アメリカで留学生活を始めた当初、日本での安心した暮らしとは違い、戸惑うことがたくさんありました。慣れない生活の中で、自分の知識と経験だけをもとに判断し行動してきました。
自由であることを楽しむ余裕はなく、判断を誤った時の代償が怖くて、どんなことにも怯えている毎日。
そんな中で起こったある小さな出来事をきっかけに、リラックスして過ごすための方法についていろいろなことを考えました。今日は、その時のことを書いてみたいと思います。
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海外では自分の中のアラーム(警告音)を無視しない
カルチャーショックで片付けられないこともある
海外で生活していると、それまで経験しなかった場面に遭遇することが多々あります。それを「カルチャーショック」の一言で括ってしまうことに、私は抵抗があります。
確かに、文化の違いを否定して相手を受け入れないのなら来た意味がありませんが、自分の中でアラーム(警告音)が発生しているのを感じたら違和感があるということ。
まだ自分のカルチャーショックの許容範囲ではないということだと思います。
受け入れられるまで無理しない
私はそんな時には無理をせず、受け入れないことを決めました。たとえ危険なことではないにしても、自分にとっては大きなストレスになるからです。
「私にはまだ早い」と自分に言い聞かせ、いつかカルチャーショックの許容範囲に入った時に受け入れればいいのだと思います。その時まで慌てず、自分のペースは崩さないことを心がけるようにしています。
私がこんな風に考えるようになったのは、ホームステイ先でのある出来事がきっかけでした。
海外では普段と違う状況に警戒しよう
滞在先家庭に入り浸る少年たち
アメリカ生活を始めたばかりのある日の帰宅前、ホストマザーから仕事で帰りが遅くなるという旨のメールが届きました。
私のホストファミリーはお母さんと10代の息子さんで、ブラジルから来ている女性のハウスメイト、私の4人で一緒に生活していました。
20時過ぎに帰宅すると、息子さんが友達を招いてリビングで遊んでいます。彼の友人たちは、ロングヘアーやドレッドヘアーといった、日本で育った私には刺激の強い姿。
普段、ホストファミリーは2階にあるシャワールームのトイレを使い、1階のシャワールームはホームステイをしている私たちしか使わないようにしてくれていたのですが、その日、彼らは1階のシャワールームを使っていたのです。
居づらくなり一人で外出
私の部屋は、1階のシャワールームとリビングルームの真ん中にあり、彼らが使用することで、私はシャワーもトイレも我慢しなければならない状況になりました。
また、彼らの大声での会話や笑い声は、ほとんど英語のわからない私にとってはとても恐怖でした。
ハウスメイトに一緒に外出しようと誘いましたが、彼女はその状況が平気な様子で、外出を断られます。そこで、私は一人でバスに乗り、ホストマザーの帰る時刻まで時間を潰しました。
一人で外出することも同じくらいに危険な行為ですが、公共の乗り物が一番安全だと思った結果の判断です。
この家では自分の常識が通じない
その後、ホストマザーが帰ると言っていた時刻を30分経過した23時30分に帰宅。しかし、家の中に彼女の姿はなく、少年たちもまだリビングで騒いでいます。
これ以上外出する方が危険なため、私は自分の部屋の扉の前に重い段ボールを置き、その前で毛布にくるまり夜を過ごしました。
結局、ホストマザーは日付が変わっても帰宅せず、深夜に帰ってきたようです。そして、息子さんとその友達は翌日の昼になってもリビングで過ごしていました。
ホストマザーも彼らが泊まることを知っていた様子で、「この家庭ではこれは当たり前なんだ」と気づいたとき、私は今後のホームステイに大きな不安とストレスを感じたのです。
海外では心配しすぎは悪くない
バスに揺られている間も、冷たい床に毛布でくるまって寝ている間も、私の頭にはずっと「大袈裟に考えすぎかな。親切にしてくれているホストファミリーに失礼かな」という考えが巡っていました。
そんな時、アメリカへ来るまでの経緯を思い出したのです。留学の申し込みから、ビザ申請、荷物の準備、出国まで、あらゆる場面で想定外のことが起こっていました。
最悪の事態を避けることが優先
海外で生活するということは、良くも悪くも「思いもよらない何か」に遭遇することだと思います。
もしもホストファミリーに私の不安を理解してもらえなければ、それは彼らが日本人に対するカルチャーショックを受け入れられなかったというようにも考えられます。
