海外で仕事がしたい。でも、家庭も持ちたい。そう思う人も少なくはないと思います。家庭があるからこそ、それを支えるためと仕事も頑張れる。そんな人もきっとたくさんいますよね。
そういった方たちのために今日は、カナダで育児をしながら働くうえで知っておくと助かる情報を、いろいろお伝えしようと思います!
*筆者が住んでいるのは中部のサスカチュワン州で、こちらに書いてある事例はこの州の話になります。カナダは州によって制度に違いが多くみられますのでご注意ください*※1カナダドル=85円
産休の期間と、産休中の手当てについて
日本と同じようにカナダでも、産休や育休制度は政府の補助のもと確立されています。まずはこの、産休について説明しましょう。英語では、Maternity leave(マタニティー・リーブ)といいます。
こちらは、カナダ政府ウェブサイトの産休と育休についてのページです。仕事をする人が妊娠・出産で休暇を取る際に必要な情報が、細かく説明されています。
こちらによると、産休は、
- 雇用保険が適用される職場で、600時間以上勤務した人
- 妊娠に伴って、1週間あたりの収入平均が4割以上減った人
- 出産する(した)本人のみ
取ることができるというものです。
ですから、パートタイムで働いている人でも、600時間以上その職場に勤めていれば産休を取ることができます。
この、600時間という数字にまつわるエピソードがあります。
私は長男を出産する前に大学付属のカフェでアルバイトをしていました。2007年の8月末から始めた、カナダに来て初めての仕事。職場の人もお客さんもフレンドリーで楽しく働いていました。
長男は2008年の5月に生まれる予定で、産休を取るために2月くらいからは勤務時間数も気にしながら働いたりしていたのですが…。結局予定日より2週間早く出産になってしまったのです。
それまでの勤務時間は593時間…既定の600時間にわずか数時間足りませんでした。
出産がいつ始まるかはコントロールできないので、仕方ないとあきらめました。しかし、もしあと1日バイトに行けてさえいれば、毎月数100ドルの補助が1年間もらえていたわけです。もったいないことをしたなと、今でも悔やまれます!
産休の間、いくらくらい支払われるのかという部分ですが、これは給料の55%とされています。仮に月収20万円だったとすると、11万円が支払われる計算ですね。
なので普段の収入額からはずいぶん減ってしまうことになりますが、それでも仕事ができない状況になっても無収入ではないというのはありがたいことです。
産休の期間は最長で15週間取ることができ、これは連続した期間でなくてもよいとされています。
ですから例えば、妊娠初期につわりがひどくて3週間、中期に切迫早産で入院になってしまったからと4週間、そして出産準備ということで臨月に入ってから5週間というような申請も、問題がないということになります。
これはとても合理的で、ママにとってはうれしい配慮ですよね。
いざ仕事に復帰!託児はどうする?
