私は、台湾人に嫁いだ日本人の中でも珍しく、主人の家族と同居しています。そのため結婚して以来、台湾ならではの風習を自宅でよく見かけることがあります。
ちょうど最近台湾では旧正月を迎え、信仰深い義母と「拝拝(バイ・バイ)」という、神様やご先祖様を拝む儀式を何度も行いました。
各家庭によって、儀式のやり方や内容は少し異なりますが、今回は我が家の場合を例にあげて、台湾の旧正月を迎える際に行う風習の1つ、「拝拝」の儀式について皆さんにご紹介したいと思います。
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旧暦(農暦 / ノン・リー)はどのようにして分かるのか
上の写真は、台湾で使用されているカレンダーで、日本と同じく西暦が書かれています。台湾では、一般の生活上では西暦を使用しますが、昔から伝わる風習に関しては、旧暦を使用します。また、誕生日を旧暦で祝う人もいます。
小さくて見づらいですが、カレンダーに大きく書かれた西暦の日付の下に、文字や漢数字が書かれています。例えば、2月15日の15の下には「除夕」の文字があるので、この日は旧暦の大晦日なのです。
もしくは月の形を見て、旧暦を知る方法もあります。台湾では、旧暦の1日から14日にかけては月の右側が光っているように見え、中旬にかけてその面積がだんだんと大きくなります。そして15、16日は満月に。
17日から29、30日にかけては月の左側が光っているのが見え、面積はだんだんと小さくなります。この方法だと正確な旧暦の日にちは分からなくても、その日が1ヶ月のうちのいつ頃なのかが分かります。
「拝拝」をする対象とその目的
我が家では、旧正月を迎える際に「拝拝」をする対象が4つあります。
- ご先祖様(祖先 / ズゥ・シェン)
- 神様(神明 / セン・ミン)
- 土地の神様(地基主 / ディ・ジー・ズゥ)
- 1番偉い神様(玉皇大帝 / ユイ・ホワァン・ダー・ディ)
「拝拝」の目的は、まず、過ぎ行こうとしている1年間が、無事に過ごせたのを感謝すること。そして、これから迎える新たな1年は、家族みんなが健康で平和に過ごせるように祈ることです。この点は日本と同じですね。
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大晦日(除夕 / チュウ・シー)の前日
大晦日の前日の23時から、日付が替わる午前1時の間に、神様の中で1番偉い玉皇大帝に「拝拝」をします。今年は上の写真にあるように、これらのお供え物を準備しました。
お供えした食べ物
まずは食べ物を上から順に、左から右へと見ていきましょう。
- お米(※お線香をさすためのもの)
- お湯(※お酒を用意するのが一般的。我が家はお酒を飲まないので、お湯で代用)
- 果物
- 甘いお菓子
- 素麵のような麺 (麺線 / メェン・シェン)
- 蒸しパン (發糕 / ファー・ガオ)
- 甘いお餅(年糕 / ネェン・ガオ)
りんごは「平和」、麺線は「長生き」というように、それぞれ祈りを象徴する食べ物が並びます。今年は旧正月前に、私の両親が台湾に遊びに来てくれたため、日本のお菓子がちょうどありました。せっかくなので、台湾の1番偉い神様にお供えです。
ちなみに甘いお菓子は、「甘い物を食べて良い言葉を発するように」、という祈りを象徴しています。
※「拝拝」で使用する、お酒やお湯を入れる敬杯(ジン・ベイ)
食べ物以外のお供え物
台湾で「拝拝」の儀式をする時は、食べ物の他にも、お線香や、お供え用のお金(金紙 / ジン・ズー)も準備します。
我が家で使用するお線香。普通のお箸と同じ位の長さがあります。
お供え用のお金は、「拝拝」をする対象によって使い分けます。上の写真は、この夜に玉皇大帝にお供えした5種類のお金。
- 土地公金(トゥ・ディ・グゥオン・ジン / 左上)
- 補運錢(ブゥ・ユン・チェン / 左中央)
- 壽金 (ソウ・ジン / 左下)
- 大壽金 (ダー・ソウ・ジン / 右から2番目)
- 天公金 (ティエン・グォン・ジン / 右)
「拝拝」の儀式を開始
我が家では、大きさ65×130×90cmの、移動式テーブルにお供え物を置きます。このテーブルは、いつも神棚の側に置いてあるのですが、今回のように天に向かって「拝拝」をする時は、ベランダ近くまでテーブルを移動させます。
実はテーブルの下には物がたくさん入っていて重いので、移動させるのも一苦労!
この日は義母が23時30分頃から「拝拝」をする準備を始めました。お線香以外のお供え物をテーブルに並べたら、準備完了です。
私は「拝拝」をする時は手を合わせて目を閉じますが、こっそり義母を見ると、お線香を持った手を額の高さまで上げ、じっと空を見つめていました。
台湾で「拝拝」をする時は、お線香をさす香炉1箇所につき3本のお線香が必要です。
香炉代わりのお米が入ったカップにお線香をさし終えると、すでに日付が替わっていました。「眠いなぁ~」と密かに思いつつ、お線香が3分の1ほどの長さになるまで待つこと約10分。
その後、お供え用のお金を持ち上げ天に向かって一礼したら、外でそのお金を燃やします。燃やす時は、金爐(ジン・ルゥー)という短い煙突がついている、金属でできたごみ箱のようなものを使用します。これが「拝拝」の儀式の流れです。
環境のことを考える
台湾では「拝拝」の時に、お線香とお供え用のお金を使用する風習があるので、空気汚染が心配されています。
そのため、有名な観光地のお寺では、1人が使用できるお線香は1本と制限し、以前は何個も置いてあった香炉を1つに減らす、というように対策がなされています。
我が家でも、環境に優しいタイプのお線香や、お供え用のお金を使うようにしています。
従来品(右)と比べると、環境に優しいタイプ(左)のお線香は、少し短く、細めに出来ています。従来品より燃える時間が早く、煙の量が少ないのが特徴です。
上の写真は、1束分のお供え用のお金。従来品(右)と、環境に優しいタイプ(左)の厚みの差が一目で分かりますよね?
