私は以前、カナダの幼児教育施設で働いていました。簡単に言えば幼稚園や保育園の先生です。
日本では、保育士さんの労働環境が悪いことが問題になっていますよね。
私は日本では別の仕事をしていたため、日本の同じような職種と比較することはできないのですが、これからカナダで、特に幼児教育者として就職したいという方の参考になるように、カナダで働いていたときの仕事事情をお伝えします。
カナダの幼児教育施設での仕事とは
カナダで幼稚園の先生として働くために私が取得したライセンスは「Early Childhood Educator」。現場では略してE.C.Eと言われています。
ちなみに、現地の幼児教育施設というのは「Daycare」や「PreSchool」など、だいたい5歳以下の子どもたちを預かる施設のことです。そして日本と同じように、認可・認可外、規模の大小、公立・私立などの違いがあります。
私が働いていたのはGroup daycareと呼ばれるDaycareで、BC州(ブリティッシュコロンビア州)の認可保育施設でした。Full time employee(正社員)として働いていましたが、最初から正社員だったわけではなく、非常勤の期間を経て正社員というポジションを獲得しました。
仕事内容
子どもたちは0歳から5歳まで。クラスは3つで、乳児クラス(Infant Class)、幼児クラス(Toddler Class)、3~5歳児クラス(3-5 Class)です。私は基本的には3~5歳児のクラスを担当していましたが、場合によっては幼児クラスも兼任するようなポジションでした。
子どもたちと一緒に遊び、おやつを準備し、昼食を温めて食べさせ、散歩に連れて行きます。また、アクティビティの準備・手助けのほか、保護者との良好な関係の構築などにも気を配り、他のスタッフたちと協力して子どもたちが一日、心身ともに安全に過ごせるようにするのが仕事です。
勤務体制
開園時間は朝7時から夕方6時までで、スタッフは基本的に朝6時45分から夕方6時までをシフトで回していました。私は真ん中の時間帯、朝8時くらいから夕方5時半くらいでシフトが組まれることが多かったです。
朝と夕方は保護者との信頼関係を築く時間帯です。保護者とのコミュニケーションを十分に取らなければいけないこの時間帯は、原則ベテランのスタッフが担当していました。
経験を重ねるにつれ不安がやりがいに
仕事を始めたばかりの頃に大変だと感じたのは、国籍・文化背景がそれぞれ違う子どもたちとそのご両親や保護者の方たちを理解すること。英語という言葉の壁があり、さらに日本で経験のない私にとっては仕事も分からないことばかりで、最初はとにかく「不安」が大きかったです。
でも、少しずつ共通している価値観を見つけて子どもたちと近くなり、保護者から信頼されるようになると、不思議と仕事も面白くなっていきました。
カナダの幼児教育施設での勤務時間
前述したように、私は朝8時くらいから夕方5時半くらいに勤務することが多かったです。
規定の労働時間は1日7時間、そこにプラスで合計1.5時間の休憩があったので、拘束時間は8.5時間でした。休憩は、1時間を1回、15分を2回と分割して取ることになっていました。
シフトの終了時間になると「帰る時間だよ」「早く帰りな」と言われ、終業時間の10分後にいようものなら「なんでまだいるの?」と言われることも。
日本で働いていたときには、定時で帰れるかどうかは上司の気分次第であったり、上司が帰ってやっと退勤できる雰囲気があったりしたので、終業時刻が近づくとゆううつでした。
カナダの白黒はっきりしたシンプルな労働環境は本当に自分に合っていて大好きでした。
カナダの幼児教育施設での給料
時給ベースの月給制。月によって勤務日数が違うので給料も変動しました。
当時の時給は13.11カナダドル(約1100円)。1日7時間労働が規定なので、ひと月21日勤務として計算すると1,927カナダドル(約16万円)です。
ここから健康保険料、年金、組合費、税金などが差し引かれ、手取りがだいたい1,676カナダドル(約14万円)でした。
参考までに、下記はカナダの時給事情です(※2016年9月現在)。
- BC州の最低賃金=General minimum wage in BC:時給10.85カナダドル(約910円)
- BC州の正社員として働く人の平均賃金=The average hourly wage for full-time employee in BC:時給26.58カナダドル(約2200円)
- カナダの教育機関で働く人の平均:時給32.65カナダドル(約2700円)
- カナダのサービス業(飲食・宿泊)の平均:時給14.38カナダドル(約1200円)、各業種の中で最低レベル
参考:
- BC州ホームページ:https://www.welcomebc.ca/
- カナダ政府:http://www.statcan.gc.ca/
※1カナダドル=約84円(2017年5月現在)
給料の受け取り方法は?
