私たち日本人になじみがあり、旅行先としても人気の韓国。しかし、近年の韓国は不景気で、経済に関しては明るいニュースがとても少なくなっています。
特に、若者の就職事情は深刻な社会問題の一つに数えられるようになり、大学を卒業しても就職できない学生が年々、増加傾向にあるようです。
ここでは、そんな韓国の若者の就職事情についてご紹介します。
韓国は空前絶後の就職難
韓国統計庁によると2015年の失業率は4.6%、2020年の失業率は4.4%で、他の先進国に比べそこまで悪い数値ではありません。ところが、若年層(15〜29歳)に限って見ると、失業率は10%です。
また、2016年には就職準備生を含む韓国での失業者が450万人を超え、コロナの影響もあり今後さらに悪化することが予測されています。
なぜこれほどまでに、韓国では就職するのが難しくなったのでしょうか。
高い給料を目指して大企業を目指す若者たち
よく言われる理由の一つが、大企業と中小企業の賃金格差です。韓国では、サムスンや現代といった財閥と呼ばれる大企業に比べると、中小企業でもらえる給料はかなり下がります。
そのため、就職を準備している学生は何としても大企業に入ろうとするので自然と競争率が激しくなり、2〜3年経っても就職先が決まらない就活浪人が増えているのです。
こうした若者の就職難を反映してか、さまざまな造語がネット上で現れるようになりました。
ヘル朝鮮
2016年から急激に広まったネットスラング。ヘル(地獄)と朝鮮を組み合わせた造語で、生きづらい自国の社会状況を嘲る言葉として定着しました。
スプーン階級論
親の職業や資産によって人生が決められるという階級論。親の資産に応じて社会階級が金、銀、銅色のスプーンに分けられ、最下層は泥のスプーンと呼ばれます。本人の努力だけではどうにもならない韓国社会を揶揄する言葉として使われています。
三放世代
就職難や経済的な事情で、恋愛・結婚・出産を放棄した若者世代を指す言葉。さらに、就職・人間関係・マイホーム・夢まであきらめた「七放世代」という言葉も見られるようになりました。
韓国の若者にとって資格取得は必須
こうした就職難の時代にあって、韓国の大学生が最も力を入れているのが資格の取得です。また、在学中にボランティアをしたり、休学して語学研修に行ったりして、経験値やスキルを高めようとする学生が目立ちます。
英語の資格TOEICを重視
中でも、ほとんどの大学生が力を入れているのがTOEICの勉強です。韓国の会社は、採用条件に「TOEICスコア〇〇点以上」を掲げていることが多く、学生たちは在学中になるべく高いスコアを得ようとしているのです。
夏休みや冬休みになると、英語塾のTOEICコースが開講し、早朝から通っている学生の姿をよく見かけます。カフェに入ると、英語の教材を開いている人や、パソコンやタブレットでオンライン講座を受講している人もいて、あまり日本と変わらなくなりました。
パソコン関連や韓国語教師の資格にも注目が
その他に人気なのはワードやエクセルなどパソコン関連の資格、また、近年ブームになりつつあるのが韓国語教師の資格です。韓国語を学ぶ外国人が増えたこともあり、需要が増えているそうです。
それ以外の人気資格は業種によって異なりますが、一般的に韓国の就職活動で大事なのは英語関連の資格で間違いなさそうです。
韓国の若者は英語を勉強しにフィリピンへ行く
韓国でもTOEICのスコアが重要だと述べましたが、最近ではTOEIC800〜900点台の高スコア保有者もゴロゴロいるので、TOEICの点数だけでは差別化が難しくなりました。
会社側もTOEICのスコアを見るだけでなく、実際に英語が話せるのかどうかを判断するため英語面接を設けることが増えています。TOEICのスコアが高くても、肝心の英会話ができない人もいるからです。
そんな状況を受けて、英会話力を上げるため、海外に語学研修に行く韓国の学生も増え始めました。そこで注目されているのがフィリピンへの英語留学です。
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フィリピンが選ばれる理由
欧米ではなく、なぜ東南アジアのフィリピンに留学するのかと疑問に思われるかもしれません。ご存知の通り、フィリピンでは英語が公用語として使われていますが、韓国の若者がフィリピン留学を目指すのにはさまざまな理由が存在します。
