私は大学卒業後、就職活動のためシンガポールに渡りました。初めて訪れるシンガポールでの新生活はすべてが新鮮で、あっという間の毎日だったことを今でも昨日のことのように思い出します。
2カ月間の就職活動の末、幸運なことにデパートの顧客サービス係の職を得ることができました。3年5カ月という短い期間でしたが、国際的な環境で幅広く学びながら働けたことは貴重な経験でした。
しかし、新卒でのシンガポール就職は文化や国民気質の違いに戸惑いながらのスタートで、つらいことも多くありました。もちろんメリットもありましたが、今回は就職先で体験したハプニング、そしてデメリットも洗いざらいお話ししてみようと思います。
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シンガポール「英語」の落とし穴
シンガポールの言語は多彩
多民族国家のシンガポールでは、マレー語、中国語、英語、タミル語の4言語が公用語です。外国人も多く統一言語が必要なため、特にビジネスの場面では英語を用います。
しかし、国民の70%以上が中華系なので、日常生活では中国語が飛び交っています。また、シンガポールの英語は独特のなまりがある「シングリッシュ」とも呼ばれ、英会話なのに中国語やマレー語の単語を使用します。
文法も省略が多く独特で、会話のリズムもどことなく中国語に近く、リスニングに大変苦戦しました。
シンガポールでのみ通じるシングリッシュ
シングリッシュの文法はブロークンなので容易に習得できます。シンガポール現地の生活を満喫するならシングリッシュは効果的です。友人との間でこれを使えばよりフランクな仲になれるからです。
ただし、シングリッシュに慣れきってしまうのは要注意。シングリッシュは他の英語圏では通用しません。シングリッシュしか話せなくなった、なんてことになった場合、英語発音の習得に再び努力が必要になります。これは必ず心に留めておいてください。
シンガポールの厳しい家賃負担
駐在員と現地採用者の待遇の差
シンガポールで勤務する場合、駐在員、現地採用社員と大きく2タイプに分かれると思います。
駐在員の場合は家賃補助などもあるので基本的には問題ありませんが、現地採用社員にはたいてい家賃や生活手当はありません。外資系の大手企業の中には例外もあるようですが、現地採用の場合は家賃を含むすべてを自分でまかなっていく必要があります。
給料の約半分が家賃に
家賃分などを見越して多額の給与を支払う企業に勤務できると幸運です。しかし、新卒や職歴も浅い独身の若手は月3,000シンガポールドル(以下ドル、約25万円)前後のお給料からスタートという場合がほとんどでした。
私の場合も初任給は2,800ドル(約23万円)で、結婚するまでは月1,200ドル(約10万円)の家賃を払って間借りで生活していました。
もっと家賃を抑えることもできますが、セントラル付近で間借りをしようとすると月800~1,500ドル(約7万〜12万円)が平均なのです。
生活費を具体的にイメージしておこう
現在、4,000ドル(約33万円)以上の固定給がなければビザ取得が困難です。それをクリアしているようであれば、ご紹介したよりも生活はしやすいと思います。
新卒でシンガポール現地採用を目指すなら、シンガポールでの生活費をより具体的にイメージすることが重要になります。
シンガポール人の働き方
シンガポールの国民性なのか、日本人よりはるかに気の強い方が多いです。早い者勝ち気質、言った者勝ちという傾向にあるため、クレーム処理は特に長丁場の大仕事になります。
顧客側の理不尽な要望によるクレームは日本より多いのですが、スタッフによるミスから発生してしまうケースもよくあります。
日本とは異なる仕事に対する意識
しかし、クレームを減らそうとスタッフ教育を熱心にしていても、接客業を極めようというプロフェッショナルな気概を持った人はそう多くないので、基本的には聞く耳を持ちません。
また、簡単に辞職や転職をしてしまうので、厳しくしすぎると来なくなってしまったり、逆に目をかけて育て上げてもステップアップのためにとあっさり転職したりしてしまいます。
シンガポールで働くなら、仕事に対する意識のあまりの違いに動じないことと、特に接客業におけるスタッフ教育の場合は根気が必要です。
シンガポールは「非常識」な出来事の連続
私は日本では、スーパーマーケットで接客の経験がありました。理不尽なお客様は稀、少し変わったお客様がいらっしゃることが年に数回程度でした。
