世界遺産の数が世界1で、観光で多くの人を惹きつけてやまないイタリアですが、グルメでも常に高い人気を誇っています。
日本にも有能なイタリア料理のシェフがたくさんいて、ピザやパスタ以外の本格派料理や地方独自の料理レシピまでが紹介されています。日本人のイタリアグルメへの興味は尽きることがないようです。
今回はそんな魅力的な食文化を持つイタリアで、ソムリエの資格を取得した経緯と、養成コースの詳しい内容をご紹介したいと思います。
イタリア・ソムリエ協会とは
イタリア・ソムリエ協会(L’Associazione Italiana Sommelier、頭文字をとってAIS アイスと呼ばれています)は1965年にミラノに発足した協会です。現在ではイタリア国内に170の支部を擁しています。
ソムリエ養成コースの運営、ワイン関連の本の出版、ベストソムリエコンクールの主催などを通じて、イタリアワイン文化の価値向上を目指す協会です。
ソムリエ資格、イタリアと日本の違い
日本のソムリエ資格
日本のソムリエ資格は、実は国家資格・公的資格ではありません。「ソムリエ認定試験を行う団体」として、一定の知識や経験がある人のサービスの質を認定するJSA(日本ソムリエ協会)とANSA(日本ソムリエ連盟)の2つの団体があります。
日本ソムリエ協会の「ソムリエ」資格試験を受けるためには、ワイン関連職務経験が3年以上必要となっています。ワインエキスパートという、試験レベルはソムリエと同等でも経験を問わない愛好家向けの資格もあります。
イタリアのソムリエ資格
イタリアでは1973年から、イタリアソムリエ協会認定ソムリエはイタリア政府が発行する国家資格になっています。
受講資格は年齢・学歴・職務経験などが問われることはなく、養成コースを受講しその後の試験に合格することにより正式な「ソムリエ」としての認定を受けることができます。
ただ授業はもちろんイタリア語で行われ、イタリア人にとっても難解な専門用語も多いため、イタリア語の知識は必須です。
ソムリエ養成コース・ローマ
ソムリエ養成コースはイタリア各地で行われていますが、私が受講したのはイタリアソムリエ協会のローマ支部が運営するコースです。ローマ支部で行われている養成コースについてご紹介します。
受講レベルと期間
受講は3つのレベルに分かれています。各レベルは週1回の全15回。レベルごとの期間は約5ヶ月間です。途中バカンスをはさむので、受講期間はトータルで1年半くらいです。
1回の授業は2時間半で、16:00〜18:30か20:00〜22:30のどちらかの時間を選択できるようになっていました。受講開始時期は選択する時間や都市によっても異なるのですが、3月開始か10月開始が多い様です。
私の場合は、3月から6月までレベル1、10月から2月までをレベル2、そして3月から6月までレベル3、そしてその後試験というスケジュールでした。場所はローマのヒルトンホテルの大広間でした。
費用
費用は、2005年当時で2300ユーロでした(2019年1月現在 1ユーロ=124円で計算すると285,200円)。支部によって違いはあるようですが、2000ユーロ(248,000円)前後かかることが多いようです。
3つのレベルが開始するごとに1/3づつ支払いをするようになっているので、最初から全額支払う必要はありませんでした。
ソムリエ養成コースの内容
それではソムリエ養成コースで実際どんなことを学んでいくか、説明していきます。
レベル1
まずソムリエのサービスの基礎、醸造学や栽培学などワインの成り立ち、ワインテイスティングを学びます。
ワインボトルの開け方やワインの注ぎ方、ラベルの読み方やお客様への見せ方、ワイングラスの選び方などソムリエとしてのサービスを学びます。
それから視覚・嗅覚・味覚でのテイスティングの仕方をひとつひとつ習得します。またデザートワイン、ビール、発泡酒、蒸留酒などのテイスティングの仕方も学びます。
実際にローマ郊外のワインセラーへ見学に行き、ワインの醸造について実践的に学びます。
レベル2
イタリアの地域ごとのワインと世界のワインをテイスティングしながら、その味の特徴や栽培方法、土壌の特徴、ぶどうの種類、等級など深く学んでいきます。
レベル3
ワインと食べ物の組み合わせについて学びます。「チーズとサラミ」、「野菜とトリュフ」、「ジェラートと果実」など毎回食材が決められていて、様々なワインとともに食べ物との相性の点数をつけながら円グラフを作成していきます。
