「AIに人の仕事が奪われる時代も近い」という話を耳にすることが多くなりました。
そんな中で将来性がある職業に分類されるのがElectrician(エレクトリシャン/電気工事士)。アメリカ合衆国労働統計局も、まだまだ雇用成長が見込まれる職業としています。
私の夫は34歳でElectricianを目指し、オクラホマ州でライセンスを取りました。その夫の経験をもとに、アメリカ電気工事士のライセンスの取り方をご紹介します。
※1ドル=107円
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アメリカの電気工事士(Electrician)とは
住宅からビル、工場に至るまでさまざまな建物の配線工事や据付電気機器の設置、修理やメンテナンス等を行うには、法で定められた知識や技術が必要です。
それらの試験に合格しライセンスを与えられ、作業することを許された人がElectricianです。
ただし、Electricianのライセンスは州によって発行されており、アメリカ全土で通用するものではありません。
アメリカ電気工事士ライセンスの種類
ライセンス一覧(オクラホマ州の場合)
- Unlimited Electrical Contractor(アンリミテッド・エレクトリカル・コントラクター)
住宅、商工業施設問わず、あらゆるフィールドで働くことが可能。電気工事分野で起業したり、個人的に仕事を請け負ったりすることができます。
- Unlimited Electrical Journeyman(アンリミテッド・エレクトリカル・ジャニマン)
Contractorの下でのみ、住宅、商工業施設問わずあらゆるフィールドで働くことができます。
- Residential Electrical Contractor(レジデンシャル・エレクトリカル・コントラクター)
- Residential Electrical Journeyman(レジデンシャル・エレクトリカル・ジャニマン)
どちらも1戸から2戸までの住宅家屋のみで電気工事を行うことができます。
求人ではUnlimitedライセンスを求められることが圧倒的に多いです。
Contractorは州によって定義が異なり、Journeymanの上がMaster Electrician(マスター・エレクトリシャン)という州もあります。そういった州では、 Master Electricianが起業する際に条件を満たし試験を経て発行されるライセンスがContractorとなります。
また、オクラホマ州ではContractorライセンスの権利を行使・不行使のどちらかに設定します。
起業する場合や個人で仕事を請け負う場合は保証金と賠償保険の証書を提出して「行使」とし、会社に所属して働く等の「不行使」の場合はJourneymanと同様の扱いになります。
アメリカで他州に引っ越したら電気工事士ライセンスは無効?
先に述べたように、Electricianのライセンスは州が発行するものです。
たとえばオクラホマ州でライセンスを取った数年後、オレゴン州に引っ越したとします。そこでElectrical Journeymanとして働くには、新たに試験を受けてオレゴン州が発行するライセンスを取得することが必要となります。
そこで、州によっては他州と相互主義の協定を結び、書類の提出だけでライセンスを発行してくれるようになっています。
オクラホマ州は10州と協定
オクラホマ州では、アラスカ、アーカンソー、コロラド、アイダホ、アイオワ、モンタナ、ネブラスカ、サウスダコタ、テキサス、ワイオミングの10州と協定を結んでいます(2018年8月現在)。
そのため、オクラホマ州内で出されていても勤務地がアラスカやコロラドといった求人広告を目にすることも多いです。
ただ、このようなライセンスの相互主義協定を他州と結んでいない州もあります。以下のサイトで各州の規定が確認できます(情報がアップデートされていない可能性もあり)。
アメリカの電気工事士の受験資格
Unlimited Electrical Journeymanの受験資格
まず取得するのがJourneymanのライセンスです。
オクラホマ州の場合、Unlimited Electrical Journeymanの受験資格は
- ライセンスを持つ人の下でApprentice(アプレンティス/見習い)としての実務経験8,000時間(うち4,000時間は商工業関連施設でのものであること)
- 通称NECと呼ばれるNational Electrical Code(電気設備技術基準)、電気理論等の授業の履修2,000時間
の経験を有する者となっています。ちなみに、実務経験8,000時間に達するまでにはおよそ4年かかる人が多いです。
Unlimited Electrical Contractorの受験資格
- 実務経験12,000時間(うち6,000時間は商工業関連施設でのものであること)
- 4,000時間のUnlimited Electrical Journeymanとしての実務経験の証明書
- 通称NECと呼ばれるNational Electrical Code(電気設備技術基準)、電気理論等の授業の履修2,000時間
要するに、Journeymanライセンスを取ってから4,000時間の実務経験を得ればContractorを受験できることになります。