しかし、シンガポールで接客を経験してみて感じたのは、ほとんどのお客様が威圧的であったり、また攻撃的だったりするということです。
ここからは、日本人の常識を覆されたシンガポール就職先でのトラブルやハプニングをいくつかご紹介します。
クレームのための移動費を請求される
先に述べた通り、言った者勝ちという風潮が強いシンガポール。もちろん、言わなきゃ損という軽い気持ちの人が半数以上なので、最終的にはあきらめてくださることが多いのも事実です。
ただ、お店の態度や商品に起因するクレームの場合、内容によっては移動費の請求に対応せざるを得ないことが多々あったので当初は驚きました。
また、わざわざ半休を取ってクレームに来られたお客様からは、半休分の時間給を請求されたこともあります。もちろんご納得されるまで説明し、最終的にはお帰りいただきました。
しかし驚くことに、シンガポールではこういったことがレアケースではないという点です。
言語や文化の違いでお客様とトラブルに
お客様もスタッフも多国籍の職場だったので、言語の違いによるコミュニケーションミスや、文化の違いによる対立は日常茶飯事でした。今では笑えるようなハプニングもありますが、ハラハラすることにも何度か遭遇しました。
ヒアリングミスでお客様がご立腹
お客様が店内でケガをされて、顧客サービスカウンターに絆創膏がないかと来られたときの話です。
その方は絆創膏(plaster)が欲しいと外国人スタッフに伝えたのですが、スタッフはなぜかホッチキス(stapler)と勘違いしホッチキスを渡してしまったのです。からかわれていると感じたお客様はご立腹。
その外国人スタッフの上司として、私がお客様に謝罪をする事態となってしまいました。
国籍を間違えお客様がご立腹
消費税還付手続きに必要な書類を発行するカウンターで、アルバイトスタッフがお客様対応をしていました。その際に、国籍を大韓民国(South korea)と表記するところを誤って北朝鮮(North korea)と表記してしまい、お客様は大激怒。
多国籍のお客様や社員に接する職場では、特に世界情勢に目を配り、たとえ世間話であっても相手の気持ちや立場を配慮した対応が必要だと実感した出来事でした。
値札で大事なところを切った男性客
これが、最も印象的だったトラブルです。
閉店2時間前、ある男性客が自分の彼女を連れて顧客サービスカウンターまで相談に来られました。
内容は、なんと!水着を試着した際に、内側についていた値札で下半身の大事なところに傷をつくってしまったというのです。要求としては、購入しなくてはいけなくなった商品代金の免除と、負傷部分の治療費を含む慰謝料。
ただ、負傷部分の確認をした証人が一緒にいらっしゃった彼女しかおらず、対応が困難でした。
医師の診断書提出をお願い
販売したスタッフに説明を求めると、水着は通常、試着をお断りしている商品だが、特別に許可したとのことでした。直接身につけて試着するとは思わず、いずれにしてももう販売できないので買い取りは不可避であるというのがスタッフの主張です。
理解できる理由でした。そこで、お客様に商品代金はお支払いしていただき、下半身の負傷部分に関しては医師の診断書を持って改めてお越しいただくことになりました。
真相は謎のまま
しかし、納得できないお客様は、当直の男性マネージャーの同情を引こうとします。裏で負傷部分を見せるので確認して欲しいだの、歩くと痛いので帰りのタクシー代を出して欲しいだのとしばらく粘っていました。
閉店の時間となってしまったため、なんとかあきらめて帰っていただきました。その後も医師の診断書を持ってご来店することはなく、最後まで真偽は分からずじまいです。
未だに謎の多い、私にとって最も忘れられない出来事となりました。
まとめ〜衝撃的な経験がタフさと自信につながる
3年5カ月という短い期間に、たくさんの衝撃的なケースに遭遇しました。今では自信につながる貴重な経験をさせていただけたと思っていますが、精神的にタフでないとつらい現場でした。
こんなことを言うと苦労ばかりが目立ってしまいますね。紹介すべきかどうか迷いましたが、そういうこともあってこその海外就職なんだと私は思っています。日本にいてはできないことを経験し、その中で成長できたと思います。
私の体験が、これからシンガポールで就職や転職をしようと考えている方にとって参考のひとつになれば幸いです。
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