多くの場合、15歳前後で就職することになります。

中等教育機関2:実科学校(Realschule)

基幹学校と同じように職業訓練をメインに行う学校で、課程は6年です。実務訓練だけでなく、高等教育に関する授業も行われます。

就職を希望して進学する子どものほかに、ギムナジウムに入れなかったけれど将来ギムナジウムへの編入を目指している子どもも通っています。

卒業時に中学卒業相当の資格とギムナジウムへの編入試験の受験資格がもらえますが、実際にはギムナジウムへの編入試験は難しく、ほとんどの場合は就職することになっています。

中等教育機関3:ギムナジウム(Gymnasium)

大学進学を希望する子どもたちが通う8年制(州により9年制)の学校で、日本でいうと中学・高校に相当します。

学校によって重点を置く科目が違いますが、例えばドイツ語、英語、フランス語、数学、理科、社会、芸術、宗教、またラテン語・ギリシャ語など古典語の授業があります。

最後の2年または3年は大学入学資格試験であるアビトゥーア(Abitur)の準備をします。アビトゥーアは全国統一試験なのですが、州によって難易度が異なっているのが現状です。

アビトゥーアの成績によって入学できる大学や学部が変わってくるので、とても重要な試験です。

日本人がドイツの学校に通う場合の3つのパターン

ユーロ

日本人の場合、滞在目的により3つの選択肢があります。

  • 現地校に通う
  • インターナショナルスクールに通う
  • 日本人国際学校に通う

1:現地校

今後もずっとドイツに居住し続ける場合はドイツの現地校に入るのが一般的です。授業はもちろんドイツ語のみで行われます。

ドイツの学校は基本的に学費無料なので、経済的には通わせやすいですね。

2:インターナショナルスクール

基本的に英語とドイツ語で授業が行われます。ドイツ語を母語としている子どもとそうでない子どもでクラスが分けられており、最初の数年間は英語の集中コースが設けられています。

外交官、新聞記者など転勤の多い職業のご家庭の場合、英語を身につけておいた方が将来役に立つということで子どもを通わせているケースが多いですが、実は結構学費がかかります

小学校ではなんと年間200万円!現地校が無料なのに対し、かなりの出費になります。

3:日本人学校

日本の学校と全く同様に、日本のカリキュラムに基づいて授業が行われます。

日本の教科書を使用し、言語ももちろん日本語、教職員もみんな日本人です。短期の滞在の場合や、将来日本に帰国することが決まっている場合などは、帰国後のことなども考えて日本人学校に通わせるご家庭が多いです。

ただし、どこの都市にもあるというわけではなく、学校数が限られています。2017年現在、デュッセルドルフ、ハンブルク、フランクフルト、ベルリン、ミュンヘンにあります。

学費は年間50万円ほどです。

メインの学校+日本語補習校という手も

現地の学校やインターナショナルスクールを選ぶなら、それに加えて日本語補習授業校という学校に通うこともできます。

ここでは、日中に通うメインの学校が終わった後または土曜日などに週一度ぐらいのペースで、普段は勉強できない日本語を補習することができます。

日本語の教育も並行して受けさせたい場合や、ドイツ語と日本語のバイリンガルを目指す場合には、補習校に通うのがおすすめです

ドイツでの学校選びのポイント

ドイツの学校

ドイツに永住するのか、日本に帰国する予定や転勤の可能性があるのかなど、それぞれのケースで学校選びのポイントが変わってきます。

永住する場合

ドイツに永住するなら、子どもの望む進路をまず明確にすることが大切です。大学進学を目指すのかどうかが大きなポイントになります。

高等教育を希望してギムナジウムに進学する場合は、学校によって力を入れている教科が異なるので、しっかり確認するといいと思います。

いずれ日本に帰る場合

日本に帰国する予定がある場合には、ドイツ滞在中に子どもにどんな力をつけさせてあげたいかが重要だと思います。

帰国後、スムーズに日本の学校になじめる選択肢は日本人学校です。学業の継続や進学などにも、やはり有利だと思われます。

一方で、現地校やインターナショナルスクールで過ごす日々は日本では経験できない印象深いものになることが多く、特別な思い出ができるのも魅力の一つです。

言葉の問題をどう解決するか

最初の段階で子どもが英語もドイツ語もできない場合、現地校やインターナショナルスクールを選ぶのはかなりの勇気がいりますが、近年はそういう経験をさせるご家庭も増えてきているようです。

子どもの言葉の上達は速いので、本人に通う意志があれば任せてみるのもいいかもしれません。

ただ、言葉が通じないストレスは思った以上に大きいので、親が注意して子どもの様子を観察し、そういったストレスを上手く吐き出させてあげる必要があります。

困ったら詳しい人に相談を

早期の進路選びや現地での学校選びは、子どもにとってその後の人生を左右する大きな選択でもあるので、もし分からないことがあったり迷ったりしたときは詳しい人に相談するといいでしょう。

ドイツ人の知り合いや、ドイツに長く住んでいる先輩日本人がいればそれに越したことはないのですが、ドイツに渡ったばかりで誰も知り合いがいないという場合は、たいてい居住地区ごとに市の運営する子育て相談窓口があるので、そういった場所を利用してみるといいと思います。

子どもの意見も聞きながら、無理のない選択をしましょう。

まとめ~情報を集めて理想の学校を選択

ドイツの教育制度はまだまだ改革中で、問題も抱えています。子どもの声に耳を傾けながら、自分たちにぴったりの学校を選べるよう、しっかり情報収集して選択に臨んでください。

ドイツでは、住民登録した際に子どもがいることが分かると後日、職員が訪問に来て、学校システムや子どもの定期健診などの健康管理について説明してくれます。そのときに詳しく話を聞いてみるのも一つの方法ですね。

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