ドイツに長年住んでいると、だんだん生活のパターンがドイツ人に似てくるのを感じます。平日は大学に行くなり仕事に行くなりすることがあるので、ドイツでも日本でも生活にそれほど大きな違いはありませんが、休日の過ごし方には違いを感じます。
今回は私がドイツに来た2000年から2018年現在まで、ドイツに来て戸惑ったこと、そして時間とともに適応していったドイツでの休日の過ごし方をご紹介します。
ドイツの休日「閉店法」
ドイツには「閉店法」という法律があります。平日や週末・祝日そして季節によって、お店の営業時間の上限が国によってあらかじめ決められているのです。 基本的に飲食店以外は、平日は20時以降、そして日曜・祝日は一日中お店を開けてはいけないことになっています。
理由として、キリスト教徒は日曜日は休息日であること、そして従業員の労働条件を守るためということが挙げられていますが、ドイツに来た当初は、そんなことは知るはずもありません。
当時の私の感覚では「日曜日はお店のかき入れ時、そこで休んでどうする」という意識でした。そのためお店が開いてないことを完全に忘れて日曜日にスーパーに買い物に出かけ、何も買えずにとぼとぼ家に帰ってきたことも何度かありました。
一度は家に食材が全くなく、当時間借りしていた大家さんに食材を分けてもらったのは、今となってはよい思い出です。
今よりも厳しかった2000年当時のドイツの「閉店法」
特に、2000年当時の「閉店法」は今よりももっと規則が厳しいものでした。お店は日曜日が休みな上に、土曜日も14時までしか開いていませんでした。
当時私は、平日の昼間は毎日語学学校に通い、その後日本食レストランで夜遅くまでアルバイトをしていたため、スーパーに買い物に行く時間があまり取れませんでした。
週末の金曜日は飲みに行く事もありますし、平日の疲れもあり土曜日はゆっくり寝ていたいところですが、スーパーは14時までしか開いていません。
前の晩遅くまで飲んでいたとしても、頑張って午前中に起きてスーパーに1週間分の食材を買いに行くしかないのです。
2000年当時の休日の過ごし方
このようなスーパーの営業時間の影響で、私の週末の過ごし方は大体決まっていました。土曜日は必ず14時までにスーパーに行き、1週間分の食材や日用品を買い込みます。
午後は、ちょっと友人とカフェに出かけるか、バイトに行くか、予定がない時は家に帰ってドイツ語の勉強をします。
たまには、ハイデルベルク近郊に日帰りで出かけることもあります。ハイデルベルクからわずか11km離れた場所には ローマ時代の壁が現存していて、中世の街並みもそのまま残っているラーデンブルクという町があり、そこには何度も遊びに行きました。
その他ワイン祭りの時期には世界遺産であるシュパイヤー大聖堂のワイン祭りを楽しんだり、春になると桜庭園とドイツの名物白アスパラの生産地として有名なシュヴェッチンゲンで、桜のお花見と白アスパラの両方を堪能したり、クリスマスマーケットの時期にはハイデルベルクから一番近いフランスのヴィッセンブルクで、ドイツとは違うフランスのクリスマスマーケットを楽しみました。
このように他の都市に遊びに行っても、基本的には日曜日はレストラン以外の大抵のお店は閉まっています。
私にとっては、現地ならではのお土産屋さんを見るのも楽しみの一つなので、遊びに行くのはできる限り土曜日にしていました(それでも14時にはお店が閉まってしまうのですが)。
日曜日はどこに行ってもお店が閉まっている
2000年当時の私はまだ語学学校生です。ドイツにいられるのも1年まででした。それ以上ドイツに滞在したければ大学に入るなど、どうしてもドイツ語が必要になってきます。
逆に1年間で日本に帰国するつもりであれば、限られたドイツ生活を満喫するために毎日遊び歩いていても構わないわけです。一生懸命勉強したからといってゼロから始めたドイツ語が1年間で大学合格レベルまでいく保証もありません。
そのためどういう日曜日を過ごそうか、少し迷った覚えはあります。
でも日本に帰国したあと楽しかっただけで何も身に着けられなかった1年を過ごすよりは、せっかくドイツにいるのだから少しでもドイツ語を勉強しようと思い、日曜日はできるだけ家にいてドイツ語の勉強をしていた気がします。
平日はアルバイトをしていたため、毎日語学学校に通うのが精いっぱいで、宿題や復習を深く掘り下げてやることができなかったのです。
2006年「閉店法」の緩和
ドイツに来て数年が経ち、ドイツの生活にも慣れてきましたが、当時疑問に思っていたことがあります。
「私は今は大学生だしまだなんとかなるけど、社会人はこの閉店法の下でどうやって日々の買い物をしているのだろう」平日の夜は20時まで、土曜日は14時まで、日曜・祝日はお店が開いていないのです。
いくらドイツでは基本的に残業はないといっても、子どものピックアップやその他、20時に買い物を終わらせるにはぎりぎりに行くわけにもいかないし、社会人は平日買い物するのは大変だろうなーと思っていたのです。