産休から育休へ
出産後は、産休を育休に切り替えることになります。育休は、Parental leave(ペアレンタル・リーブ)。父親が取る場合はPaternity leave(パタニティー・リーブ)といいます。
カナダの育休は生まれた子どもの家庭に対して与えられる休暇で、父親と母親両方が取ることもできます。
知人の家庭は、赤ちゃんが生まれてすぐはママとパパ両方が休暇を取り、3週間くらいしてから父親が仕事に復帰。そのあと半年くらいでバトンタッチして母親が会社に戻り、父親が再度休暇を取って赤ちゃんのお世話をしていました。
育休は最長で35週間取ることができます。産休と合わせることもできるので、ママの多くは1年ほど仕事を休むようです。
育休期間の給付額は産休と同額で、休暇前の給与の55%となっています。
ちなみに私はカナダで4人出産しましたが、私自身は申請資格を満たしていなかったので、産休も育休も取ったことはありません。
また育休は上で挙げたように、家庭全体の収入が出産と育児によって4割以上減少する家庭が対象ですので、パタニティー・リーブを取るケースは、ママが出産前にバリバリ働いていた場合ということになります。
ですから我が家は夫も育休は取っていません。
36週目以降も育休を延長することは可能です。その場合は支払額が休暇前収入の33%に減りますが、最長61週間までは育児に専念することが許されています。
このように、各家庭に合った形で誰が赤ちゃんのお世話をするかを決め、自由なスタイルで赤ちゃんを育てることができるのがカナダの育休のよいところです。
しかしながら先に述べた通り、収入は以前の半分強ほどになってしまうので両親がそろって育休を取る家庭は多くありません。
そして多くの家庭は赤ちゃんが生後1歳を過ぎたあたりから共働きに戻るので、赤ちゃんをあずけることが必要になります。そこで登場するのが、保育所です。
カナダの保育所
日本でいう保育園ももちろんあるのですが、それと同じくらい需要が大きいのが、Day home(デイホーム)といわれる保育ママのような施設です。
これは保育者が自宅を託児所として使い、赤ちゃんの面倒を見てくれるというもので、基本誰でも開設することができます。
その中で、政府の検査機関の審査を受け定期的にチェックが入ることになっている施設が認可、それ以外は無認可とされます。
認可施設のうちのいくつかは、政府からの補助金(subsidy=サブシディー)が適用されています。利用者は申請して許可されれば、政府から月額400カナダドル程度の補助が受けられるようになります。
そういった事情から、やはり人気があるのは認可施設のうちでも補助金が受けられる保育施設です。
しかしこういった所は順番待ちの家族がとても多く、1年待ちは序の口。数が多くないので、あふれてしまったら補助金が出ない施設にあずけるよりほかありません。
ただ無認可の施設も、受け入れられる人数や衛生面に関する決まりなど、運営にあたって基本的な部分に関して守るべき水準が定められています。認可されていないから良くないということは決してありません。
共働きの家庭が多いカナダでは、無認可デイホームも貴重な存在です。
保育園のようにスタッフがたくさんいる大型施設は、Day center(デイセンター)といいます。ここはデイホームよりも設備・制度が整っているので割高です。
スクールバスをチャーターしてフィールドトリップに出かけたりするセンターもあるんですよ。
カナダでの託児の費用は日本のそれとは比べ物にならないくらい高額です。サスカチュワン州の場合、子ども一人当たり、1カ月フルタイムであずけると800カナダドル~1,000カナダドルほどが相場。
パートタイムでも500カナダドル~750カナダドル程度かかります。毎月のお給料のほとんどが、保育料へ消えてしまうわけです。
ただ、お金のためだけではなく仕事をすること自体に意義があると考えるママも多いのが、ここカナダです。
産休や育休を最小限にして早めに仕事に戻ることで、次の子どもができるまでの間に600時間以上働ける可能性が高くなります。
また、専業主婦の期間が長いと、子どもが学校に入ってから何か仕事をしたいと思っても、ゼロからのスタートに近い状況になってしまいます。
手元に残る金額よりも、キャリアを積むその過程が重要だと思って仕事に戻るママも多いのです。
小学生の登下校の時間と、勤務時間の関係
子どもが学校に行き始めてからは、登下校に関して頭を悩めることもあります。共働きの両親の場合、小学校が始まる時間には既に出社していなければならない場合がほとんどです。
そういった場合は、大抵の学校で用意しているBefore and after school care(ビフォーアフター・スクールケア)というプログラムを利用する家庭がほとんどです。
これは申し込みをした生徒たちを対象に朝、学校を1時間程度早めに開放したり、放課後は5時6時まで校舎内で遊んだり宿題をしたりできるようにしてくれるというもの。
フルタイムで両親ともに働いている家庭には、とてもありがたいプログラムです。
多少費用はかかりますが毎日3時間程度のものなので、先ほど紹介した乳幼児期のコストに比べると安いものです。学校により違いはありますが、1人当たり200~300カナダドルほどとなっています。
また会社によっては、ビフォーアフター・スクールケアがない学校に通う子どもがいる場合、考慮してくれる場合もあります。
デイケアの多くは小学生も下校後にあずかってくれるのですが、学校までのお迎えは含まれていません。
そんな家庭のために、会社の多くは出退勤時間をずらしてくれたり、子どもを迎えに行ってデイケアに連れていくために午後数10分程度仕事を抜けることを許可してくれたりと、とても協力的です。
日本の会社では、そんな融通をきかせてくれるところはまだまだ少ないですよね。
ちなみにカナダの会社は始業時間が日本より遅いように感じます。職種にもよりますが、基本的に朝は8時半や9時くらいからのところが多く、朝礼などもあまり聞きません。
公立小学校は8時40分から始まりますので、会社と学校の始業時間にはそれほど差がないんです。
ビフォー・スクールケアに参加していない生徒は、始業のベルが鳴る5分前までは校舎に入れないことになっています。
しかし、始業開始の20~30分前には、当番の先生が校庭に2人ほど配置され、少し早めに来なければならなかった生徒を見守ってくれます。
こんないろいろな工夫からも、仕事を持つ親の負担を少しでも減らそうと学校側も尽力しているのが分かります。
急に子どもが熱。そんな時どうする?
