イタリアのエミリア・ロマーニャ州にあるフェッラーラという町で毎年7月に行われている野外オペラ、リリカ・イン・カステッロ(Lirica in Castello)。今年2017年の演目は、日本でも有名なジャーコモ・プッチーニ作曲の「蝶々夫人(Madama Butterfly)」でした。
私はドイツを拠点にオペラ歌手として活動しています。今回、この公演に唯一の日本人としてスズキ役で出演してきたので、そのオーディションから本番までの流れをリポートしたいと思います。
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イタリアでの野外オペラ公演にキャスティングされた経緯
2017年に行われる予定の公演のために、2016年11月にオーディションがありました。私は2011年に同じ団体のオペラ公演に出演したことがあったので、オーガナイザーとはすでに顔見知り。
だからといって優遇してもらえるようなシチュエーションではありませんでしたが、すでにドイツとフランスで同じ役の経験があるということと、日本が舞台のオペラなので「本物の」日本人であること、この2点が大きなアドバンテージとなり、採用してもらえたのではないかと思います。
野外公演前にもイタリアで2度、同じ舞台を経験
実は、7月の公演前の1月と2月にも、それぞれイタリアの別の町で同じスタッフによる蝶々夫人の舞台を踏む機会を得ていました。
1月の公演
マントヴァのソチャーレ劇場(Teatro Sociale di Mantova)という、とても大きくて美しい歌劇場での公演です。公演前の5日間が稽古期間でした。
短時間で立ち上げなければいけない舞台だったために、その役で舞台経験のある歌手が優先的に選ばれたそうです。
2月の公演
コッパロという小さな町のデ・ミケーリ劇場(Teatro de Micheli)での公演。こちらの劇場はマントヴァと比べてとても小さかったため、歩数や舞台に出るタイミングなどを前日に調整して臨みました。
それ以前の稽古はなかったため、1月に同じ舞台を経験しているとはいえ若干緊張感がありました。
キャストの顔触れ
主役の蝶々さんにはイタリア人のソプラノ歌手、相手役のピンカートンにもイタリア人のテノール歌手が据えられていました。
この2人はオーディションを通してではなく、オーガナイザーから直接依頼されてキャスティングされたとのこと。オーディションで適当な人材が見つからなかったということです。
その他の主な配役
シャープレス役には、高身長で貫禄もある37歳ギリシャ人のバリトンがオーディションを通過して採用されていました。実は彼、シャープレス役は初めてだったということですが、オーディションでは「役デビューをしたことはないけれど一本きちんと勉強しました!」と若干話を盛ってアピールしたそうです。
ゴロー役には中国人の若いテノールが、人生で初めてオペラの舞台を踏むということで、緊張と不安が混じり合った状態で参加していました。
そして、スズキ役に私が唯一の日本人キャストとして選ばれ、その他、脇役には地元のイタリア人がついていました。
イタリアでの野外公演に向けて舞台稽古スタート
※稽古の様子
初日の2日前に現地入り
2017年のリリカ・イン・カステッロは7月12日が初日公演。私たちキャストは前日の午前10時に召集がかかっていました。私はドイツ在住のため10日の夕方にイタリア入りしました。
オーガナイザーが取ってくれたホテルに落ち着き、美しいフェッラーラの町を少し散策した後、部屋に戻って翌日のための復習。何度も歌ったことがある役とはいえ、5カ月ぶりの舞台でミスが出ないとも限りません。音符の一つひとつを入念に読み返します。
稽古は再会のあいさつから
明けて11日、9時到着を目指し、稽古場そして本番の会場ともなるエステンセ城へ向かいました。お城の中庭では舞台の組み立てが進行中で、本番への期待が膨らみます。
演出家にあいさつを済ませ、稽古場となる地下へ降り、発声練習を済ませてみんなの到着を待ちます。30分ほど遅れてキャストと指揮者、ピアノ伴奏者が揃いました。
イタリア人はあいさつを重んじます。2月の公演以来、5カ月ぶりの再会に喜びを全身で表現しながら一人ひとりあいさつを交わし、簡単に近況報告などをします。そんなこんなで、1時間ほど遅れて稽古が始まりました。
細かいポイントを入念に確認
この日の稽古はオーケストラ抜きで行われました。指揮者と歌手の息を合わせること、キュー出しの確認、テンポの調整などのために何度も止まりながら最初から最後まで通します。
途中2時間のお昼休憩ではみんな一緒にレストランで食卓を囲み、私は大好きなポルチーニとトリュフのタリアテッレに舌鼓を打ちました。
イタリアでの野外オペラ公演、本番当日
※エステンセ城の夜の顔
夕方16時にオーケストラが到着し、指揮者と確認の合わせを行います。私たち歌手は18時から稽古に参加し、舞台の広さや指揮者とのコンタクトを確認。本番は日が暮れてから、21時に始まります。
20時にはリハーサルを終えてメイク。冬にもお世話になったメイクさんたちとも久しぶりの再会です。
そして、いよいよ本番。お城の城壁がオレンジ色のライトに照らされ、最高の雰囲気を演出してくれます。猛暑日だったため、舞台上でライトを浴びると滝のように汗をかきますが、集中力はなんとか持続してくれました。
キャスト、オーケストラにいくつかのミスなどありながらも無事、公演終了。観客の拍手は1月、2月よりもとても大きく温かいものでした。
まとめ〜イタリアでの評価がまたこれからの原動力に
イタリアでのオペラ公演は即席仕立てとでも表現したいような企画が多いため、ドイツ在住の私でも1週間ほどの休みを取れば出演が可能です。
後にオーガナイザーが送ってくれた講評記事では私のスズキ役が高く評価されていて、とてもうれしく思いました。
イタリア語で歌うイタリアの音楽である以上、やはりイタリアの観客に受け入れられてこそだと、今回も再認識することができました。今後精進していく上で、温かい後押しになったと思います。
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