近年、目覚ましい発展を遂げるシンガポールは、東京23区と同じくらいの面積しかない小さな国です。人口は約564万人で、このうちシンガポール人と永住権を保持する外国人は計約399万人です(2018年6月時点、ジェトロより)。
シンガポールの在留日本人は3万6000人を超え、1100以上の日系企業が進出しています(2017年10月1日時点、外務省より)。
海外就職の経緯は人それぞれですが、私はシンガポールで働きたいと思い、第二新卒で就職しました。私の経験も踏まえ、若者がシンガポールで就職するメリットとデメリットをお話しします。
※1SGD(シンガポールドル)=約81円
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第二新卒で海外就職のメリット
大手企業に採用される可能性
冒頭でも触れましたが、シンガポールには日系企業だけでも三菱商事、エプソン、三井不動産などの大手企業が多く進出しています。
日本国内で求められる人材と、海外で求められる人材のタイプは異なるので、日本では応募する前にあきらめてしまうような大手企業であっても、試しに応募することをおすすめします。
待遇よりも有名企業での職歴が利点に
実際に私も、日本国内では採用されないような大手企業へ就職できました。いずれにしても幸運であったとしか言いようがありませんが、挑戦してよかったと心から感じます。
現地採用だったので、大手だからといって福利厚生や給与などの点でメリットが特にあるようには感じませんでしたが、ネームバリューのある職歴を得られたことがメリットの1つです。
その後、出産と育児のため退社しましたが、勤務期間の仕事内容はとても濃いもので、貴重な経験をすることができました。
重責を担う役職に就ける
就労ビザ取得に関係するからということもありますが、シンガポールで就職すると、就労経験が少ないにもかかわらず中間管理職級の役職を与えられるケースがよくあります。
私も新卒でしたが、入社すると、日本でいう係長のポジションを与えられました。もちろん最初の頃はハードな日々を過ごしましたが、役職に就いているとそれなりに頑張れるものです。
日本でいうと駆け出しの3年ほどの勤務で退職しましたが、上層部の会議に出席するなど管理職として業務に携わることで、自分のキャリアに自信を持つことができました。
年齢も性別も関係なくチャンスがある
シンガポールで働く他の同年代の話を聞いても、やはり同じようなチャンスを得ている人が多くいます。新卒での就職にもかかわらず5年以内に部長に昇進するなど、若くして着々とキャリアを築いていく人も珍しくありません。
また、男性が兵役などで抜ける期間があるので、もちろん職種にもよりますが、重要なポジションに女性が多いのもシンガポールの特徴です。性別に関わらず平等に昇進のチャンスがあるため勉強や努力のしがいがあり、女性にもおすすめの国です。
ただし、昇格時の昇給は企業によってまちまちだったので、会社との契約更新時に交渉するなど、昇給のためのアピールが時には必要なようです。
国を選べば日本人でも馴染みやすい
シンガポールの民族構成は約7割が中華系、次いでマレー系2割未満、インド系1割未満、残りがその他です(2019年1月現在、外務省より)。
欧米諸国と違い、シンガポールはアジア人主導の国です。そのため、日本人も見た目の違和感や国籍による差別や不公平感をあまり感じず、居住・就労がしやすいです。
もちろん欧米人もいますが、アジア系の民族に理解を示している人が多いです。そんな環境の中で多民族や異文化に触れることができるのは大きなメリットとなります。
お互いに尊重し合うことを学べる
生活が比較的便利な上、教育水準が世界的に見ても高いので、実は子供連れの家族にとっても海外移住先の選択肢として最適です。夫婦でお互いのキャリアを大切にしつつ、子供を多国籍文化の中で成長させることができるため、豊かなライフスタイルを築きやすいです。
年配のシンガポール人の中には、日本人に対して複雑な歴史感情を持っている人もいるようですが、ほとんどの人が日本人の勤勉さや仕事に対する考え方をポジティブに捉えてくれています。
それも、多民族の習慣の中で生活し、他文化を尊重しているシンガポール人ならではの共存方法なのかもしれません。
要求される英語レベルは高くない
公用語はマレー語、中国語、英語、タミル語が指定されていますが、ビジネスでは英語が多用されます。ただし、お互いが異なるアクセントや言い回しを持っているので、求められる英語のレベルは比較的高くありません。
もちろん英語力の向上を怠ってはいけませんが、海外就労が初めての方にとって、言語面でもかなり条件の良い国であるといえます。
第二新卒で海外就職のデメリット
就労ビザ取得
ここからは困難な点をお話ししていきます。