環境に優しいタイプは、ペラペラの薄い紙でできています。従来品より燃える時間が早く、燃えている最中は灰が飛び散りにくいという特徴があります。
値段の差は約3.6倍! この量で、従来品は1.4TWD(約5.32円)、環境に優しいものは5TWD(約19円)です。
お線香はともかくとして、環境のために「お金燃やすの止めたら?」と、以前義母に聞いたことがあります。でも信仰深い故に、昔からの習慣を変えるのは難しいとのことでした。
大晦日
この日は大晦日。15時から17時の間に、ご先祖様と、その土地の神様に「拝拝」をします。前日の夜よりも、更にたくさんの食べ物を準備する必要があり、我が家では毎年10種類以上がテーブルに並びます。
充分な量のお供え物を捧げるという意味から、お皿やお椀に食べ物をいっぱい乗せることが必須です。もし食べ物が少ししか乗せられない場合は、小さなお皿やお椀を使うこともできると義母から教えてもらいました。
お供え物
- スープ
- 魚(※頭をご先祖様に向ける)
- 鶏肉
- 豚肉
- ソーセージ
- イカ
- ごはん(※しゃもじを置く)
- からすみ
- ゆで野菜
- 果物
- 大根もち
- 甘いお餅
- 蒸しパン
- お茶椀 12個
- お箸 12膳
- お供え用のお金
- お線香
お供え物が乗っているこのテーブルの上の壁には、神様とご先祖様を象徴する絵が飾られています。
右側の絵は神様と守り神を、左側の絵はご先祖様を表しています。絵の下にある棚にはそれぞれ、神様用の香炉、ご先祖様用の香炉と位牌が置いてあります。
ご先祖様の次は、土地の神様に「拝拝」
土地の神様に「拝拝」をするために、台所へ移動します。勝手口の外に置いた小さなテーブルに、お供え物を並べます。
写真で言うと、お供え用のお金がある方に立ち、勝手口のドアを開けた状態で、外から家の中に向かって「拝拝」をします。
お供え用のお金を燃やすまで、ドアは開けたままなのですが、台湾では冬でも蚊が飛んでいるので、家の中に蚊が侵入してしまうのが困ります。
お供え用のお金を燃やした後は、お供えした食べ物を年越し料理のお鍋に変身させて、家族で頂きました。
その頃ご近所では爆竹が鳴り始め、我が家のベランダからも、その様子が見えました。
食後にも「拝拝」の儀式はまだまだ続く!
ここから後半戦(?)に突入です。21時頃。ご先祖様と神様に「拝拝」をします。
お供え物
- 飴(※香炉の側に置く)
- お供え用のお金
- お線香
23時頃。更にもう1度、神様だけに「拝拝」。
お供え物
- 果物
- お供え用のお金
- お線香
大晦日のこの日、以上4回の「拝拝」を終えた頃には年が明け、外は爆竹や花火の音で相当にぎやかに。近所の人が打ち上げているロケット花火が「うちのベランダに入らない!?」と、かなり冷や冷やしながらの年越しとなりました。
翌日の朝、外に出ると道路には使用済みの爆竹が散乱……。
元旦(春節 / チュン・ジエ)
元旦の朝は6時から8時の間に、ご先祖様に「拝拝」をします。運を逃さないように、元旦の朝は包丁を使ってはいけないという風習があるので、写真のように、大晦日の夜のうちに食材を準備しておきます。
お供え物(左から右へ)
- セロリ
- 大根
- 長年菜 (ツァン・ニェン・ツァイ )
- 大根もち
- 固めの豆腐 (豆干 / ドウ・ガン )
- ピーナッツ
- ほうれん草
- 甘いお餅
- 蒸しパン
- ご飯
- お茶椀 12個
- お箸 12膳
- お供え用のお金
- お線香
ご先祖様の位牌は写真の左上側にあるので、お供え物もできるだけ左側に寄せています。お供え用のお金を燃やして「拝拝」の儀式が終わると、これらのベジタリアンな、台湾の伝統的おせち料理を家族みんなで頂きます。
ほうれん草は「何事も上手く行きますように」など、やはりそれぞれのお供え物に意味があるので、縁起を担いで全てのものを、少なくとも1口は食べるようにします。
1月2日(初二 / チュー・アー)
この日の11時から12時の間に、ご先祖様に「拝拝」。テーブルに並んだお供え物は、大晦日とほぼ同じです。
これで、台湾で旧正月を迎える際の風習の1つである、「拝拝」の儀式が終わりました。ようやく義母と2人で、ほっと一息つける、と言ったところです。
まとめ
台湾で旧正月を迎える際の風習として、我が家では、旧暦の大晦日の前日から1月2日までの間に、計7回の「拝拝」の儀式が行われます。
1年を通して、我が家で「拝拝」をするのは旧正月以外にも10回あり、いずれは義母に代わって、私が儀式を取り仕切るようになります。
私はまだ細かい内容はうろ覚え状態なので、台湾の神様やご先祖様に失礼のないよう、今のうちに義母からしっかり教わりたいと思います。※1TWD=約3.8円(2018年)
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