私は日本にある韓国の貿易機関で働いていました。外資系の企業や組織で働くことは、外国の環境に身を置くということです。勤務地は日本国内であっても、社内規則や働き方は日本の企業とは異なります。
その違いは企業によってさまざまですが、韓国の人々と一緒にうまく働くために、どんな違いがあるかを理解しておくことは大切です。
私の経験から、韓国と日本の企業、または韓国人と日本人の働き方の違いについてご紹介します。
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韓国ではスピード重視!とにかくまずやってみる
韓国と日本の働き方で一番違うところはスピードです。
日本では、何か新しいプロジェクトを始める場合、何度もミーティングを重ね、導入にあたって必要な経費やマンパワー、トラブル発生時の対処法、目標の数値設定や達成までのスケジュールなど、念には念を入れて慎重に進めようとします。
ところが韓国では、目指すべきゴールや目標があれば「まずはやってみる」。とにかく早くスタートさせることが重要だとします。
トラブルが発生したらその場で対処
もちろん、ある程度のリスク管理をしスケジュールを組みますが、たとえば準備段階で50%が整えば、あとは進行途中で何度も手を加えながら軌道修正すればいい、という考え方で仕事が進められます。
実際に韓国国内では、病院の建設中に経費が不足して何年もコンクリートむき出しのまま放置されていたり、プロジェクトを進めたものの人力が足りず急遽人員を募集したりすることもありました。
韓国では、100%完璧に準備するよりも、まずはやってみることが大切なのです。
韓国人はやりがいか給料かで悩まない
私が働いていた貿易機関は、日本にありながら、スタッフの中で日本人は私を含めて2人のみでした。
そんな環境で一緒に働く韓国人から意見を聞いたり、その働き方を見たりしていると、日本人の価値観との大きな違いに気づくことができます。それは、仕事に何を求めるかという点です。
日本人は仕事をする上で、「やりがい」「希望の仕事内容」「良好な人間関係」が大切だと考える人が多いのに対し、韓国では「賃金および福利厚生」「適切な勤務時間・休日」を重視する傾向が強いです。
生活の質が優先
日本人からは、たとえボランティアであっても「人の役に立ちたい」「喜ばれることが好き」という言葉をよく聞きますが、韓国ではそうしたことは二の次です。
そのような気持ちは持っていたとしても、まずは高い賃金と適切な勤務時間によって自分の生活を向上させたいと考える人が多いです。
もちろん人によって違いはありますが、「給料は安いけどやりがいはある」というように、「給料」と「やりがい」を天秤にかけることはあまりありません。
韓国の仕事の進め方はトップダウン式&個人主義
トップダウンで仕事が動くことの多い韓国では、上司からの指示があれば、本来すべき仕事を後回しにしてでもそれを優先します。いくら忙しくても、残業が多くなっても、まずは上層部からの仕事を完了させようとします。
また、チームで仕事をするというよりは、個人で担当業務をこなすスタイルが多い傾向にあります。
韓国企業の特徴の1つとして、入社して間もない新入社員であっても、何か1つ大きなプロジェクトを任せます。それについての知識がなくても、結果が失敗であっても構いません。
「まずはやってみる」、その考え方がここにも表れています。
韓国では人間関係でビジネスが成立
どの国であっても、「人間関係」はビジネスを成功させるために重要なものです。しかし、日本と韓国では、似ているようでどこか違う面を持っています。
韓国では、いまだに縁故採用があるように、人の紹介から派生してビジネスが拡大することが多いです。そのため、韓国人にとって人間関係は非常に重要なものと捉えられています。
遠い親戚から紹介してもらった人や、偶然出会った人であっても、何か関連する仕事があれば遠慮なくお願いすることもあります。
人とのつながりを作っておく
こうした環境で普段から心がけておくことは、自分から積極的に他人に関わることです。
日本では、休憩時間に1人でいる人を特に誰も気にしたりしませんが、韓国では「よくわからない人だな」と捉えられてしまいます。
