イギリスに住むと、もちろん税金を納めなくてはいけません。税金を払うことはイギリスに貢献すること。貢献するのなら恩恵も得たいものですよね。
でも、日本であっても複雑なお金のこと、外国の制度となるとパニックになってしまいそうです。消費税は?所得税は?年金はどうなってるの?分かりにくい税金や社会保障のことを整理してまとめました。
イギリスに長期滞在予定の方も、いずれ日本に帰りたいとお考えの方にも、お役に立ちます!
※この記事の内容は2017年5月現在のものです(1ポンド=約145円)。税金や年金については制度が改正されることがあるので、最新の情報をご確認ください。
イギリスの消費税はどのぐらい?
イギリスでは消費税ではなくVATと呼ばれます。VATはValue-Added Tax、つまり付加価値税の略称です。イギリスはこのVATがなんと20%! びっくりしますよね。
ただ、これは基本の税率で、他に税率5%、0%、免税と4種類に分かれています。税率0%と免税は売り手側の税務処理に関係するものなので、買い手側の私たちには違いはありません。
税率ごとの商品・サービス例
では、どんなものにいくらの税率が適用されるのでしょうか。
国が運営するウェブサイト「GOV.UK」(英語)のVAT rates on different goods and services(商品サービスごとのVAT税率の違い)から、少しピックアップしてみます。
税率0%もしくは免税
- 嗜好品を除く食料品(野菜、果物、パンなど)
- 動物のえさ
- 宝くじ(イギリスではLottery)
- 博物館や美術館の入館料
- チャリティーが目的の活動や商品
- 障害者関連施設や商品
- 本や雑誌
- 子どもの衣類
- カフェの持ち帰りフードメニュー
税率5%
- 禁煙を目的としたニコチンパッチ
- 妊婦さんや女性衛生品
- チャリティー関連の光熱費
- 高齢者向け住宅の電気、水道、ガス設備
税率20%
- 菓子
- カフェのイートインメニュー
- ピザやカレーなどの出前
- アルコール
生活に不可欠な食料は無税、嗜好品は20%
まとめると、老人、障がい者、赤ちゃんなど要介助者関連の施設や設備には税金がかかりません。または、かかっても減税の5%。そして、生活に不可欠な生鮮食料は無税。でも、体に悪いお酒やお菓子類は20%。
ただ、店頭の価格は全て税込で書かれているので、普段はあまり税率を感じません。「野菜や果物は安いな」という印象はあります。これは税率のおかげなんですね。また、かわいい子ども服は日本より絶対安いと感じます。これも税率0%の恩恵です。
カフェで食事をすると、Take away(持ち帰り)とStay in(店内利用)では税率が違います。持ち帰りの方が安いのです。最初、私はそれに驚きました。
帰国前のVAT払い戻し
イギリス滞在を終えて日本に帰るときは、VATの払い戻し請求をしましょう。12カ月以上EUを離れることが証明できればVATが取り戻せます。払い戻しには条件があり、ネットで購入したものやイギリスですでに使ったものは含まれませんが、20%戻るのは大きいです。
日本に帰ることが決まってお土産を買ったら、その場で「VAT407」という書類を受け取ってください。書類を受け取るには、イギリスを離れて12カ月戻ってこないことを証明しなければいけないので、航空券などを見せるといいです。
空港では税関かTravelexで手続き
そしてイギリスから飛行機に乗るとき、空港の税関かTravelex(トラベレックス)へ行きます。Travelexは外貨両替専門店です。そこで、VAT407、対象品、レシートを提出します。問題がなければ払い戻しの手続きが行われます。
- Travelex:https://www.travelex.co.uk/
高価な品物は手荷物チェックを先に受けなければならないのでチェックイン後、そうでないものはチェックインの前に提示を済ませて、手荷物と一緒にカウンターで預けることができます。
なお、販売店によってはVATの払い戻しができないところもあります。購入するときに必ず確認した方が無難ですね。
イギリスの所得税と年金、どのくらい給料から引かれるの?
収入によって異なる所得税率
日本と同じように所得税は毎月の給料から天引きされます。税率は以下の通りです。
- 年収1万1500ポンド以下(約166万7500円)は0%
- 年収1万1501ポンドから4万5000ポンド(約652万5000円)は20%
- 年収4万5001ポンドから15万ポンド(約2175万円)は40%
- それ以上は45%
年収が660万円近く、またはそれ以上になると、半分近い所得税が引かれてしまいます。税金の算出はTax year(タックスイヤー)と呼ばれる1年について行われ、4月6日から翌年4月5日で計算します。
社会保険料も人によりさまざま
給料から引かれるのは所得税だけではありません。別に引かれるのはNational Insuarance Contributions(ナショナル・インシュアランス・コントリビューション)。これは年金や失業手当に充てられます。
徴収される割合は0%から12%で、給料や仕事の内容、年齢によって細かく分かれます。ただ、ほとんどは2%に分類されます。
イギリスの確定申告、自分でやらないといけないの?
