2017年2月には若者の失業率が12%を超えるなど、深刻な就職氷河期を迎えている韓国。当然、一般企業での外国人の求人は多くはありません。
一方で、韓国は高い知識や技術を持った人材を誘致するための政策に力を入れています。特に国立や財団法人の研究所では、理工系の博士以上の高い専門知識を持つ外国人を積極的に受け入れています。
私は3年間、釜山にある気象研究所APEC Climate Center(APCC)で働いていました。その経験を交えながら、韓国の給料事情を紹介します。
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韓国の民間企業における給料の実情
はじめに、韓国の民間企業での賃金支払い状況を簡単に説明します。
財閥系企業と中小企業の賃金格差は3~4倍
韓国の労働基準法で、最低賃金は時給で6470ウォン(約650円)となっています(2017年)。
ただし、サムスンやロッテに代表されるいわゆる財閥系企業とその他の中小企業とでは、賃金格差が3~4倍もあると報告されています。
例えば、サムスンで働く研究職の年収は約900万~1200万円です。
一方で、実際に私が4年ほどアルバイトをした韓国の小さな貿易会社では、大卒の年俸が1800万ウォン(約180万円)ほどでした。ここから税金や社会保険料を引かれてしまうと、一人で暮らしていくのがやっとという手取りです。
大企業に入るための熾烈な争い
そのため韓国では、財閥系とまではいかなくても大企業に入れなければ、結婚も子供も家もあきらめなければいけないと言われています。
そこで、財閥系企業に入るもっとも確実なルートとしての一流大学入学を目指し、幼少期からしのぎを削った競争がはじまるわけです。
賃金未払い額は日本の10倍
韓国は日本から気軽に行き来でき、また文化的にも似ている面が多いので、歴史的な問題などを除けば日本人にとって働きやすい国です。ですが、近くて遠い国とも言われるように、韓国で働いていると日本では考えられないようなトラブルに巻き込まれることがあります。
もっとも代表的で深刻なトラブルが賃金の未払いです。2016年12月のハンギョレ新聞の記事によると、韓国の賃金未払いの金額は日本の10倍にものぼるそうです。
私がアルバイトをしていた先述の貿易会社でも、給料の支払いが遅延したり減額されたりというトラブルはしょっちゅうでした。ないものは払えない、と当然のように考えている経営者が多く、立場の弱い従業員はそれに従うしかないと思っているのが実情です。
韓国で働くなら国立などの研究機関が安心
慣れない海外で、いきなり給料が予定通りもらえないなどというのは絶対に避けたいトラブルですよね。
ご紹介したような状況の韓国でも、安心して働けるのが国立や財団法人などの研究機関です。財源がしっかりしているため、賃金未払いの心配がないのはもちろんのこと、外国人へのサポートも充実しているのが魅力です。
もちろん、修士以上の学歴や、該当する分野の専門知識などが必要になります。また、会議や文書は英語となる場合がほとんどなので、ある程度以上の英語ができることも前提です。
専門分野を問わない募集も
このように書いてしまうと、ちょっとハードルが高く感じられるかもしれません。ですが、どのような研究機関でもIT関連スタッフの1人や2人はいるもの。
研究機関のデータベースの管理や、アプリケーション開発のスタッフなどは、専門がその機関の研究分野と異なっていても募集があることがあります。
また、私の場合、英語は日常会話レベルでしたが、韓国語ができるため仕事で困ることはあまりありませんでした。
韓国の研究機関で働くといくらもらえる?
冒頭で述べた通り、私は釜山にある気象研究所APEC Climate Center(APCC)で働いていました。APCCは、2005年に釜山で行われたAPECの首脳会議を記念して作られた財団法人です。
ウェブ・アプリケーション開発を担当し、3年間、契約で働きました。1年ごとに研究計画を提出し、契約が更新され、給与は年俸制です。
生活にはやや厳しい修士卒の年収
修士の学位を持つ私の給与ですが、平の研究員として年俸2000万ウォン(約200万円)でした。
博士以上の研究員の年俸も能力・役職に応じて変動します。研究主任で年俸7000万ウォン(約700万円)ほどとなっています。日本に比べるとかなり安いと感じますが、安心という付加価値がついての金額です。
私の場合は韓国人の夫の収入がメインの生活だったので、2000万ウォンの年俸で生活に困ることはありませんでした。
ただ、修士卒の若いスタッフはほとんどが実家暮らしをしていたのを見ると、やはりこの年俸で自立した生活は少し厳しいのかなと思います。博士号を取ってから結婚するというのが研究所のスタンダードでした。
支給は銀行振込
なお、給与の支払いは銀行口座への振込でした。指定された銀行に口座を作る必要があります。
民間企業の場合も、給料は基本的に会社が指定する銀行へ振り込まれます。
韓国の研究機関で働くとボーナスや各種手当はある?
ボーナス
年末にインセンティブとして給与の1ヶ月分程の金額をもらいました。
残業手当
韓国の労働基準法では、残業手当として基本給の50%以上を支払う必要があると定められています。
私はAPCCで全く残業しなかったのであまり意識はしませんでしたが、みなさんきちんともらえていたと思います。
ただし、民間企業の場合は、いわゆるサービス残業が当たり前となっているのが現状です。
その他手当
APCCには社員食堂がなかったため、食事手当として毎月10枚程、近くの食堂のランチクーポンが配られていました。1枚5000ウォン(約500円)相当です。一人暮らしや自炊している人にはありがたい手当だったと思います。
一方で、通勤手当や住宅手当はありませんでした。
韓国の給料から天引きされる税金・社会保険料
所得税
日本と同様に所得に応じて課税され、源泉徴収されます。2017年時点での年間所得に対する税率は下記の通りです。
- 1200万ウォン(約120万円)以下:6%
- 4600万ウォン(約460万円)以下:15%
- 8800万ウォン(約880円)以下:24%
- 1億5000万ウォン(約1500万円)以下:35%
- 5億ウォン(約5000万円)以下:38%
- 5億ウォン(約5000万円)超:40%
社会保険料
所得税以外にも、給料から天引きされる社会保険料があります。4大保険(サデボホム)と呼ばれる以下の4つです。
- 国民年金
- 国民健康保険
- 雇用保険
- 労災保険
労災保険以外は、ビザの種類や滞在期間などによって加入義務が異なります。私の場合はすべて加入し、給料の8%程が引かれていました。
韓国では会社から社員にお歳暮やお中元が!
韓国では、日本のお歳暮やお中元にあたる贈り物をする文化があります。
お正月やお盆は旧暦に従うので、お正月は1月から2月の間、お盆は9月から10月の間くらいにあります。贈り物はその2週間程前から始まります。
そして、韓国では会社から社員にお歳暮やお中元の贈り物が渡されます。
APCCの場合、金額は3万~5万ウォン(約3000~5000円)程度のもので、海苔や牛肉セット、缶詰セットなどの中から好きなものを選ぶことができました。
まとめ~賃金トラブルを避けるためにも職場選びは慎重に
韓国では、賃金未払いなど民間の中小企業での給料に関する問題は山積みですが、税法改正や労働基準法改正など法的な面では年々制度が整ってきています。
ただ、まだまだ雇い主の意識が追いついていないのが現状です。
韓国で働いてみようと考えているのであれば、賃金をめぐるトラブルを避けるためにも、職場は慎重に選ぶことをおすすめします。
研究機関の求人情報は、各機関のホームページなどで見ることができます。ほとんどの研究機関が英語のホームページを持っているので、一度チェックしてみてください。
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