1人になれる休憩時間であっても、自分から積極的に話しかけ、輪に入って人間関係を作っていく必要があります。それが次のビジネスにつながるからです。
韓国では会社に不満があればすぐに転職する
韓国では転職が珍しくありません。
今の会社よりもっと高い賃金で残業の少ない会社があれば、在籍1年未満であっても未練なくすぐに籍を移します。むしろ、転職を一度もしない人の方が「移り先がない」と見なされることもあるほどです。
韓国では、「いかに効率良く稼ぐか」が重視されるのです。
会社と従業員は対等
日本では、たとえ法に触れるようなことがあっても、従業員は会社に対してあまり異議を唱えることなく「雇ってもらっている以上はここで頑張る」と考えますが、韓国では違います。
会社と従業員は対等な立場にあり、会社が従業員に対して何か十分な環境を与えられなかった場合、従業員は「この会社は従業員を大切にしない会社だ」と、即座に仕事の場を移します。
いい意味での野心を持ちながら、常に次の新しいステージを見据えている人が多いです。
韓国の仕事文化1. 職場での呼称が複雑
韓国で働き始めて最初にカルチャーショックを受け、結局最後まで馴染むことができなかったのが呼称です。
上司は「部長様」「主任様」
韓国では、上司に対しての敬称は◯部長様(ブジャンニム)、◯主任様(ジュイムニム)と、役職に様まで付けます。◯には相手の姓が入ります。
例えば、キム・ウンジュ部長の場合は、キム部長様(キム・ジャンニム)となります。ただ、韓国にはキムさんがたくさんいるので、キム部長様が他にもいる場合は下の名前まで入れてキム・ウンジュ部長様と呼んだりもします。
ここまでは、私も普通に馴染むことができました。問題は、少し親しくなった人の呼び方です。
親しくなった年上に対する呼び方
韓国では職場に限らず、親しくなった年上の相手をお姉さん、お兄さん、と家族に対する呼び方で呼ぶようになります。
自分が女の場合は、お姉さん(オンニ)、お兄さん(オッパ)。自分が男の場合は、お姉さん(ヌナ)、お兄さん(ヒョン)となります。自分の性別によって相手の呼称が変わるのが特徴です。
例えば、キム・ウンジュ部長(女)と親しくなれば、私は女なのでウンジュ・オンニと呼ぶことになります。オンニの前には相手の下の名前を付けます。
逆に私よりも年下の人からは、私もオンニと呼ばれるようになります。
これが、韓国に住む多くの日本人がよく馴染めずにいる呼称の文化です。実の家族ではないのに、お姉さんと呼ばれたり、呼んだりするのには少し抵抗がありますよね?
親しくなった年下に対する呼び方
年下に対しては、あまり日本と変わりません。ニックネームや下の名前で呼んだりします。
呼称が決まっていない場合は「氏(シ)」
日本の「さん」に値する呼称もあります。氏(シ)です。キム・ウンジュさんの場合は、キム・ウンジュ・シと呼びます。「シ」の前はフルネームか、下の名前です。
役職のない人に対してや、あまり親しくなっていない年下に対してなど、特に呼称が決まっていない人に対して使われます。
ただ、韓国では10歳以上離れた年上の人に向かって「◯◯シ」と呼ぶのは少し失礼なようです。年齢が離れていて呼び方が分からない場合は「何と呼んだら良いですか?」と聞くと間違いがないでしょう。
親しい年配の人で特に役職がなければ、◯◯伯母さん(イモ)や◯◯伯父さん(サムチョン)など、家族の呼称をつけたりします。
韓国の仕事文化2. 社外でも身内に敬語
韓国にも日本と同じように敬語や丁寧語があります。会社では上司や年上の人に尊敬語を使うのはもちろん、親しくなってオンニなどと呼ぶようになった年上の人に対しても丁寧語を使った方がいいようです。
日本と使い方が違って注意しないといけないのは、外の人に向かっても身内に謙譲語を使わないということです。
目上の相手はどんな場面でも立てる
日本では、例え社長であっても外部の人には「うちの◯◯が申しております」のように謙譲語を使ってへりくだります。ところが、韓国で自分の会社の社長のことをこのように言おうものなら大変なことになります。
韓国では、キム部長のことを外の人に向かって言う場合は「キム部長様がおっしゃいました」のようにそのまま尊敬語で表現しないといけません。