先述した通り、イギリスでは日本と同じく毎月の給料から税金と社会保険料が天引きされます。そのため、基本的に確定申告は必要ありません。
ただ、「税金を払いすぎている」「免税対象の出費(出張にかかる費用や自分で支払ったユニフォーム代など)がある」といった場合、または「個人事業者である」場合は確定申告します。
申告は税金算出期間であるTax year(タックスイヤー)後。4月5日以降にウェブサイトから手続きします。
イギリスの年金、日本の年金と二重に支払うの?
年金については社会保障協定が関係してきます。日本は世界16カ国(2019年10月時点で23カ国)と社会保障協定を締結しています(うち20カ国について発効)。イギリスは協定が発効済みの国に含まれます。
社会保障協定は、日本とイギリスなどの年金に二重に加入しないよう設けられた制度。イギリスでの勤務が5年以内なら、イギリスでの年金加入が免除され、その間は日本で年金加入を継続します。
それ以上滞在して就労する場合は、イギリスの年金に加入しなければなりません。日本で任意継続はできません。
しかしこの社会保障協定、日英間では「年金加入期間の通算」は適用されていません。つまり、イギリスで年金を支払った期間は、日本では年金に加入している期間として数えてくれないのです。
両国制度の最新情報を確認しよう
ただ、悲しまなくても大丈夫!2017年8月から日本の年金受給資格期間が25年から10年に短縮される(2017年8月1日から短縮されました)という朗報あり。日本で10年の加入期間があれば、日本の年金受給資格を得られます。詳しくは日本年金機構の案内をご覧ください。
そして、イギリスの年金制度も改正されています。2010年以降に年金受給年齢に達している場合、1年でも英国年金(National Insuarance contributions)を支払ったことがあれば、受給できます。
満期は30年なので、1年だけの加入の場合は満額の30分の1となりますが、たとえ少額でももらわない手はないですね。これは日本から請求して、日本の口座に振り込んでもらいます。
イギリスでたくさん払う税金、日本人は恩恵を受けられる?
払い続ける税金。払ったからには、恩恵を受けたいものです。日本人としてどんな恩恵があるのでしょうか。
イギリスに住んでいる間は、ビザの種類によって変わります。期限付きのビザでイギリスで仕事をしている場合は、Public Funds(公的資金)を受けることができません。これはビザ証にも明記されています。文言は「No recourse to public funds」(公的資金に頼らないこと)。
公的資金とは、失業手当、障がい者手当、住民税免除、子ども手当、年金受給などです。詳しくは政府の案内をご覧ください。
しかし、永住ビザを保有している場合は「No recourse to public funds」がビザには明記されません。つまり、イギリス国民と同じように補助が得られることになります。
イギリスの法人税
イギリスの法人税は従来20%でした。これは主要各国の中でとても低い率。しかし、2016年3月に時の財務大臣オズボーン氏が、この税率をさらに18%まで下げると発表。これは大きなニュースでした。狙いは外国からの企業をイギリスに呼び込むことです。
徐々に税率引き下げの方向
イギリスの法人税は、2017年から2019年は19%、2020年4月1日からは18%に引き下げられることになっていましたが、その後この18%をさらに17%まで引き下げるという変更がありました。そのため、現時点(2017年5月)で2020年4月1日以降は17%となっています。
これは、イギリスのEU離脱が決まった以降も同じ方針です。メイ首相(2017年5月現在)は法人税率を下げ、外国企業を取り込みたい意向です。日本の企業もさらにイギリスへ進出するのでしょうか?それによって日本人がイギリスで働くチャンスが増えるといいですね!
また、油田開発関係会社の法人税は30%となっています。
まとめ〜しっかり情報収集し自分の身は自分で守る
税金、年金、公的保障はとてもやっかいなこと。自分では勉強するのもなかなか面倒ですよね。私もこの記事を書くにあたって、改めてイギリスのいろいろな制度を見直すことができました。
その地で生活する限り、納税などはとても大切なことです。しかしVAT払い戻しやイギリスでの年金受給など、認められている権利を使って取り戻すことも可能です。
1ペンスでもお金は大事にしたいもの。この記事がみなさんのお役に立てたらうれしいです。
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