学費・物価が安い
まず、留学費用が欧米に比べて安いです。フィリピン留学では、語学学校の敷地内にある寮での生活に3食付きが基本なのですが、1ヶ月にかかる費用は授業料、寮費、食費で大体10万円が相場と言われています。物価も安いので、欧米留学のように学費以外の生活費で悩む心配もあまりないようです。
また、次に述べる通りフィリピンには韓国資本の語学学校が多いせいか、寮の食事に韓国料理が多いのもポイントです。
カリキュラムが韓国人の気質に合っている
フィリピンには、韓国人が経営する語学学校が多くあります。その影響はカリキュラムにも及んでいて、韓国資本の語学学校には「スパルタ」と呼ばれるコースが存在します。平日は外出禁止で1日7時間の授業、2〜3時間の強制自習タイム、毎日単語テスト実施などを特徴としているようですが、どこか韓国の高校と似ている面があります。
韓国の高校には「夜間自律学習時間」という制度があり、学校によって違いはありますが、夕方から夜9時、10時まで教室で自習しなければなりません。そのため、お弁当を2つ持って行く生徒もいるほどです。
つまり、厳しいカリキュラムも韓国人にしてみれば“普通”、それどころか短期間で英語力が向上すると評判で、韓国人留学生の多くがスパルタコースで勉強するそうです。
マンツーマン授業が多い
フィリピン留学が韓国の若者を魅了する一番の理由が、先生と一対一で会話するマンツーマン授業です。学校によって違いはありますが、大体3〜4時間のマンツーマン授業をした後、2〜3時間のグループレッスンという形を取る学校が多いようです。
英語で話す機会が多くなるのはもちろん、希望に沿ってTOEIC対策や英語での模擬面接、ビジネス英語などの個別指導が受けられるというのは、日本人にとっても魅力的ですよね。
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韓国の若者には公務員が人気
韓国で英語の資格と並んで人気があるのが公務員です。日本に公務員予備校があるように、韓国にも国家試験のための予備校が乱立しています。長引く不景気も影響してか、安定した職業である公務員を目指す若者は年々、増加しています。
韓国統計庁によると、昨年(2016年)に実施された公務員9級試験(日本の国家3種公務員試験に相当)では、4,120人の募集に対して全国で164,133人が受験し、46.4倍の競争率を記録したそうです。ちなみに志願者数は22万人を超え、歴代最多を記録しました。
募集単位別にみると、倍率が200倍や400倍を超えた試験もあり、現代版科挙と言っても過言ではなくなってきています。
給料よりも定年まで働けることが魅力
公務員は決して給料が高いわけではないのですが、定年まで働くことができて解雇の心配がないため、現代韓国の若者にとって魅力的に映るのかもしれません。
私の友人の中にも、公務員試験の準備をしている人がいました。試験が終わった後に会ったのですが、毎日予備校に通い、試験日まで誰とも会わなかったそうです。
狭い部屋にこもって勉強
彼が生活していたのは、かつて受験勉強をする学生たちに使用された「コシウォン」と呼ばれる施設の狭い部屋です。
部屋の中には机とベッドとテレビがあります。トイレとシャワーは共用です。コシウォンにもよりますが、ご飯とキムチ、ラーメン、コーヒーなどは無料提供のところが多いようです。ワンルームに比べると家賃は安いのですが、写真で見る以上に狭いです。
地方出身の学生は、ソウルの予備校に通いながらコシウォンで生活している学生が多いと聞きますが、私だったら試験日を迎える前にあきらめている気がします。
まとめ~韓国の若者に未来を
どこの国にも雇用の問題はありますが、韓国は世界的に見てもかなり厳しい状況にあると言えます。中には国内での就職をあきらめ、カナダやオーストラリア、日本などで仕事を探す若者も出てきています。
政治家に対する怒りの声も日増しに強くなっており、こうした若者の声を意識して政治が大衆迎合主義に陥ることを個人的には危惧しているのですが、いずれにせよ政治・経済ともに安定し、韓国の就職事情が少しでもよい方向に向かえばと願っています。
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