韓国にも一応、謙譲語がありますが、数も少なくあまり意識することはありません。基本的には目上の相手には内外関係なく尊敬語を使っていれば問題ないということです。
韓国の仕事文化3. 電話は折り返さない
韓国では、社外から電話があり担当者が不在でも折り返し電話をかけたりはしません。つまり、用事がある方が何度でもかけ直さないといけないのです。
これは、私が韓国で働き始めて1年くらい経ってからやっと気づいたことです。
日本だったら、担当者が不在の場合は「戻ってきたら折り返しますのでお名前と連絡先を……」というのが電話のマナーの基本中の基本であるはず。
私は当然、韓国でも同じだと疑いもせず「折り返します」と言って連絡先を確かめ、本人のデスクにメモを残していました。
周りにメモを残す人はいなかった
でもなぜか、メモを貼られた人が不機嫌になることが何度かあったのです。かけ直してほしいと言われたの?と、腑に落ちない顔で確かめられることもありました。
何度もそんなことがあってからようやく、周りの人達が社外からの電話にも「◯◯は今いません。かけ直してください」と対応しているのに気づきました。
電話をかけてきている側も怒ることなく、目的を果たすまで何度も電話をかけ直してきます。
韓国では、電話を折り返す必要はありません。
韓国の仕事文化4. お弁当のおかずはみんなでシェア
仕事文化というよりは、職場文化と表現した方がいいかもしれません。
研究所では、昼食はお弁当を持ってきて食べる人が大多数でした。お昼休みになると、休憩室にある大きな丸テーブルを囲んでみんなでワイワイお弁当を広げていました。
日本と違うのは、持ってきたお弁当のおかずをみんなで分け合って食べること。
韓国の食事は米食中心で、お弁当もご飯とおかずという組み合わせが基本です。ご飯は各自持ってきたものを食べますが、持ってきたおかずはテーブルの中央に置いて、みんなでシェアします。
ご飯さえあればOK
これだと栄養が偏らなくて済むし、自分で何種類もおかずを用意する必要もなく合理的です。お弁当を用意する時間がない時は、ご飯と海苔だけ持っていってもなんとかなります。
独身で一人暮らしの男の人は、パックごはんだけを持ってきて、おかずは他の人が持ってきたのをもらったりもしていました。
韓国の仕事文化5. お客様への飲み物はミックスコーヒーが定番
日本で社外からお客さんが来るとお茶やコーヒーなどを出すように、韓国でも飲み物を出します。
韓国のコーヒー
韓国の飲み物で代表的なものが、ミックスコーヒーと呼ばれるインスタントコーヒーです。小さなスティック状の包装にインスタントコーヒーと砂糖、ミルク粉末が入っていて、とっても甘いコーヒーです。
どこの会社に行っても、給湯室には必ずと言ってよいほどこのミックスコーヒーが置いてあるはずです。いろんなメーカーから販売されていて、スーパーでもミックスコーヒーには大きなコーナースペースが取られています。
一方、最近はスターバックスが火付け役となって、韓国でも豆から淹れるコーヒーが普及しました。豆から淹れるコーヒーはミックスコーヒーと区別され、原豆コーヒー(ウォンドゥ・コーヒー)と呼ばれています。
お客さんに好みを聞く
このように、韓国には大きく分けてミックスコーヒーと原豆コーヒーの2種類のコーヒーがあります。
韓国の会社にお客さんが来るとなされる会話は、以下のようになります。
「コーヒーをお持ちしましょうか?」
「はい、お願いします」
「ミックスコーヒーでいいですか?原豆もありますが」
「いえ、ミックスコーヒーで」
まとめ~ワークライフバランスは自分で取る
日本人にとって距離的にも心理的にも近い韓国ですが、働き方には大きな違いがあります。
特に、韓国社会で働くためには、社内・社外問わず人脈やコミュニケーションが非常に重要視されます。そのため、業務終了後の飲み会や勉強会などに出席せざるを得ないことも多くあります。
周囲と上手に付き合いながら、自分や家族との時間も作る、そのワークライフバランスについても十分考えておくことが必要です。
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