海外で暮らす上で避けては通れないものが、その国に入国・滞在するための許可証、VISA(ビザ)です。私は今までアジアの数カ国に仕事やボランティアなどで長期の滞在をしてきたので、何年もの間、ビザがあって初めて暮らしていける生活でした。
現在はインドネシア現地のローカル企業に所属して働いており、インドネシアの就労許可を取得しています。それまでにもインドネシアでいくつかのビザを取得した経験があります。
ここでは、代表的なインドネシアの労働許可取得までのプロセスをご紹介していこうと思います。
1USD(アメリカ・ドル)=約113円
1IDR(インドネシア・ルピア)=約0.0086円
1SGD(シンガポール・ドル)=約82円
※この記事は筆者の体験に基づいています。最新の状況とは違っている可能性があるためご注意ください。
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インドネシアの就労ビザとKITAS(キタス)の関係
「インドネシア 労働許可 ビザ」などでインターネット検索すると、KITAS(キタス)という聞き慣れない言葉が度々トップに現れるのですが、このKITASとは何なのでしょうか。
これからインドネシアで仕事を探そうと考えているなら、「キタス」と「労働許可」の違いをきちんと知っておく必要があると思うので、最初に説明しますね。
キタスとは居住するための許可
KITASとはインドネシア語で Kartu Izin Tinggal Terbatas(暫時居住許可証)、その頭文字を取ってKITASと呼ばれています。
インドネシアで就労する場合には、まず就労ビザを取得した状態でインドネシアに入国し、その後インドネシア国内で労働許可と1年間の居住許可キタスを申請・取得して初めて仕事ができることになります。
日本で働く外国人を例に取れば、労働許可と住民票がそろって初めて就労可能になる、といったところでしょうか。
インドネシアに長く住んでいる方でも労働許可証とキタスを混同しがちなのですが、細かいことを言うと、入国するためのビザ、労働許可、キタスはそれぞれ別のものになるわけです。
ビザの種類により異なるキタス
キタスには種類があり、労働許可のないキタスもあります。
インドネシアの方と結婚し、その家族としてインドネシアに住むための「ファミリービザ」や、55歳以上で老後をインドネシアで過ごすために取得できる「リタイアメントビザ」に対しては1年間有効の居住許可キタスが発行されますが、インドネシアで収入を得る労働は禁止されています。
キタスには6ヶ月間、または1年間の有効期間があるのですが、出国する必要なくインドネシア国内のイミグレーションで1年ごとに更新できます。
インドネシアの就労ビザ申請にあたり用意するもの
インドネシアの就労ビザを取得するための手続きは、一般的には就職することになる会社がビザ手続きの代理店を通して行います。私が就労ビザを申請したとき(2012年)に自分で用意したのは以下のものでした。
- 英文の履歴書
- 最終学歴の英文の卒業証明書
- 日本での身元を証明する人物(親など)の住所
- 身分証明書のコピー
- 直筆署名が入った英文の身元証明書
- 有効期限まで20ヶ月以上残存のパスポートのコピー
英文の履歴書はネットのテンプレートを頼りに作成しましたが、英文の卒業証明を発行してもらうのにとても時間がかかった記憶があります。
というのも、私はインドネシアから親を介してこの手続きを行ったため、身分証明書や署名などをいちいち国際郵便でやり取りしなければいけなかったからです。そのため、書類はできるだけ日本で用意することをおすすめします。
さらに言えば、有効期間20ヶ月以上残存のパスポートなどの条件も、もしも1年以上期間が残っていて、まだ更新もできない場合などはどうすればいいのか?と謎も残りました。
厳しくなる就労ビザ取得条件
さて、2016年までは上記のものだけでよかったのですが、インドネシアではビザ取得の条件やルールがその時々で変わります。
2018年現在では、インドネシア人の仕事を守るという政策を掲げるジョコ・ウィ・ドド政権の意向で、以前に比べて就労ビザ取得がとても難しくなっています。
情勢の話をすれば、インドネシアでは国の成長に伴って大学まで進学する若者が大幅に増えたのですが、その教育のある若者の活躍の場となるホワイトカラーの職場が少ないのです。
「この状況はインドネシアで仕事をする外国人のせいだ!」と唱えて若者たちの支持を集めた現大統領が外国人の就労条件を引き上げたのですが、具体的には以下のような項目が追加されました。
- 大学卒業以上の学歴
- インドネシアで就労する業種に関する5年以上の経験
- インドネシアで就労する業種に関する特別な技術を証明する資格
- 健康保険に加入している証明書
- 1,500USD(約17万円)以上の銀行口座の残高明細
さらに言えば、申請を行う会社自体がクリアしなければいけない条件のハードルもかなり上がった上、外国人が就労できる職種の制限も厳しくなってきています。