こちらでは、子どもが体調を崩してしまったけれど仕事を休めない、という親のために、ベビーシッターが大活躍しています。
というのもここカナダでは、12歳以下の子どもは基本的に親なしで家に残しておけないのが常識です。ちょっと買い物…と小1時間ほど留守番させるだけで、育児放棄とみなされて通報されてしまうこともあります。
ですから、子どもが風邪をひいて学校に行けなくなってしまった場合は、基本親も仕事を休まなければなりません。
どうしても仕事に行かなければならない場合、頼れる親戚がいなければ、オンラインで簡単に検索できるベビーシッターサービスを利用するという人も多くなってきています。
便利は便利ですが、慎重な日本人の私としては少し怖い気がします。しかし、ここでは会ったこともない赤の他人を急に雇うことに抵抗がない人が多く、そんなベビーシッターの需要が多いのが現実です。
学校行事に参加したい。そんな親はどうしているのか
上でも述べた通り、仕事と家庭のバランスが日本とは少し違うのがカナダです。すべてとは言えませんが、多くの会社は家庭を持つ親たちに寛容で、学校や子どもたちとの関わりを推奨すべく協力的な対応をしてくれます。
上の写真は、小学校のクリスマスコンサートの様子です。日本の学芸会と似ていて、子どもたちが歌を歌ったりダンスをしたり器楽演奏があったりと、子どもたちがかわいらしい発表を見せてくれます。
平日の日中1時からと、夜の7時から、2回のステージが設けられます。
初めてこのコンサートに行ったとき、平日の昼の部でもお父さんの姿がたくさんあって驚きました。日本では、仕事に行く親を考慮して運動会や学芸会は週末に行われ、子どもたちはその分後日、振替休日になるのが普通ですよね。
カナダではむしろその逆で、親が仕事に都合をつけて残業や休日出勤などで補ったりするようです。こんな場面でも、カナダでは各家庭のために職場が対応してくれている様子がうかがえます。
また、小学校の低学年はフィールドトリップの際、ボランティアとして児童の父母の中から2-3名の保護者が同伴します。こういったお手伝いをするために会社を半日休む親もいるようです。
自分の子どもが家の外ではどのようにしているのか、直接見ることができる貴重な場面だと楽しみに思う気持ちもあるのでしょうね。
まとめ
家庭と仕事の両立は、どこに住んでいても楽なものではありません。サスカチュワン州では、高い保育料の支払いと生活費の支払いだけで給料のほとんどが消えてしまう家庭も多くあります。
ですが、育児をしながら働きたいという親の気持ちを会社側もサポートしてくれます。いろいろな面で日本にはない優遇措置があるのが、ここカナダです。不安があっても、大丈夫!働くあなたを周りはきっと応援してくれます。
家庭と仕事…うまくバランスを取りながらカナダで働けたらと夢見ているあなたに、この記事が参考になればうれしいです。
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