海外で働きたいと思ったとき、日本語教師は有力な選択肢の一つになります。滞在国がお隣の韓国であってもそれは同じ。最初から日本語教師を目指して韓国へ渡る人もいれば、現地でできる仕事として初めて日本語教師を意識する人もいるでしょう。
今回は、韓国で約20年前から日本語教師をしているSatokoさんに直接お話を伺うことができました。日本語教師になるための方法やノウハウにも触れながら、彼女がどのように日本語教師になったのかや、韓国でのリアルな日本語教師生活などを中心にご紹介していきます。
Satokoさんのプロフィール
東京都内の大学で朝鮮語を専攻。日本語教師養成講座を経て約20年前、韓国忠清北道清州市の日本語学院に日本語教師として就職。
その後、韓国人男性と結婚し、現在も清州市の文化センターで日本語教師として働いています。
韓国で日本語教師になった経緯
Satokoさんが韓国に惹かれたきっかけ
高校時代に韓国に修学旅行に行った経験が、まず韓国に惹かれたきっかけだったとのこと。
旅行前に少しハングルを勉強していったSatokoさんは、韓国ではパズルを解くようにハングルを読んだり、ホテルや食堂の従業員さんと韓国語で挨拶したりするのがとても面白かったそうです。
姉妹校の女の子たちが韓国語でしゃべっているのを見て「内容が分かったら面白いだろうなあ」と思ったり、当時人気があった(?)「人麻呂の暗号」という本の影響もあったりしたのだとか。
(この「人麻呂の暗号」という本は、万葉集が韓国語で読み解けるという内容だそうです。藤村由加著、新潮社)
すっかり韓国に魅せられたSatokoさんは、修学旅行から戻った後も、頭の中はずっと韓国でいっぱいでした。
韓国で暮らすために日本語教師を目指す
それから韓国にはまり続け、大学でも韓国語(朝鮮語)を専攻しました。4年目には大学を休学し、ソウルに語学留学を果たします。
そのとき知り合った日本語教師の女性に、「韓国で日本人女性がひとりで暮らしていくには日本語教師しかない」と言われたSatokoさん。そこから本格的に日本語教師の勉強を始めました。
他の要因として、その後の就職活動でなかなか思ったような企業に出会えなかったこともあるということです。
日本語教師養成講座に通った後、韓国で就職
日本語教師になる方法はいくつかあります。それについては後ほど簡単にご紹介しますが、彼女の場合は日本語教師養成講座に1年半通ったそうです。
そして、 養成講座に通っている間に日本語教師検定を受け、見事に合格。知り合いの紹介で、清州にある日本語学院で講師をすることになりました。
日本語教師とは何か?
そもそも日本語教師とは、日本語を母語としない人へ日本語を教える職業です。1990年代に放映されていたテレビドラマ「ドク」のイメージが強い人も多いのではないかと思います。
解散した元スマップの香取慎吾さんがベトナム人留学生役を、女優の安田成美さんが日本語教師役を演じていました。このドラマにより、日本語教師という職業があることを初めて知った方も多いかもしれません。
日本語教師になるには
「教師」という名がついてはいるものの、 実は日本語教師には、公私立の小中学校・高校の教師のように教員免許が与えられるわけではありません。
ただ、 日本国内で日本語教師として働きたい場合は定められた条件を満たす必要があります。その条件は以下の3つのうちいずれかです。
- 4年制大学で日本語教育に関する専攻を修了すること
- 財団法人日本国際教育支援協会が実施する「日本語教育能力検定試験」に合格すること
- 4年制大学を卒業し、なおかつ日本語教師養成講座において420時間以上の教育を受けること
※参考:文化庁「日本語教員養成研修の届出について」
しかし海外、中でも地方都市では、また事情が異なってきます。韓国で言えば、地方都市での求人の場合は資格や上記の条件などは特に必要ないことも多いです。4大卒であれば問題なく就職できる場合もあります。
韓国で日本語教師として働き始めたころの待遇と生活
契約形態・給料
最初の契約形態についてお尋ねすると、びっくり!なんと、Satokoさんは「契約形態……というか、契約書なんてものなかったんですけど!」と言います。
約20年前の話だそうですが、今はどうなのでしょうか……。おそらく、今もそう大差ないのではないかと筆者は感じます。
気になるお給料は、
- 1日5時間・週3日(1クラス)で66万ウォン(約6万6千円)/月
- 1日5時間・週6日(2クラス)で120万ウォン(約12万円)/月
だったそうです。
このお給料についてSatokoさんは「当時、120万ウォンというのは大卒初任給より高かったような気がします。大企業で働いている夫の当時の給料より、時給は高かったです」。
そのころの生活については「確か1か月80万ウォン(約8万円)くらいで暮らしていたと思います。特に節約などはしていませんでした。贅沢はしないけど、お昼はほとんど外食でした」ということです。