最初の契約時に指定した銀行に毎月振り込まれます。職場から銀行の指定は特にありませんでしたが、カナダの銀行でないと振り込んでもらえません。
カナダの主な銀行例(ホームページリンク)
- TD:TDカナダ・トラスト(https://www.tdbank.com/)
- RBC:RBCロイヤルバンク(http://www.rbcroyalbank.com/)
- BMO:BMOモントリオール銀行(https://www.bmo.com/)
- BNS:スコシア・バンク(http://www.scotiabank.com/)
- CIBC:カナダ商業銀行(https://www.cibc.com/)
口座開設される場合の参考にしてください。
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[/col][col][/col][/2col]カナダの幼児教育施設でのボーナス
ボーナスは、勤務先によって規定が違います。私自身はもらったことはありませんが、一時期、大学の敷地内にあるDaycareで非常勤で働いたことがあり、Full timeのスタッフにはボーナスがありました。
そこは休憩時間も時給換算されるという素晴らしい雇用条件だったのですが、英語のスキルやキャリア実績が不十分だった私にはハードルの高い職場でした。
カナダの幼児教育施設の福利厚生
住宅手当・交通費補助
住宅や交通費に関する手当は特にありませんでした。
私がカナダに住んでいたのは約5年でしたが、BC州に属するバンクーバーでこういった手当をもらえる職場の話は聞いたことがありません。100%とは言えませんが、基本的にはないと考えていいと思います。
健康保険
私が勤務していた組織の健康保険の保障内容を簡単に説明します。
- 医療費無料(薬代は含まない)
- 歯科無料(美容は含まない)
- 規定の範囲内でマッサージ代などを年に5回分負担
- 配偶者・家族の医療保険もカバー
お給料の項目でも触れましたが、健康保険料は毎月、天引きされていました。
福利厚生の充実は就職先決定の判断材料
特に健康保険や医療関係の福利厚生に関しては、それぞれの会社や組織で違いが出るポイントです。
日本と同じように、カナダにもブラックな職場は存在します。まったく保障がない会社も実際にありますが、個人的にそういう企業は選ばないことをおすすめします。
福利厚生が充実していない職場は従業員のことをあまり考えていないと判断できます。福利厚生を充実させることは企業の当然の義務であり、「いい企業」と判断する一つの基準です。
カナダでの就職を考える方は、雇用契約をする前に時給だけでなく福利厚生にも注意してください。
カナダの幼児教育施設での有給休暇
カナダでは有給休暇を「Vacation Pay」と言います。私の職場では、働いた時間に比例して増えていき、1年勤続すると約40日の有給休暇が与えられました。
有休は、ほぼ全員がきちんと消化します。「ほぼ」というのは、マネージャーだけ翌年に繰り越すことがあったからですが、その年に休めなかったマネジャーも翌年早々に休暇を取っていました。
たいていのスタッフは1カ月くらいまとめて取得するので、いつも誰かいないのが普通。でも、お互い様で文句はなし。それに、お互いの休暇について話すのがコミュニケーションの一つでもありました。
休暇中の過ごし方
私も同僚たちと同じように「1週間」と「1カ月」の2回に分けて有休を取ることが多かったです。「1週間」はどこかに旅行、「1カ月」はたいてい日本に帰国。
他のスタッフも多国籍だったので、長い休暇には里帰りする人がほとんどでした。
カナダの幼児教育施設での病気休暇(有給)
カナダでは「Sick Hours」などと言われる、病気の場合に使える休暇があります。バケーションのための有給休暇とは別扱いで、しかも給料は保証されます。
急な発熱や生理痛などでも電話一本で給料が保証されるので安心です。しかも、代わりの人を探したり依頼するのはマネージャーの仕事なので、自分はマネージャーになるべく早く電話をかける以外することはありません。役割分担がはっきりしています。
治療に専念できる
日本でもそうだと思いますが、子どもたちの風邪がうつったり、インフルエンザなどが流行したりするのは毎年のことですよね。スタッフも予防だけでは避けられないことがあり、実際に私もカナダでウィルス性胃腸炎に2回ほどかかりました。
でも、この「病気休暇」を利用すれば、とにかく早く病気を治すことに専念できるので安心でした。
カナダ就職のリスクとメリット
私が働いていた職場は、スタッフメンバーや労働条件などに恵まれた環境だったと思っています。高給とは言いにくいものの、金銭的なトラブルや人間関係でのトラブルもあまりありませんでした。
しかし、いろいろな職場があるのも事実です。私も、ある職場で給料がもらえなかった経験があります。また、友人の中にはアジア人や日本人に対して差別的な人がいて悩んでいたり、真面目に働いていたのにいきなりクビになったりした人もいます。これらはすべて事実です。
働いてみなければわからないことですが、こういう事実があることを知っていることは必要だと思います。知っていることで、リスク回避できることもあります。
カナダに来なければ得られなかったもの
私の場合、日本でやっていた仕事とは関係なく、キャリアを積めたわけでもないので、意味がなかったと見る人もいます。でも、海外という新しい環境の中で本当にゼロから揉まれながら生き抜いた経験は、日本にいたら得られなかったものです。
もちろん、日本にいたらカナダでできた友人にも出会えませんでした。
経験と友人、それらは私にとって今でも本当にかけがえのない宝です。日本にずっといたら絶対に絶対に得られなかったものです。
まとめ〜新しい自分と出会えたことも貴重な財産
結婚話を機にカナダを離れることになってしまった私ですが、今でもカナダで働いていた頃をなつかしく思うことがよくあります。言葉や文化の壁もあり、大変なことも多かったですが、私自身はすごく働きやすかったです。環境が自分に合っていたのだと思います。
それに、自分を知っている人のいない場所に行ったことで、「私はこういう人間だ」と考える自分の縛りから抜け出し、心の健康を得ました。知らなかった自分にもたくさん出会えました。
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