働く時間を自分で管理?カナダのぶどう園の自由な働き方と責任とは
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カナダ、オカナガン地方のブドウ畑で働き始めて1シーズンを終えたところです。念願のワイン用のブドウ栽培の仕事に就き、新鮮なことばかりの毎日でした。
厳しい仕事と聞いていた農業でしたが、雇用主は至って温和な方たちで、職場のルールもほとんどありません。出勤時間も帰宅時間も自分で決められる、カナダのぶどう園の仕事場で学んだのは「セルフ・マネージメント」という自由の中の自己責任でした。
記事の目次
カナダで150年代々続くファミリー農家
私の職場であるブドウ畑は、オカナガン地方にて約150年前より代々続く農家です。一族で牧場と果樹園を含む大農場を経営しており、その一部としてワイン部門があります。
ワイン部門では、ワイナリーとワイン用ブドウ畑の経営をしており、私はそのブドウ畑で働いています。私の上司に当たるワイン部門のオーナー、ワインメーカー及びマネージャーは皆、一族の方々で、その下に従業員が約10人ほど働いています。
カナダ農園のセルフ・マネージメント・システム
これは私が最初仕事を開始したときに驚いたことなのですが、10人ほどいる従業員は一律役職がありません。
スーパーバイザーもいなければ、タイムカードもありません。マネージャー曰く「セルフ・マネージメント・システムだからね」とのことです。
仕事は慣れるまで先輩従業員が教えてくれますが、あとは基本時に自分の仕事は自分で管理する、というシステムです。
出勤した時間を管理するシステムもなく、2週間に一度、お給料の計算の為に働いた時間をマネージャーに自己申告すればよいという具合です。
先輩従業員からは「ここは、とにかく自由だよ。他のブドウ園で、こんなところはないからね」と言われました。
カナダの労働に関するルール
勤務時間での決まり事は「フルタイムで週40時間を超えないこと」のみでした。一部例外の職種もありますが、ここで「フルタイム」とは、1週間に35~40時間程度の仕事を指します。
マネージャーから伝えられたことは以下の通りです。
- お給料は時給制
- 1日7~8時間、1週間に40時間は超えないこと
- 勤務開始、終了時間は自由
- 土曜日、日曜日は基本的に休み、来たかったら働いても良い
- 祝日は休んでも働いても良い
毎日の仕事開始時間も自由。前日に仕事内容を把握し、あとは思い思いの時間に出勤して7~8時間働いて帰宅するという具合です。私は息子を学校に送り出したのちの8時から仕事を開始し、3時ごろに終了していました。
時々、ワインのボトル詰めなどの従業員全員が同じ時間に集まる必要のある例外の日もありますが、それ以外は自由出勤が基本でした。
カナダのぶどう園の休憩時間の取り方
私の休憩は1日30分です。ブリティッシュ・コロンビア州の労働基準法で「30分の無給休憩なしに5時間を超える労働はしていはいけない」というルールになっています。
私の職場では休憩時間も自由にとって良く、仕事の切りが良いところを見計らって個々に取ります。
無給の休憩なので、中には休憩を取らずにスナックやサンドイッチを食べながら働く従業員もいますが、私は他の数人の従業員さんたちと声を掛け合って12時頃を目安に一緒にランチ休憩をとっていました。
カナダぶどう園の長期休暇の取り方
私の給与形態は時給制で、福利厚生はありません。週休2日の週35~40時間労働、2月から10月までのシーズナル雇用で、有給休暇などは特にありません。
農業などのシーズナル雇用者(季節労働者)は、仕事がない冬の間はEmployment Insuranceと呼ばれる失業保険を申請して過ごす、またはほかの職に就くのがカナダでは一般的です。
夏休みなどの長期休暇を取りたい場合は、マネージャーと相談次第です。多くの従業員が同じ時期に休暇をとらない限り支障はないので、希望通り休暇を頂けることが多いです。
一方、ベテラン従業員の中には灌漑設備の担当や農薬散布担当など、非常に重要な仕事を任されている方もおり、大抵の場合、彼らはシーズン中に長期の休みを取ることはありません。
シーズンオフである11月から1月の間を長期休暇とするのが一般的です。
ぶどう園での緊急のお休み対応
息子の学校の都合で出勤を遅らせたり、お休みを頂かなくてはいけないことが度々ありましたが、そんな際にもマネージャーはとても寛大でした。マネージャーさん自身も4人のお子さんがいることから、理解を頂いていました。
気を付けなくてはいけないことは信頼を欠かさないことなので、遅刻や早退の連絡は、はっきりした理由と共に丁寧にお願いすることを心掛けています。
そして遅刻した日は「今日は助かりました、ありがとう」などのアフターフォローも大事にしています。
まとめ
この職場に就いたばかりのころに、ベテラン従業員さんから「ほかのブドウ園ではスーパバイザ―が監視してたり、集合時間があって遅れると怒られたりするのが普通なんだ。でも、ここは一切自由で自分次第さ。だから自分がしっかりしてないと駄目なんだ」と言われたことがありました。
新人の私は当初はただ、そうなんだ、と聞いていただけでしたが、シーズンを通して働いてみて、彼の言ったことがよく分かってきました。自由であることが実は一番厳しいということです。
シーズン中に数十人の新人が入り、半数以上が辞めて行きましたが、その多くは「職場の自由さ」に負けてしまった人たちでした。
「今日は寒いから早く帰る」「用事があって遅れてきた」などを繰り返してるうちに、自身のスケジュール管理ができなくなってしまい、ついには仕事から足が遠のいてしまった人たちが沢山いました。
そんな時、マネージャーは「残念だね」の一言で、彼らを叱ることも咎めることもしません。こうやってセルフ・マネージメントがきちんと出来る個人だけが職場に残っていきます。きっと150年のファミリー経営の知恵なのだと思います。
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