具体的にグラフを作成し先生と点数をすり合わせることによって、「食べ物とワインの相性」が感覚だけではなく数値として理解できるようになっていきます。
テスト・ワインリスト作成
自分で事前にワインリストを作成して提出してから、当日テストを受けます。テストはワインボトルを開けグラスに注ぎ、お客様に提供するというサービスを実際に試験監督の先生の前で実践して見せます。
私はあまりサービスの経験がなく緊張しましたが、わりとみんなぎこちない手つきをしていたので、手順とやり方を間違わなければそんなにテキパキできなくても大丈夫そうでした。
あとは試験監督と1対1で、ワインに関するいくつかの質問に答えていきます。私が受けた質問の一例をあげると、アマローネというワインの特徴と製造方法について説明せよ、というものがありました。
アマローネは北イタリアのヴェネト州で造られるワインで、完熟したぶどうをさらに陰干ししてエキスを凝縮させ糖度をあげる製法で造られる、甘みが強くアルコール度が高いワインです。
「完熟したぶどうをさらに陰干しする」という製法が特徴なので、その部分を強調してなんとか説明できました。
ソムリエ資格授与
そうしてこの3つのレベルを全て終了し、試験を通過した受講者のみがソムリエとしての称号を授与されます。私もなんとか合格することができました!
ディナー
後日、正装してソムリエコースを受けた人たちでディナーを食べます。そこでもコース料理1皿1皿に合うワインをテーブルごとに話し合い、順番でサービスしあったりして今まで学んだことを先生と生徒と一体になって語り合いました。
イタリアで取得する「ソムリエ資格」の特徴
「イタリアワイン」を重視する人向け
日本でワインを勉強する、というとボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュなどフランスワインが中心となることが多いのではないでしょうか。
イタリアソムリエ協会のソムリエ養成コースでは、イタリアワインが中心で、フランスワインは「世界のワイン」の中のひとつとして数時間しか学びません。まさに「イタリアワインのソムリエ」としての資格です。
イタリア食文化に対する理解を深めたい人にも
ソムリエとしての資格ですが、私のようにソムリエになりたい、というよりイタリアの食に対しての理解を深めたいという方にも最適の勉強の機会になると思います。
ソムリエのサービスやワインティスティングについても学びますが、イタリアの地域ごとのワインを学びながらイタリアの地理や土壌の特徴も学べますし、ワインと食べ物の組み合わせではイタリア食材や郷土料理についても学べます。
何よりワインはイタリアの食文化の根底をなすものです。イタリアワインを通してイタリア食文化を学びたい人には最適な資格です。
イタリアでソムリエ資格を取得したい人へ
私はこのコースを始める前に他の機関で3ヶ月のワインコースをイタリアで受けてから臨みました。
もしこのコースに挑戦してみたいという方は、イタリア語で短期のワインコースを受けてみて、イタリア語でのテイスティングの仕方を簡単に学んでおくと最初の授業が楽になります。
またそれより必要だと感じたのは、日本語で一度ぶどうの栽培方法や醸造などを学んでみるということです。
私はその知識が日本語でもなかったため、授業中イタリア語の意味がわからず辞書を引いたもののその日本語の意味もわからない、ということがありました。
日本語での知識が多少でもあれば理解しやすく、言葉の壁はずいぶんと低くなるはずです。
参考サイト
- イタリアソムリエ協会 https://www.aisitalia.it/
まとめ
イタリアの国家資格であるソムリエについて、取得の方法・コースの内容についてご紹介しました。
ソムリエを目指しているという方以外にも、イタリアの食に興味がある方、イタリアワインについての知識を深めたい方にとって、とても興味深いコースなのではないでしょうか。
資格取得に要する期間は長く、ワインの勉強だけではなく同時にイタリア語の勉強もしなくてはならないので日本人にとっては大変ですが、イタリアにおいても重要な資格のうちのひとつなので、必ず有益な経験になるはずです。
海外求人
あなたの挑戦を待っている!あこがれの海外企業へ就職しよう(海外求人)
イタリアで働くには?日本人向けの求人とイタリアでの就職・転職について
【イタリア求人】未経験からでもイタリアを狙えるサイト・転職エージェント12選
あわせて読みたい