ともかく外国人を雇用する会社は、必要な書類や証明とビザ取得にかかる費用約20,000,000IDRプラス税金1,200USD(合計で約30万円)を、ビザエージェントと呼ばれる代理店を通して関係各所に提出し、TELEX(テレックス)と言われる就労ビザの発行許可が出るのを待つことになります。
すべての書類をそろえて提出しても、このテレックスが出るまでには2ヶ月以上かかります。
インドネシアの就労ビザ取得のポイント
エージェント選び
インドネシアでは就労ビザをスムーズに取得するためには、エージェントの存在が欠かせません。
就労ビザ申請のために雇用先の会社が支払うビザ費用30万円のうち10万円ほどはこのエージェントの手数料ですが、エージェントはビザを発給・更新するイミグレーションに必ずコネクションを持っていて、そのコネクション次第で就労ビザを取得できるかどうかがほとんど決まってしまい、待たされる時間も違います。
このあたりの事情が、コネと賄賂の国インドネシアです。
たとえば、申請者や申請する会社が就労ビザ取得に必要な条件を満たしていなかったとしても、強いエージェントにそれなりの費用を支払えば就労ビザを手に入れることも可能なのです。
ただ、会社側は以前から付き合いのあるエージェントに頼むので、就労者は自分ではエージェントを選べないのがもどかしいところです。
インドネシアの就労ビザ発行はシンガポールで
就労ビザの発行許可、TELEX(テレックス)が下りたら、次はそのテレックスとパスポートをインドネシア大使館に提出して就労ビザを発行してもらいます。これはシンガポールのインドネシア大使館にて申請することがほとんどで、私もシンガポールまで行きました。
というのも、シンガポールにはインドネシアのビザ申請の代行を専門に扱うエージェントがあり、ここを通して申請すると抜群にスムーズにビザ発行までたどり着けるという理由があるのです。
短時間で手に入れてシンガポール観光もあり
このエージェントを通じての就労ビザ受け取りに180SGD(約1万5千円)必要ですが、通常3日ほどかかるところ、朝から夕方までの8時間ほどで取得可能です。
なお、ここでビザを受け取った後は90日以内にインドネシアに入国しないといけません。
インドネシア在住者は、就労ビザに限らずビザの手続きに1泊2日のシンガポール旅行に行くことがよくあります。シンガポールの美味しいレストランや楽しみ方などに詳しい方が多いのですが、それにはこういう理由があるのですね。
インドネシアの就労ビザ取得後の流れと注意点
ビザを持ってインドネシアに再入国する際には、一般旅行者の入国レーンではなく、ビザ所持者の特別レーンに並び入国審査を受ける必要があります。
入国したらエージェントの指示に従って労働移住省で外国人就労許可(IMTA)の申請をし、入国から7日以内に今度はイミグレーションに行って滞在許可証KITAS(キタス)の申請を行います。
書類がそろうまでは本来就労不可
全てがそろうまでに2週間以上かかるのですが、これからインドネシアで働こうと思う方に注意していただきたいのが、これらの許可が全て下りる前に仕事を始めなければいけない雰囲気の会社がほとんどだということです。
実際には、書類が全てそろっていなければ何かあったときに不法就労になってしまうので、「いつから仕事を始めるべきなのか」という点については事前に会社ときちんと相談しておくことをおすすめします。
インドネシアでKITAS(キタス)を持っているとこんなに便利
ここまでの長い長いプロセスを経てやっとインドネシアでの経済活動に参加できるようになるのですが、滞在許可キタスを持っていると、生活においても便利になる部分がたくさんあります。
キタスがあればインドネシアの銀行口座が開設でき、利率6%ほどのインドネシアの定期預金なども自分名義で持てるようになります。また、病院などではインドネシア人と同じ金額で治療を受けることが可能。レストランや動物園、プールなどでも住民料金割引を受けられます。
つまり、外国人ながらインドネシア人と同じような扱いを受けられるようになるわけなのです。
さらに、通常のビザだとまだ期間が残っていても一度出国すると無効になってしまうのに対し、キタスを持っていると有効期間内なら何回でも出入国できることもうれしい限りです。
まとめ~外国に滞在するなら常に最新情報に注意
様々な国に滞在した経験のある私にとって、費用や条件なども含めたビザの取得のしやすさというのはその国の暮らしやすさに密接に関わることであり、その国が外国人をどういうスタンスで受け入れているのかを表す指標のようなものだと感じています。
あいまいな部分も残ってはいますが、外国人がインドネシアで働くことは年々難しくなってきている状況です。
ビザのルールはこれからも政治的な影響ですぐに風向きが変わるものなので、海外で働く日本人はいつでもアンテナを広げて最新の情報を集めていかなければいけませんね。
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