日本人は「働きすぎ」と言われます。確かに日本には、定時に帰ると白い目で見られる、飲み会も仕事の一環といった風潮が残っている会社もありますね。
では、「定時上がり」「休日が多い」などと言われるアメリカでは一体どのような働き方をしているのでしょうか。実際にアメリカで2年間働き、現在もアメリカ人の夫と暮らしている私の経験から、両国の働き方の違いを比べてみました。
厳密に言えば、働き方は職種や個人の性格などによって異なりますが、やはり日本には日本の、アメリカにはアメリカの個性が反映されているのも確かです。
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アメリカのエンターテインメント業界で働く
小さいころからフィギュアスケートをやっていた私は、日本の大学卒業後にアメリカのFeld Entertainment社(本社フロリダ州)に就職しました。ディズニー・オン・アイスなどを手がけるエンターテインメント業で、パフォーマーとして2年間働きました。
入社した当時は英語もまともに話せず、この先やっていけるか不安でした。しかし、一通り手続きを済ませると、仕事を覚えて勤務が始まりました。
言葉は分からないことが多かったですが、守るべきルールはすべて冊子に記載され、習うべきパフォーマンスもビデオ化されていたので分かりやすかったです。
アメリカの職場はドライで合理的
日本の働き方の不条理
日本での就職経験はありませんが、飲食店でアルバイトをしたりスケート教室の指導員をしたりしたことがあります。アメリカの職場の話をする前に、まずは日本での仕事で私が感じていたことを簡単に書いてみようと思います。
タイムカード打刻は出勤30分後
駅に併設されているカフェで2年間働きましたが、実際に給料に反映されるタイムカードの打刻よりも30分ほど早く出勤するのが当たり前でした。
お客さんの多い朝の開店時に勤務する場合には、始発の地下鉄に乗って1時間半前に出勤し、販売する軽食を調理しました。すべての準備が整ってからタイムカードを押す仕組みになっていて、その不透明感が好きではなかったです。
範囲外の仕事も業務のうち
また、定められている職務内容以外にも「できたらする」というようなものがありました。具体的には、店内の掃除や午後5時から切り替えになるバーの手伝いなどです。
バーのことはバー担当の人がすればいいと思いますが、忙しいときには手が回らないらしく、カフェ店員がバーの仕込みをすることになっていました。
そのくせ忙しくないときでもバー店員が早朝のカフェの手伝いをすることはなかったので、仕事に比べて給料が割に合っていないなと思っていました。
アメリカでは仕事時間以外は働かない
私が就職したFeld Entertainment社では、仕事の開始1時間前に「チェックイン」といって、タイムカードのような役割を持つ紙にサインをします。
徒歩でホテルから会場へ行くこともありましたがほとんどはバス移動で、チェックインの15分前に会場に到着するように設定されていました。チェックインに遅れた場合などの細かなルールも決められていて、守らなければ罰金が科せられます。
そして公演が終われば、皆驚くべき速さで片付けを行いバスに乗り込みます。
公演後に自由な練習時間が用意されていますが、残る人は次の日に代役を控えている人や新たな演技を習う人など「練習や打ち合わせが必要な人」で、自主的に練習したい人が残っているのはあまり見かけません。
決められた以外の仕事をするなら報酬あり
また、バス移動の際の荷物係やウィッグの手入れ係など細かな副職が用意されており、引き受けた場合には通常の給与にボーナスがプラスされます。
お金に関してはすごくきっちりしていましたね。
残業は少ないが例外の職種も
確かに居残りをする人は少ないです。本当に必要に迫られなければ、多くは次の日に持ち越して作業を行います。
ただし、私の夫が働いている軍隊は別です。軍はアメリカの職業としても特殊な面があり、定時より早い出勤や残業があります。夫の仕事ぶりを見ていても、直属の上司やそのまた上の上司、そのまた上、と連絡がとても大切で、休日であっても電話をかけて連絡を取り合っています。
アメリカの職場は一人で仕事を進める個人主義が徹底
チームで働く日本社会
チームワークに優れているのは、断然日本です。仕事終わりの飲み会や忘年会、新年会など、何かにつけて集まろうとする日本ですが、まったくの無意味というわけではないと思います。
お互いをよく知ることで個人のやる気がアップすることもあれば、お互いの得意・不得意を知ることにより分担ができ、仕事の効率が上がることもあります。仲間内の雰囲気が良ければ、仕事もずっとやりがいのあるものになりますよね。