土曜日は14時までお店が開いているといっても、何店舗か見て回りたい時など、開店同時から14時までの間にできるだけ急がないと全てのお店を回れません。そして、土曜日はどのお店もとても混んでいるのです。
私にとっても、ドイツ人にとっても「土曜日の14時まで」は買い物の時間になります。
ドイツでのサッカーワールドカップの開催
これにはドイツ人も不自由を感じていたのか、お客だけではなく店舗側からも緩和希望の声があり、2006年、ドイツでのサッカーのワールドカップ開催をきっかけに閉店法は緩和されます。
今まで国が統一して時間を決めていたものが、州の権限で各自自由に時間を決めていいことになったのです。
その結果、ドイツの多くの店で、土曜日も18時までお店が開くようになりました。そして、土曜日だけでなく平日の営業時間も1~2時間延びました。
この変更は非常にありがたかったです。特に土曜日の営業時間延長は大きかったです。14時までと18時までは全然違います。これをきっかけに、金曜日の夜や土曜日の過ごし方がかなり自由になりました。
2010年ドイツで社会人になってからの休日の過ごし方
2010年に学生生活も終わり社会人になりました。場所も移り、学生街のハイデルベルクからドイツ有数の大都市であるハンブルクへの引っ越しです。会社が郊外だったこともあり、平日はほとんどスーパー以外での買い物をすることができません。
このころは、土曜日のお店の営業時間も更に延長され、20時や21時、場所によっては22時まで営業するところも出てきました。おかげで唯一の買い物のチャンスである土曜日に、それほど不自由しないで買い物ができるようになりました。
普段休日は買い物以外に何をして過ごしているのか
先ほどから買い物の話しか出て来ませんが、土曜日は買い物以外に何をしているのか、そして日曜日は一体何をしているのかというと、これが驚くほど何もしていません。ドイツには娯楽が少ないのです。
日本と違って、ゲームセンターやテーマパークがあるわけでもありませんし、パチンコ店や雀荘、漫画喫茶や猫カフェなどもありません。レストランやバーも夜中になれば閉まってしまい、24時間過ごせるところがないのです。
しかも、営業時間が伸びたといってもそれは土曜日のことで、日曜日に飲食店以外が閉まっていることには変わりありませんし、飲食店でさえ半数くらいは日曜日に店を閉めています。日曜日にできるのは散歩とウインドウショッピングくらいです。
お店が閉まっているのでもちろん何も買えません。出かけるのは天気がよい時は誰かとカフェでケーキとコーヒーを飲んでおしゃべりしたり、たまに友人宅のホームパーティに呼んでいただいた時くらいです。
たまに休日に行く場所
通常の休日はこのように地味なものですが、ドイツのいいところは催し物がたくさんあることです。特にハンブルクは大きい町なので、毎週のように何かしらの催し物があります。
ですから私もたまにはオーケストラのコンサートを聴きに行ったり、ミュージカルに行ったりします。サッカーのチームも2つありますし、テニスの大会もハンブルクとハレという、日帰りできる範囲で2回も開かれているので毎年のように観戦しています。
ベルリンやその他のドイツの都市、さらに近隣のチェコやポーランドやデーンマークなど、わざわざ長期休暇を取らなくても 週末に時間的にも金銭的にも気軽に出かけられるので、1年に数回は出かけます。
美術館や博物館は日曜日も開いているので、別の都市から友人が訪ねに来てくれた時など一緒に行ったりすることもあります。
ドイツ人の休日の過ごし方
そして、気が付くといつの間にか私の休日の過ごし方はドイツ人と同じスタイルになっていました。つまり普段は質素にカフェかホームパーティに行くくらい。
その代わり、旅行やクラッシックコンサートなどのたまの催し物に少しいい服を着て出かけるというパターンです。
娯楽がないのも、日曜日にお店が閉まっているのもほとんど気にならなくなりました。かえって散財しなくて済むと思うくらいで、これは全くドイツ人の思考と同じです。
日本人として違うのは、美味しいものが食べたいという欲求と、日本の本を読む習慣です。日本の本に関しては、ありがたいことに電子本の発達のおかげで問題はほぼ解消されました。
食事に関しても、自分の口に合う食事を発見する力がだんだん発達してきて、レストランに行ってもめったにチョイスの失敗がなくなりました。
家で作るのは自分で美味しいと思うものを作ればいいし、料理好きの友人がたまに美味しい日本食をご馳走してくれるのも楽しみのひとつです。
まとめ
ドイツでの休日は時間がゆっくり流れます。
日本のようにたくさん刺激的に遊んで「 楽しかったけど疲れた 」「欲しいものがありすぎて嬉しくなって散財しちゃった」という楽しみ方ではなく、どちらかというと体を休息させたり、芸術や文化に触れて心を豊かにするために使います。
今となっては私もどちらの過ごし方にも違和感を感じません。日本に帰国時の刺激がある休日も楽しいですし、普段のドイツののんびり休日もなかなか悪くないなと思うのです。
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