そして私は、優先すべきは「最悪の事態を回避する」ことであって、体裁ではないという結論に至りました。
翌日、語学学校のスタッフに相談し、ホームステイ先を変更することにしました。
海外ではコストパフォーマンスが妥当かどうかも判断基準
ホームステイ先を替える決断をするのに、危険回避とは別の判断材料がありました。それがコストパフォーマンスです。
限られた時間と費用で最善の環境を
私は、ここに至るまでに失ったもの、背負ったリスク、支払った費用について考えました。日本で7年勤めた会社を辞め、次の仕事が見つかるかどうかわからない不安を抱えながらもアメリカへ来ることを決めたのでした。
二度とできないかもしれない留学の機会にやりたいことはたくさんあります。けれど、限られた時間と費用では全てをかなえることは不可能です。
ホームステイ先を替える前の私が置かれた環境は、英語の勉強に励むことにも、海外生活を通して自身を成長させることにも向いていないと感じました。
つまり、自分が背負ったリスクとコストに環境が見合わないと判断したことで、私はホームステイ先を変更することを決めたのでした。
海外では「No」と言えないなら逃げることも大切
英語での自己主張はハードルが高い
この件でホームステイ先を変更するまでに至った最大の原因は、私のコミュニケーション能力と英語スキルが未熟すぎたことだと思います。
その日もホストファミリーの息子さんが何かを説明してくれていましたが、ほとんど理解できないままその場から離れていました。
夜中に騒がないでほしい、私たちのシャワールームは使わないでほしい、そのようにはっきりと言えば解決したかもしれません。しかし、日本でも断ることが苦手だった私が英語で主張するには力不足でした。
何事にも準備期間が必要
それまで私は、日本人が苦手な「断る」力を身につけることが留学の醍醐味のように思っていましたが、何事にも準備期間というものはあるのだと気づきました。
力不足を感じたら、自分で解決することをあきらめて逃げることは悪くないと思います。海外生活で磨くべき力は、断る力と逃げ足の速さではないでしょうか。
海外ではとことん自分と会話してみる
困った時に、誰かに助けを求めることはもちろん大事だと思います。しかし、最終的な決断は自分で下さなくてはなりません。
人任せにして、誰かのアドバイス通りに行った結果が悪かったとしても、責任を取ってくれる人はいないのです。
自分と向き合って分かった最善の答え
私も最初のうちは、「こうしたらどう思われるだろう」「こんなことしたら迷惑をかけるかもしれない」と他人の顔色ばかりを気にしていました。
しかし、考え方のベクトルを変え、とことん自分の考えと向き合うようにしてみました。
「自分はどうしたいのか」
「自分はどうしたくないのか」
一つの質問に答えると、次の質問が浮かんできます。答えては問う、答えては問うを繰り返していると、それまでは考えてもみなかったようなたくさんの選択肢が見えてきました。
納得できる答えが見つかるまで自分に質問することで、自分にとって最善の答えが見つかったのだと思います。
解決策が見つかれば客観的に現状が見える
次の滞在先を決めた後、それまでのホストファミリーと話す機会が増え、本当に良い人たちだと気づきました。疑っていたことを申し訳なく思います。
言葉が通じないため、ホームステイ先の自室にこもり、スマートフォンをいじって過ごしていることが多かったことを思い出しました。
もっと勇気を持って溶け込む努力をしていれば、違う結果になったかもしれないと後悔しました。
「言葉が通じなくて怖い思いをしたな」「夜中に友達にメールして心配かけたな」……と、留学を終えるころには笑い話にできることを祈ります。
まとめ~日本を出たからこそ気づけた
こうして書いてみるととても些細な出来事で、私が気づいたことも当たり前のことばかりでしょう。しかし、アメリカに来なければ気づけなかったのです。
海外にいるという緊張感、ここでは外国人だという自覚、守ってくれる人がいないという不安が、私に大切なことを教えてくれました。いろいろなことを考える貴重な体験だったと思います。
なお、私はシカゴの日本領事館のメールマガジンに登録しています。シカゴ市内で事件などがあった時に、詳しい場所や内容をメールで教えてくれます。
日本語で正確な情報を手に入れることも、危険から身を守る有効な方法だと思います。
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