しかし反対に、集まりごとによって気まずい関係になってしまう場合もある上、そもそも集まりが苦手な人もいます。
仕事仲間と仲良くなることで、困ったときに助け合える利点もあれば、頼られると断りにくいという難点もありますね。
各自が自分の仕事をこなすアメリカ
日本に比べるとアメリカの職場は個人主義です。集まりごとは日本に比べると少なく、仕事をきちんとこなせなければどんどん一人で進めることになります。
もちろん仕事の内容や個性にもよりますが、手伝うことや助け合うことはあまりありません。自分の仕事だけこなしていれば大丈夫という安心感もありますが、本当に「仕事は仕事」です。
私も、アメリカで働き始めたころはそれまでに感じたことのない孤独感を覚えました。最初は自分の仕事に必死で、周りを見る余裕などなかったです。
交流が少ない分、評価されるまでに時間が必要
ただ、必死に追いつこうと頑張っていたのはきちんと周りも見ていてくれたので、時間がたつにつれ話しかけてくれる人が増え、最終的には本当に楽しく仕事ができました。
また、仕事の要領がつかめて気づいたのは、自分が頑張っているほど周りは働いていないことです。みんなけっこう手を抜いていました。
仲良くなればもちろんアメリカ人であっても助け合いは生じ、能力が認められると昇進できるよう協力してもらえます。ただ、会社の催しなどが少ないので、仲良くなるまでに時間がかかります。
アメリカの職場はどんな場面でもプレゼン力が鍵!
就職活動時
Feld Entertainment社に入社するには、履歴書と特技などを収録したビデオを送付します。
エンターテインメント業では有名な大企業なので、能力が高くても採用されなかった知り合いや、採用を何年も待ち続けている人を知っていました。「入るには強いコネがいる」「入れるかどうかは運次第」とスケート業界では言われています。
考えてみれば、わざわざビザを取って他国の人を採用するよりも、その国にいる人を雇った方がいいに決まっていますよね。ましてや言葉が通じないとなれば、損が生じる可能性も高いです。
返事がなければ何度も催促
幸運にも私はその当時、現在のアメリカ人の夫と付き合っていたので、メールのやり取りをすべて手伝ってもらいました。夫が文章力に長けていたおかげか半年もかからずに採用してもらえましたが、しつこいほど何度もメールを送ったのを覚えています。
応募はしたのだからただ待つしかないと考えていた私に、「待っていても何も来ないなら何度も問い合わせて見てもらいなさい!」と夫が背中を押してくれました。
その経験から考えても、自分からしつこいくらいに売り込んでいかなければ応募書類は見てもらえないことがうかがえます。
昇進時
日本での就職経験はないので日本の昇級に関する詳細は分かりませんが、Feld Entertainment社ではどれだけ自分の上司に評価してもらえるかと、どれだけ会社の人事担当に自分を売り込めるかにかかっています。
やはり仕事上、ディレクター(パフォーマーでいう上司)とも合う・合わないがあり、気に入られている人は主役の代役を演じる確率が高かったです。反対に嫌われている人もいて、そういう人は代役もさせてもらえません。
ディレクターの個性が公演にも強く反映され、見た目を重視するタイプ、能力と働き方を重視するタイプ、全体に平等なタイプなどさまざまです。
人事担当へのアピールも不可欠
すべての公演が終わる頃に、会社の人事を司る方との話し合いがあります。私が在籍していたときは人事が何人かいるのではなく、なんと1人の方が多くのアイスショーの人事担当を務めていました。
その担当者はディレクターから仕事内容の詳細などを受け取っているので、気に入ってもらえれば昇進が可能です。欲しいことややりたいことを明確に伝えると、基本的に協力してもらえます。
私も昇進を狙っていましたが、結婚して腰を据えたい思いもあったので、2年勤めて辞めることにしました。
アメリカの職場では上司も友達
日本人がアメリカで働いて一番驚くことは、上下関係の違いでしょう。
日本では親や教師、コーチなど、幼い頃から目上の存在というものを教え込まれ、上下関係を習いますよね。しかしアメリカでは、親や教師はもちろん尊敬に値するものの、日本よりも親近感があるように思います。
ハグやキス、握手などのスキンシップが挨拶として用いられ、初対面の相手にも挨拶とともに「最近どう?」などと聞くことが当然なので、そういった文化的な面から親密さが生じていると思われます。
小学生で体験したアメリカのフランクな上下関係