アメリカの電気工事士受験資格を得るまでの道
受験資格を得るには2通りの方法があります。
- 専門学校や大学でElectricianプログラムを受講し、後に電気工事会社等でApprentice(アプレンティス/見習い)として働く
- 地域の組織・団体のApprenticeship(アプレンティスシップ)プログラムを利用する(大体4〜5年間。年数は地域によって異なる)
私の夫はInternational Brotherhood of Electrical Workers(IBEW)というElectrician組合が提供している5年間のプログラムを利用しました。
同様のApprenticeshipプログラムを提供している組織には、Independent Electrical Contractors, Inc.(IEC) という電気工事事業者のものもありますが、IBEWを選んだ理由はお給料をもらいながらトレーニングや授業が受けられるという利点があったことです。
他にもメリットとして、授業料が無料(教科書代は自己負担)、業界平均より高いお給料からスタートし年毎の昇給が約束されている、良い条件の健康保険が付いているといったことが挙げられます。
IBEWのプログラムを利用する場合
IBEW Apprenticeshipプログラムに入るためには以下の条件が求められます。
- 18歳以上であること
- 高校卒業または同等以上の学歴があること
- 高校の代数の授業を1年以上履修し合格点をもらっていること、または高校に代わる機関や指定のオンラインスクールで代数コースを履修し合格点をもらっていること、並びにその成績証明書が出せること
- 適性検査(読解力、基礎的な数学)に合格すること
- 運転免許を持っていること
- フルタイムで働けること
Apprenticeshipプログラムに入ることが認められると、IBEWが提携している企業に派遣され働くことになります。
オクラホマ州では、Apprenticeとして働き始める際にはConstruction Industries Board(コンストラクション・インダストリーズ・ボード/建設業委員会)にApprentice登録が必要となります。登録申請料は25ドルです(約2,800円、2018年8月現在)。
この手続きは州によって特に必要とされていないところもあります。
指導係の下で働き仕事後は講義
Apprenticeはライセンス保持者の下で仕事をすることが義務づけられており、必ず一人のJourneymanが指導係として付きます。
その指導係のJourneymanは、Apprenticeの就業態度や仕事の出来などを定期的に評価し、Apprenticeshipプログラムの責任者に報告します。
National Electrical Code(電気設備技術基準)や電気理論等の履修については、私の夫は週に2日、仕事を終えた夕方からIBEW内にある施設で3時間の授業を受けていました。
宿題や定期テストもあり、規定の点数が取れなければ落第となるためよく勉強していました。
こうして受験資格を得てJourneymanライセンスを取得し、その後もJourneymanとしてIBEWで働き続け、規定の時間数を得てContractorのライセンスを取ったのです。
アメリカの電気工事士ライセンス取得のための試験
受験日までの流れ
オクラホマ州で試験を受けるには、Construction Industries Boardに書類とライセンス申請料を添えて受験申請します(申請料:Journeymanは75ドル〈約8,500円〉、Contractorは330ドル〈約37,300円〉)。
Construction Industries Boardでの受験資格の確認後、PSIという試験実施業者から試験の日時や会場等の連絡が届きます。PSIの試験料として別途100ドル(約11,300円)かかります。
※金額はいずれも2018年8月現在
出題頻度が高いものは要暗記
試験は会場のコンピューターを使って行われます。実技試験はありません。どちらのライセンスも100問の4択問題で時間は4時間、75%以上の正解で合格となります。
内容としては、電荷計算などの計算問題(計算機使用可)、指定された状況に応じた使用電線の番数やパイプを地中に埋める際の深さ等、National Electrical Codeに基づいた問題が出題されます。
試験中はNational Electrical Codeの本の閲覧が認められていますが、夫曰く「本で調べていたらとてもとても時間が足りない!よく出題される箇所は暗記が必要」ということです。
まとめ~一生使えて重宝される
ライセンスが取れるまでに時間はかかりますが、取ってしまえば一生ものです!
修理や建物の改装などで電気工事が必要になっても、アメリカではあらゆる面で職人さんのルーズさが気になるもの。そんな時、意思の疎通がしっかりできる几帳面な日本人のElectricianがいたら、特に日本人が多くいる地域では重宝されること間違いなしです。
なお、各州で規定が微妙に違っているところもあります。ご興味を持たれた方はお住まいの州でご確認くださいね。
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