韓国で日本語教師として働く1日のスケジュール
仕事を始めたころの生活について伺うと「なかなかハードでした……」との答えが返ってきました。一体どんな1日を過ごしていたのでしょうか。
1日のスケジュール
朝
- 5:00過ぎ:起床
- 6:40~:授業1時間目
(いったん帰宅し、朝食と家事を済ませる)
- 10:40~:授業2時間目
(ここでしばらく空く)
夕方
- 18:20~:授業3、4、5時間目
- 21:40~:授業終了&片付け
- 22:00過ぎ:帰宅&シャワー
- 23:00:就寝
使う暇がないため、少額の給料でもお金が貯まってしまう
Satokoさんは、「朝が早いため夜更しはできず、昼間に翌日の授業の準備をしていた」とのこと。韓国では学生に限らず、会社員でも外国語を学ぶ方は多いようですが、出勤中はもちろん授業には出られません。
そのため、受講生は出勤前あるいは退勤後の時間に集中してしまいがちです。そうすると、教師も日中は時間が空いてしまうことになります。
日中に時間が空くといっても、その間のんびりショッピングなんて暇はなかったそうで、「大した額でもない給料でも順調にお金が貯まってしまう」生活だったといいます。
日本語学院の不誠実な対応
勝手に貯金ができてしまう生活とはいえ、厳しい環境であることに変わりはありませんでした。
Satokoさんによると「その大した額でない給料も、一時期ちゃんと払われないことがあった」そうです。驚くべきことですが、韓国では珍しくないことだと、当時の彼女は周りから聞いていたのだとか。
驚くような状況はまだあります。講師1人につきアパート一部屋のはずが、2人でワンルームに住まわされたこともありました。
そのようなことが重なり、語学院との摩擦で辞めていく先生も多かったといいます。
彼女の場合は「通帳の残高が100万ウォン(約10万円)を切ったら日本に帰ろう」と決めていましたが、その前に日本語学院の院長が替わり、未払いの給料が無事全部振り込まれたとのこと。本当に良かったです……。
韓国における日本語教育の現状
残念なことに、韓国内での日本語学習者は減少しています。日本語学習者の総数自体は増加しているのですが、以前は中国や韓国での学習者が多かったのが、今はベトナムやネパールなどで勉強する人が増えてきており、中国や韓国での学習者は減っているのです。
Satokoさんも言います。
「日本語を教えるところは以前より少なくなりました。20年前は清州に4か所くらいあった日本語学院が、今は1つあるかどうか、という感じです」
「大学などの生涯学習プログラムなどではありますけどね。日本語の重要度が下がっている印象は確かにあります」
韓国での風潮は、「今は日本語より中国語」だそうです。
日本語教師として生徒の成長を支えられることが喜び
雇い主である学校の驚くべき対応や、韓国での日本語学習者が減少傾向にある現状など、韓国で日本語教師を目指している人にはあまり喜ばしくないこともありますが、日本語教師としてのやりがいはどんなところにあるのでしょうか。
Satokoさんはこう話します。
「高校の第二外国語の場合は生徒によってまちまちですが、学院で勉強している生徒さんたちは、それぞれ勉強する理由があるので皆一生懸命です」
「1年くらい教えていると、生徒さんの成長が見えてくるので楽しいですね。もちろん、個人差はありますが」
「何より『試験に受かった』とか、『日本に旅行に行って話せた』とか、『会社に来ている日本人の駐在員と話ができた』とかいう報告を聞くと、とても励みになります」
韓国で日本語教師を目指すために必要なこと
最後にSatokoさんに、韓国で日本語教師を目指す方へ向けてアドバイスをお願いしました。
「韓国にいると、イラッとすることが数多くあります。韓国で日本語教師をしようと思っている方は、日本語教育の知識よりも、そんな『イラッ』で神経をすり減らさないおおらかさが必要だと思います」
きっぱりと彼女は言います。
「韓国のことは広く浅く知っておいて、詳しいことは生徒に聞く。教師が教えるのは日本のことですから、日本について勉強しておきましょう」
まとめ~厳しさの中にやりがいがある
一見、魅力的な日本語教師という仕事ですが、想像以上にハードですね。
残念ながら、韓国では日本語学習者も減っているようですが、Satokoさんは今も日本語教師を続けています。厳しい状況であっても、生徒の成長を支え喜びを共有できるという日本語教師のやりがいがあることに変わりはありません。
海外に滞在する手段として安易にできる仕事ではありませんが、韓国で日本語教師として働きたいと思っている方にとって、この記事が少しでも参考になることを願っています。
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