私も小学生の頃にフィギュアスケートの合宿で初めてアメリカを訪れ、「Hello, How are you?」という一連の流れを何度も練習したことを覚えています。
現在は変わってきているのかもしれませんが、当時の日本の教師やスポーツのコーチは神的存在に扱われ、気軽に話すなんて考えられませんでした。私のコーチも皆からかなり恐れられていたので、急用のために話をするときでさえ緊張して心臓がドキドキしたものです。
しかしアメリカでは、コーチと生徒が笑い合い、肩を組んで話している光景が当たり前で、小学生の私にとても強い印象を与えました。
気が合えば親友にもなれる
Feld Entertainment社で働いていたときも、ディレクターや大先輩であってもかなり親しく話しかけてくれました。特に、長く働いている人ほど親切に何でも教えてくれた印象があります。
もちろん人それぞれ個性があるので、これに当てはまらない人はたくさんいると思いますが、アメリカでの私の経験や印象をもとに言うと、経験の浅い人ほど威張っていて嫉妬深く、経験の多い人ほど謙虚で親切です。
上司とも友達になることは可能です。経験や働いている年月ではなく、個人としての性格が最も重要視されます。
ただ、私の夫が働いている軍隊では例外があります。階級によってすべてが左右され、階級が違いすぎると私的な時間に会うことはよくないとされています。
アメリカの職場で気づいた日本の素晴らしいところ
小学生時にアメリカのコーチと生徒の関係を目撃してからずっとアメリカに憧れてきました。将来は絶対にアメリカで働くと考えていた私にとって、アメリカがキラキラと輝いて見えていたことは言うまでもありません。
しかし実際にアメリカで働いてみて、日本の良さをしみじみと感じるようになりました。
おもてなしのありがたみ
アメリカでは給与の分だけ働きます。給与が高ければそれだけ求められるものも多く、安ければ誰も気にしません。
しかし日本では、サービスを受け取る側の「お客様」を主体に働きます。ちょっとした気遣いやおもてなしという行為は、もらう側からするととてもありがたいものです。
1歳未満の赤ちゃんを連れて日本から渡米した際、日本では空港で働いている方が快く荷物を運んでくださいましたが、アメリカ国内で乗り換えたときにはこちらから手伝いを要求しなければならず、しかもすごく不機嫌に対応された経験があります。
もちろんアメリカにも親切な方はたくさんいますが、日本に比べると本当に不愛想でサービスも低品質です。アメリカ人の夫でさえも、日本のマクドナルドはおいしいから好きだがアメリカでは食べないと言います。
笑顔が増える日本のサービス
やはり良いサービスが提供されると、受け取る側は幸せな気持ちになります。払っているお金以上に、幸せな気持ちを受け取ります。「また来たい」と思うようになるし、優しくされると優しくしようと考えるものです。
給与よりも「お客様」を主体に考えた働き方の方が笑顔が増えるような気がして、私は好きです。
アメリカの職場での休みの取り方
Feld Entertainment社で働くパフォーマーは1年契約で、そのうち約9ヶ月間を働き、残りは休暇です。
ただ、エンターテインメント業は休日や祝日に忙しく働く業種で、有給休暇はなく、祝日に帰郷する人も少なかったです。少し特殊な職業だと言えますね。
繁忙期の出勤は評価も高い
軍で働く夫には有給休暇がありますが、毎月利用する人もいれば、あまり使わずにためておいて必要なときに長期で取る人もいます。
アメリカではクリスマスに休暇を取る人が圧倒的に増える傾向があり、その時期に働くと後にそれが評価してもらえるようです。
例えば、祝日に大勢が一斉に休むことはできないので、普段の休暇の利用の仕方などを考慮して休める優先順位を決めます。たくさん休みを取っている人とそうでない人が同じときに頼めば、あまり休まない人に休みをあげるのは当然ですよね。
まとめ~大切なのは一人ひとりに合った働き方
私自身はおもてなしの心を大切にする日本の働き方が好きですが、自分が働くならば行うべきタスクが明確にされているアメリカがいいです。
ただ、アメリカにおいても日本においても、自分の時間を仕事に捧げて成功を収めている人もいれば、給与を得るために笑顔もなく働いている人もいます。
どちらにも利点と難点があり、どちらが優れているということではありません。個人個人に個性があるように、働き方も人によって異なります。大切なのは、今の仕事や働き方が自分に合っているかどうかではないでしょうか。
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