イタリアに長期間滞在するには、日本でビザを取得するとともに現地で滞在許可を申請する必要があります。
ビザの種類にもよりますが、日本での取得手続きは書類がすべて揃っていれば難しくありません。問題はイタリアの役所での滞在許可申請です。イタリア人でも役所での手続きには四苦八苦するので、外国人である私たちにとってはより大変です。
大学受験ビザを取得してイタリアに渡り、滞在許可証を申請した私の体験と、現地で就労ビザを得る方法についてご紹介します。
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イタリアの大学に入るために必要な受験ビザとイタリア語力
大学入学までのプロセス
私が最初にイタリアへ渡るために申請・取得したビザは、語学学校に通うためのビザとイタリアの大学の文学部を受験するためのビザです。
語学学校の場合は、留学業者などを通じて入学手続きを済ませた上で、在日イタリア大使館に就学ビザを申請しますが、大学の場合は異なります。
まずは在日イタリア文化会館へ出願
イタリアの大学、各種専門学院(音楽、美術)への進学を考えている場合は、日本のイタリア文化会館を通じての出願以外は受け付けてもらえません。
語学学校へ通学中にイタリアの大学への進学を決めた場合も、大学への出願時期に合わせて一度帰国し、日本国内で出願手続きと受験ビザの取得をする必要があります。
つまり、基本的な流れは
- イタリア文化会館を通して出願(説明会と個別面談)
- 在日イタリア大使館で受験ビザを取得
- イタリア現地で受験
となります。なお、受験ビザの有効期間は90日くらいと短いです。
- イタリア文化会館 東京 https://iictokyo.esteri.it/IIC_Tokyo/it/
大学に合格するためのイタリア語力は?
人数制限のある学部は受験が必要、また制限のない学部でも外国人学生には語学能力を判定するテストが課されます。中級程度のイタリア語能力があればまず問題ないです。
私が出願した文学部は簡単な筆記テストと口頭テストだけでしたが、受験生の中に、ほとんどイタリア語を話せず、テストもほとんど回答できない南米系の人がいました。
試験に立ち会った先生2人は「これはちょっと難しいわね。ほとんどイタリア語分かっていないじゃない」「でも不合格にしたら国に帰らなきゃいけないのよね?それはかわいそうだし……」とヒソヒソ相談した結果、その人を合格にしていました。
スペイン語圏の人はイタリア語の上達が早いので、すぐに覚えられるだろうという判断のようでした。
イタリアの滞在許可証取得1. 申請は6時間待ち!忍耐勝負だった旧方式
無事に入学が決まったら、次は滞在許可を取得しなければいけません。これが現地で最初にする手続きであり、ここでイタリア式の洗礼を受けることになります。
私が経験した当時は、管轄の警察署まで行って移民窓口へ直接申請するシステムで、とにかく体力・忍耐勝負の申請手続きでした。
朝イチで到着し立って待つ
まず、朝できるだけ早い時間に行って警察署の前で並び整理券を取得します。私の地域を管轄する警察署は郊外だったのでバスを乗り継いで行きました。
何とか整理券をもらったら、あとはひたすら順番が来るまで待ちます。
私が行った警察署では、移民局の窓口がある部屋の椅子は10人分くらいなのですが、申請に来ているのは150人くらい。子連れの人に譲るとそれで椅子はいっぱいで、ほとんどの人が仕方なく壁に寄りかかって立って待つという感じでした。
具合が悪くなったり、怒りだしたりする人も
そんな状況なので、順番を待っている間に知り合った、同じく大学通学のために滞在許可を申請しに来たというアルメニア人の女の子は途中で気分が悪くなり、「もう辛い、帰りたい」とその場にしゃがみこんでしまいました。
疲れがピークに達していたようで、私が持っていたお菓子を一緒に食べて「辛いけどあとちょっと。お互い頑張ろう」と励まし合いました。
申請者は圧倒的に男性が多く、中には警察官の発言や差別的な態度にキレてしまう人もいて、女性には確かに厳しい環境でした。
結局その日、申請が終わったのは13時近く。朝7時に警察署で並んでから6時間後でした。
イタリアの滞在許可証取得2. もらってすぐに延長、その理由とは
6時間待ってやっとのことで申請書類を提出した滞在許可証。ところが、その苦労にもかかわらず、とても不思議な許可証を渡されることになります。
出来上がった時点で期限切れ?
