ニュージーランドに移住して数年たちますが、大都市オークランドに住んでいると、日本人と出会う機会がよくあります。そんな中驚くのは、起業している日本人が多いということです。
また日本人に限らず、外国人オーナーが経営しているお店をよくみかけます。友人に話を聞くと、ニュージーランドは比較的起業しやすい国のようです。
今回はニュージーランドで個人事業主「ソロ・トレーダー」(Sole Trader)として起業するための流れを紹介します。※1NZD=73.12円(2019年1月)
記事の目次
ニュージーランドは起業環境とは
海外起業という言葉を聞くと、かなりハードルが高いイメージがありますが、実はニュージーランドは世界で1番起業しやすい国なのです。
世界銀行(The World Bank)が2018年5月に発表した最新のランキングでは、ニュージーランドは世界190ヵ国中「起業しやすい国」1位に選ばれています。
調べてみると、1位になるのは2018年に限ったとこではなく、2016年から2018年まで、3年連続で首位を獲得しています。
判断基準項目
このランキングの判断基準は10項目あり、ニュージーランドはその内3部門で首位に輝いています。各項目のニュージーランドのランキングは以下のようになっています。
- 起業のしやすさ:1位
- 建設許可のとりやすさ:6位
- 電力調達のしやすさ:45位
- 不動産登記のしやすさ:1位
- 資金調達面:1位
- 少数株主保護:2位
- 納税面:10位
- 海外貿易:60位
- 契約履行:21位
- 破産・破たん処理:31位
オンラインで全て完了
ニュージーランドが起業しやすい国に選ばれている最大の理由は、オンライン上で登記が簡単にでき、起業までの手続きに要する日数(1日の場合も)、手続きの回数(1回)の短さにあると思います。
最低資本金の定めもなく、株主の承認も最低1人1株で開業ができます。
ニュージーランドの3つの起業方法
ニュージーランドで起業する場合、主に3つのタイプがあります。
- 個人事業主(Sole Trader)
- パートナーシップ(Partnership)
- 株式会社(Limited Liability Company)
3つの中で、知り合いの多くがソロ・トレーダーとして起業しています。専門的な資格を持っている職人(配管工、電気工)をはじめ、システムコンサルタントや建築業者などの独立請負人などがこの形態で起業しています。
芝刈り業者、ネイルサロン、美容師などもソロ・トレーダーに多い職種です。
ソロ・トレーダーとしての起業の流れは?
ソロ・トレーダーとして起業する場合、法的な手続きは一切ありません。必要なものは個人のIRDナンバーと呼ばれるものだけです。ただ、電気工など資格が必要な職種では、資格証の提出義務があります。
IRDナンバーとは?
IRDナンバーは納税者管理番号といわれるもので、ニュージーランドで働く場合は必ず取得しなければなりません。
ソロ・トレーダーは「会社=個人」になるため、個人のIRD番号が起業する商用ライセンスプレートのようなものになります。
IRDの取得方法は?
ニュージーランドの国税局IRD(Inland Revenue Department)のオンラインサイトで申請ができます。他にもAAや郵便局の窓口、郵送での申請が可能で、手数料などは無料です。
私はAA(Automobile Association)の窓口で申請しました。
日本のマイナンバー(番号が分ればOK)、IRD申請書、運転免許書、住所証明書、銀行口座明細を持参し、書類確認してもらったのち、約10日後に納税者番号が記載された用紙が届きました。
住所証明書に関しての補足ですが、ニュージーランドには住民票というものがありません。そのため住所証明書は、自分の住む住所に送られた郵便物を使用します。公共料金の請求書、銀行、政府機関からのものが対象となります。
※AAは日本のJAF(一般社団法人・日本自動車連盟)と同じような機関です。
- Inland Revenue Department:https://www.ird.govt.nz/
IRDナンバーを取得したら?
IRDナンバーを取得した後は、IRDに起業する旨を伝えるだけですぐに開業できます。
開業する際、社名を決めることも重要です。実はソロ・トレーダーとして起業する場合、社名登録などの必要もありません。株式会社などの社名として登録されていない企業名であればどんな名前でも使用できます。
- 登録済みの社名を検索できます:https://www.business.govt.nz/
GSTの登録
GSTはgoods and services taxの略称で、年収が60,000NZD(4,386,990円)を超える場合は、IRDに申告し、GSTナンバーを取得することが義務付けられています。申告をしていない場合、罰金の対象になるため注意が必要です。
また、年収がそれ以下の場合でも、GSTナンバーを申告することは可能です。
ソロ・トレーダーのデメリットは?
ソロ・トレーダーは会社=個人なので、信用問題の点でデメリットがあります。例えば、銀行へ融資を頼みたい場合、やはり融資を受けるハードルが高くなります。
また万が一負債を抱えた場合は、その負債は個人のものとされます。負債が返済できずに一度破たんすると、次の起業はもちろん難しくなります。
ソロ・トレーダーとして起業するのは簡単ですが、その反面何かあったときは全て個人の責任になるという点はデメリットだと思います。
ソロ・トレーダーからステップアップ
知人に話を聞くと、まずはスタートしやすいソロ・トレーダーから起業するのがおすすめのようです。ソロ・トレーダーとして起業し、その後、株式会社などにレベルアップしていくのが無難だそうです。
もちろん初めから株式会社として企業をスタートすることも可能ですが、やはりソロ・トレーダーよりも内容が複雑になります。店舗を構えることも多く、その場合の店舗契約、銀行関係、弁護士、会計士などを雇うことも必要になると思います。
そういった場合は、やはり弁護士に相談しながら起業していくのが一般的なようで、金銭面でも負担は増えてきます。
趣味があるなら
私の友人は英語が得意ではありませんが、パッチワークが好きで日本でも講師をしていたそうです。
英語は片言でも、パッチワークなら生徒は見よう見まねで学ぶことができます。他人に勧められて、家でパッチワーク教室を始めたところ、これがヒットしたそうです。
パッチワークを教えながら、英語を学び、今ではニュージーランドに限らず他国へ教えに行くこともあるそうです。
料理が好きなら
料理が好きな知人は、自分のお店を開きたいという夢があったそうです。レストランのような規模の大きなビジネスを始める資金がなかったため、フードトラックを購入し、路上にお店を出すことにしました。
数年これを続け、お店の開店資金をため、最終的に夢だったお店をオープンすることができました。
フードトラック時代に常連客がたくさんできたおかげで、お店もかなり順調にスタートできたそうです。
まとめ
起業できるのは一部の限られた人というイメージがありましが、ニュージーランドのソロ・トレーダーには、趣味の延長で活躍している人も多くいます。
もちろん起業すれば必ず成功につながるという保証はありません。起業した後にこそ、苦労はあると思います。
ただ起業する最初のステップが簡単なニュージーランドでは、自分の夢を実現できるチャンスは大きいと感じています。
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