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カナダのブドウ園で働く私の勤務時間を決めるのは私?働き方を自分で管理する「自由」と「責任」

ぶどう園

ワイン産業が盛んなカナダのブリティッシュ・コロンビア州オカナガン地方のブドウ畑で働き始めた私は1シーズンを終え、仕事のない冬を過ごしています。留学中の息子と暮らしながら念願のワイン用のブドウ栽培の仕事に就き、新鮮なことばかりの毎日でした。

厳しいと聞いていた農業でしたが、雇用主は至って温和な方たち。職場のルールもほとんどなく、出勤時間も帰宅時間も自分で決められます。

そんな仕事場で学んだのは、「セルフ・マネージメント」という自由の中の自己責任でした。

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目次

カナダで私が働くブドウ園と雇用形態

ファミリー農家

150年続くファミリー農家

私の職場であるブドウ畑は、オカナガン地方で約150年前から代々続く農家のものです。一族で牧場と果樹園を含む大農場を経営しており、その一部としてワイン部門があります。

ワイン部門では、ワイナリーとワイン用ブドウ畑の経営をしており、私はそのブドウ畑で働いているというわけです。

私の上司に当たるワイン部門のオーナー、ワインメーカー及びマネージャーは皆、一族の方々で、その下に従業員が約10人ほど働いています。

シーズンのみ働く季節労働

私の雇用契約は週休2日の週35~40時間(フルタイム)労働、2月から10月までのシーズナル雇用です。

閑散期の冬季11月から翌年1月までは解雇となりますが、2月からまた同じ職場で仕事を始めることができます。

カナダで私が働くブドウ園はセルフ・マネージメント・システム

冬の農園

自分の仕事は自分で管理

これは私が仕事を開始したときに驚いたことなのですが、10人ほどいる従業員は一律で役職がありません

職場を管理・監督するスーパーバイザーもいなければ、タイムカードもありません。マネージャー曰く「セルフ・マネージメント・システムだからね」。

仕事は慣れるまで先輩従業員が教えてくれますが、基本的に自分の仕事は自分で管理するシステムです。

就業に関するルール

マネージャーから伝えられたことは以下の通りです。

  • お給料は時給制
  • 1日7~8時間、1週間に40時間は超えないこと
  • 勤務開始、終了時間は自由
  • 土曜日、日曜日は基本的に休み、希望するなら働いても良い
  • 祝日は休んでも働いても良い

出勤した時間を管理するシステムはなく、2週間に一度、お給料の計算のために働いた時間をマネージャーに自己申告すればよいことになっています。

カナダのブドウ園での労働時間

ぶどう農園

勤務時間での決まり事は「フルタイムで週40時間を超えないこと」のみでした。一部例外の職種もありますが、前述の通りここでの「フルタイム」とは1週間に35~40時間程度の労働を指します。

毎日の仕事開始時間は自由。前日に仕事内容を把握し、あとは思い思いの時間に出勤して7~8時間働いて帰宅するという具合です。

私はシーズン中、息子を学校に送り出したのち午前8時から仕事を開始し、午後3時ごろに終了していました。

時々、ワインのボトル詰めなどのため従業員全員が同じ時間に集まる必要のある例外の日もありますが、それ以外は自由出勤が基本でした。

カナダのブドウ園での休憩時間

休憩

私の休憩は1日30分です。ブリティッシュ・コロンビア州の労働基準法で「30分の無給休憩なしに5時間を超える労働はしていはいけない」というルールになっています。

休憩も自由に取れるため、仕事の切りが良いところを見計らって個々に取ります。

無給なので、中には休憩を取らずにスナックやサンドイッチを食べながら働く従業員もいますが、私は他の数人の従業員さんたちと声を掛け合ってお昼12時頃を目安に一緒にランチ休憩を取っていました。

カナダのブドウ園での長期休暇

受付カウンター

契約上は有休なし

上述した通り、私の給与形態は時給制で、福利厚生はありません。一定期間のみのシーズナル雇用のため、有給休暇なども特にありません。

農業などの季節労働者は、仕事がない冬の間はEmployment Insuranceと呼ばれる失業保険を申請して過ごすか、ほかの職に就くのがカナダでは一般的です。

相談次第で夏のバケーションも可能

夏休みなどの長期休暇を取りたい場合は、マネージャーと相談します。多くの従業員が同じ時期に休暇を取らない限り支障はないので、希望通り休暇をもらえることが多いです。

一方、ベテラン従業員の中には灌漑設備や農薬散布など非常に重要な仕事を任されている方もおり、彼らはシーズン中に長期の休みを取ることはほぼありません。シーズンオフである11月から1月の間を長期休暇とするのが一般的です。

カナダのブドウ園での緊急の休み対応

ぶどう園

私の場合、息子の学校の都合で出勤を遅らせたり、お休みを頂かなくてはいけなかったりすることが度々ありましたが、そんな際にもマネージャーはとても寛大でした。マネージャーさん自身も4人のお子さんがいることから理解を頂いていました。

大切なことは信頼を欠かさないことなので、遅刻や早退の連絡ははっきりした理由と共に丁寧にお願いすることを心掛けています。

そして遅刻した日は「今日は助かりました、ありがとう」などのアフターフォローも大事にしています。

カナダのブドウ園で働いて分かった自己管理の大切さ

この職場で働き始めたばかりのころ、ベテラン従業員さんから

「ここはとにかく自由だよ。他のブドウ園でこんなところはないからね。スーパバイザ―が監視していたり、集合時間があって遅れると怒られたりするのが普通なんだ。でも、ここは一切自由で自分次第さ。だから自分がしっかりしていないと駄目なんだ」

と言われたことがありました。

新人の私は当初はただ、そうなんだ、と聞いていただけでしたが、シーズンを通して働いてみて、彼の言ったことがよく分かってきました。自由であることが実は一番厳しいということです。

自由さに負ける人は続かない

シーズン中に数十人の新人が入り、半数以上が辞めていきましたが、その多くは「職場の自由さ」に負けてしまった人たちでした。

「今日は寒いから早く帰る」「用事があって遅れてきた」などを繰り返しているうちに、自身のスケジュール管理ができなくなってしまい、ついには仕事から足が遠のいてしまった人たちがたくさんいました。

そんな時、マネージャーは「残念だね」の一言で、彼らを叱ることも咎めることもしません。セルフ・マネージメントがきちんとできる人だけが職場に残っていきます

これがきっと150年のファミリー経営の知恵なのだと思います。

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この記事を書いた人

カナダ、ブリティッシュ・コロンビア州のケローナに移り住んで3年、かねてから興味のあったワイナリーのブドウ栽培の仕事に就き、驚きと発見の日々を過ごしています。

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