書類提出のあと、警察署から指紋採取の連絡が来て再び足を運びました。予約制で時間が決められていたので1時間ほどで済みました。
申請はここまで、あとはひたすら出来上がるのを待ちます。
そして、私の滞在許可証が出来上がったのは申請してから約半年後、なんと受領したときにはすでにその期限が切れていました!1月末が期限で、発行の日付がその後の3月になっています。
「これって問題ないんですか?」と窓口の担当者に聞いたところ、「全然問題ないからすぐに延長申請してください」。
こうして、初めての滞在許可証は受け取ってすぐに延長申請の手続きをすることになったのでした。
イタリアの滞在許可証の申請は郵便局で可能に
さて、このようにかつてはかなりの労力が必要だった滞在許可の申請ですが、今は簡素化されました。
郵便局の窓口でできる
2017年11月現在、就学での滞在許可の申請は、郵便局のSportello Amico(スポルテッロ・アミーコ)と呼ばれる窓口で受け付けています。ただし、滞在目的によっては郵便局での手続きが不可で、直接移民局で申請しなければならない場合もあります。
郵便局のホームページや移民情報サイトで詳細を確認し、各窓口で自分の申請がどのケースにあたるのか確認してから手続きを進めてください。
郵便局で行う場合、窓口で滞在許可証の申請であることを伝えて申請書類Kit(キット)を受け取ります。受け取ったら説明に従って書類に記入し、指定の支払い証明・領収書や書類のコピーと一緒に提出します。
書類提出後の流れ
郵便局で申請書が受理されると移民局の予約表を渡されます。予約表の指定日に移民局へ出向いて指紋採取し、あとは滞在許可証が発行される日を待ちます。
滞在許可証の発行が完了したかどうかは、警察署のホームページに控え番号を入力することで確認できます。発行を待っている間は申請書受理の控えが滞在許可証の代わりになるので大切に保管しましょう。
なお、申請方法は変更されることがあるので、必ず最新の情報をご自身で確認してから手続きを進めてください。
滞在許可証の申請に役立つ情報
ウェブサイト
スポルテッロ・アミーコがある郵便局は限られているので、イタリア郵便局のホームページで窓口のある支店を探しましょう。
- イタリア郵便局の支店検索ページ:https://www.poste.it/
滞在許可の申請について最新の詳しい情報は下記の公的機関のリンクに記載されています。
- 郵便局の滞在許可申請に関わるページ:https://www.poste.it/
- イタリア内務省による移民情報サイト(伊・英):https://www.portaleimmigrazione.it/
無料のサポート機関「パトロナート」
滞在許可申請の書類などについて相談や確認したいことがあれば、Patronato(パトロナート)という機関を利用することもおすすめします。無料で必要書類のチェックなどを手助けしてくれます。
私は滞在許可の申請では利用したことがないのですが、相談したことのある友人によると、警察署で質問するより丁寧に対応してもらえるようです。
ただし、サービスが有料の場合もあるので注意しましょう。
イタリアで就労ビザを取得して滞在許可証の種類を変更するには
滞在理由を変更する場合は、まず必要な書類と申請方法について調べる必要があります。
私はその後、「学生」から「家族」に身分を切り替えたのですが、とりあえず警察署のインフォメーションに出向いて情報を得ました。上述したパトロナートを利用してもいいでしょう。
私の場合は最初に5年分の滞在許可証が発行され、その後更新した際に期限なしの許可証が発行されました。
では、「学生」から「労働者」への切り替えですが、これはなかなか難しいのが現状です。
働くならまずは学生になるしかない
イタリアは2017年11月時点で日本とワーキングホリデーの協定を結んでおらず、現地で働く方法は限られています。
長期滞在を目的にイタリアへ渡るときには受け入れ先(学校や企業)がないとビザが下りず、現地で仕事を探すのであればまずは学生として滞在するしかありません。
学生としてなら、就労可能な範囲(週20時間以内のパートタイム)で働くことができます。インターシップ制度などはこのシステムを利用しています。
また、学生として長期滞在することで、働く前にイタリアの現状を知ることも可能です。
就労ビザを得る限られた機会「フルッシ」
私の周りには、最初は学生として長期滞在し、その後に滞在許可の名目を学生から労働へ切り替えることに成功している人が何人かいます。
書き換えは、移民労働者に対する政府の特別法令Flussi(フルッシ)が発布された時にのみチャンスがあります。
Flussiは、外国人に就労ビザ取得の機会を与えるものですが、人数が決まっているため、条件を満たしていても抽選から漏れてしまう可能性も非常に高いのです。
さらに、Flussiは不定期に発令されるため、いつあるのか、またあるのかどうかさえわかりません。
チャンスを待ちながら滞在を続ける
そのため、労働許可を得るにはFlussiを待ちながら合法的にイタリアに滞在を続ける必要があり、結果的に学校へ通い続け学生としての滞在許可を延長することになります。
この方法もグレーゾーンですが、条件を守って滞在許可を失効させないことが大切です。
ただし、私の知っている例は10年以上前に書き換えをした人たちなので、現状はもっと厳しくなっていると思います。移民の数が増えていることと失業率が高くなっていることが影響しています。
まとめ~とにかく辛抱強さが求められる
イタリアは基本的に自分には落ち度がないと主張する文化なので、明らかに相手側が間違っていてもこちらに落ち度があると責められることがあります。役所でも同じことが起こるので、忍耐強く接してください。
滞在許可の申請以外にも、学校やアルバイトなどでトラブルがあり相談が必要な場合は、本文で紹介したPatronato(パトロナート)を利用しましょう。
外国ですべてを一人で解決しようとするとストレスを抱えてしまうので、利用できる機関を頼ってください。
※この記事は筆者の当時の経験に基づいています。現在は状況が変わっている可能性があるため、最新情報をご確認ください。
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