シンガポールで働くためにまず必要となるのが就労ビザです。主な就労ビザは「エンプロイメントパス」や「Sパス」ですが、給与額や職業の専門性によって発給されるビザのレベルが異なります。
しかし、政府の方針により取得条件は頻繁に変わるので、ビザを取りやすい職種というのも現在では一概に言えない状態です。
その時々で異なる取得のしやすさ
例えば私の場合、シンガポールに来た当初は2,900SGD(約23万5000円)のお給料でしたが、エンプロイメントパスを1週間で取得できました。
しかし2年後、給与は3,300SGD(約27万円)になったもののエンプロイメントパスは取得できず、2ヶ月ほどかかってようやくSパスを取得できました。
2年ごとの更新が必要という点は同じですが、Sパスの場合、雇用主が政府に税金を支払わなくてはいけないという大きな違いがあります。
私もSパス取得の際に人事部から、会社側が税金を支払う旨を伝えられると同時に、次回のビザ取得時に政府の方針転換があった場合、今度はSパス自体更新できない可能性(契約解除の可能性)があることを示唆されました。
特定の民族が増えないよう調整
ビザ取得については、政府が人口の民族比率の調整を行っているのではないかという話もあります。
実際に、私がシンガポールに来た時は日本人が増えていましたが、2年後にはビザを取得できない日本人が多くなりました。代わりに、韓国人がビザを取得することが増えていたので大変驚いた経験があります。
中国人の人口統制があったときには、次々と中国人スタッフのビザが取得できなくなり、代わりにビザ取得のしやすくなったフィリピン人が流入するようになったりもしました。
最新の情報を把握する
この通り、ビザ取得はその年の政府の方針や応募状況によって大きく左右されるので助言しにくい状況ですが、シンガポールへ行く前に現地の最新情報をしっかり把握しておくことが重要です。
また、学んだことや資格を生かせる職種へ応募すれば比較的良い結果を得やすいので、専門知識をアピールできる履歴書作成も成功の秘訣です。
高額な家賃
次に覚悟すべきデメリットは、高額な家賃です。
日本から派遣される駐在員のように、家賃補助や子供の教育費などを含めた生活助成制度が整っているのならば問題はさほどありません。
しかし現地採用者の場合、一部の外資系企業では家賃や生活への補助があるものの、基本的には全て自己負担です。ちなみに、独身で若く会社補助のない現地採用者の場合、間借りやハウスシェアをしている人が多いのが現状です。
住居タイプ別の家賃
公団住宅(HDB)
HDBと呼ばれる公団住宅は、築5年以上という条件付きではありますが、月1,800~3,500SGD(約14万5000~28万円)で借りられます。
コンドミニアム
外国人は、プールやジムなどの施設が付いたコンドミニアムという住居で暮らすことが多いのですが、家賃は月2,300~15,000SGD(約19万~121万5000円)くらいとなります。
2LDKか3LDKかによっても左右されますが、家賃の差は地域の違いにより生じます。
ちなみに、高級コンドミニアムの中には1ヶ月の家賃が20,000~35,000SGD(約162万~283万5000円)というものまであります。
一軒家
2,500~22,000SGD(約20万~178万円)で探せますが、光熱費が高くつく上に部屋数が多いため、自己負担の維持費が余計にかかるという難点もあります。
住居のクオリティ
全体的に、高額な家賃の割にクオリティは低く、新築なのに壁のペンキ跡が雑であったり、扉や窓の建て付けが悪かったりすることもよくあります。
私も以前、新築物件に住んだことがありますが、最初の数週間で洗面台のシンクが傾きだし、キッチンの電気配線に異常があったことから、工事することになりました。
新築だったため、家賃も2LDで月4,000SGD(約32万4000円)と決して安くはなく、とてもショックを受けました。
家賃負担をしてくれる会社に勤めるなら心配いりませんが、このように部屋の不具合や修理などで思わぬ出費が発生することもあるので注意しましょう。
大切なのは、契約の際に、契約書に記載された修理に関する負担額をよく確認することです。
まとめ~初めての挑戦にもぴったりの国
海外就職は大きな決断。慎重になるとは思いますが、新卒者をはじめ社会人として間もない若い方も、シンガポールでの就職にチャレンジしてよいと思います。
キャリアアップという観点で大きな成果を得られる場所であり、初めての挑戦や再出発にも強くおすすめできる国です。
就労ビザの取得が最初の難関ですが、一度働く許可を得られれば、日本では得難い経験を積むことができますよ。
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