ニューヨーク在住の日本人シンガーソングライター「タムロリエさん」インタビュー

タムロリエ アメリカで働く

ニューヨーク在住のJames Nogamiです。さまざまな理由でニューヨークにやって来た日本人にインタビューをしています。

皆さんはニューヨークでのアーティスト活動と聞いてどんなイメージを思い浮かべるでしょうか。成功と挫折が渦巻く街で、アメリカンドリームを追いかけて挑戦の日々を送る姿、かと思いきや……。

今回インタビューを受けていただいたのは、奈良県出身のシンガーソングライター、タムロリエさん。渡米の経緯や仕事の取り方、プライベートまで根掘り葉掘り聞いてまいりました。

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ニューヨークのカフェでインタビュー

Espresso 77タムロリエさんのおすすめで、ジャクソンハイツ(JACKSONHEIGHTS)にあるEspresso 77というカフェで待ち合わせました。

当日はあいにくの雨模様でしたが、お店に入るとオレンジ色を基調とした空間に気持ちが和らぎました。

ヒット曲の流れる素敵な店内でインタビュー開始。タムロさんは僕と同い年ということもあり、さらに砕けた雰囲気での会話となりました。

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音楽活動のきっかけから渡米まで

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―早速ですが、音楽を始めたきっかけは何ですか?

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14歳からギターを始めました。たまたま楽器屋さんの前でギターを見て、何となく弾けるって思ったところから。親にギターを買ってもらって、カバーはせずに自分の曲を作り始めました。

具体的な活動は奈良でのストリートライブから始めました。そして大阪のオーディションに出て、ライブハウスで活動して、名古屋とか東京にも行き出して。

―東京に行き始めたのはいつ頃でしょう?

16歳の頃、高校に通いながら。卒業したときには東京と大阪に家がありました。

―すごい。どっちも借りられるくらいお金があったということですか?

はい。CDを売ったり、ライブをしたりして。

―ニューヨークに来ようと思ったのはどうしてですか?

東京に行くだけだと、規模がみんなと変わらないと思ったから。「ぶっ飛んだことがしたいなー、現実逃避がしたい」って思って。それで、「アメリカ行くかー」と。アメリカといえば私の中でニューヨークだったから、ノリで。21歳のときですね。

―未知への不安はなかった?

まったくなかったです。日本をぐるぐるしてたから、逆に知らないところに行きたいと思っていました。

―潮時かな、というような?

日本にいることへのストレスの方が強かったんです。ニューヨークに行ってどうなるという恐怖はなかったです。

こっちに来てからは英語ができないのが一番大変でした。歌うだけならいいんですけど、そのあと感想をいただいてもコミュニケーションが取れない、何も広がらない。

―語学学校には?

行ってないです。生活の中で覚えていって。まだ十分にはできないです。しゃべれなくても何とかなると思って来たんですけど、住むとなるとやっぱり必要ですね。

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ニューヨークでのシンガーソングライターとしての活動

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―ニューヨークではどんな活動をしていますか?

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月に一度、シルヴァーナというライブバーに出してもらっています。それ以外ではイベントや祭りに応募したり、誘われたイベントに出たりしている感じです。

―シルヴァーナとの契約はどうやって取ったのですか?

知り合いの方が音響をやっていて、一枠空いたからいきなり代役で出演するよう頼まれました。そこに偶然オーナーさんが来ていて、私の歌を聴いてレギュラーで歌っていいよと裏方の人に言ってくれたらしいです。それから2年くらい歌わせてもらっています。

―素晴らしい。逆に、最も手強かったライブは?

歌うセットがまったくなかったことがあります。

―まったく?

はい。他にも、ワイヤレスのマイクはあるけどマイクスタンドがないとか、ギターを持って行くと伝えたのにセッティングするための機材がないとか。

公民館みたいなところに呼ばれて行ったら、校長先生が話すようなマイクを渡されて。スタンドもないから、横でスタッフがマイクを持っていてくれて、ギターは生音で……。

―歌に集中できない。

「私が歌うってこと、知ってましたよね?」と言いたかったです!最終的に生声で歌いました。そういう経験があるので、自分で機材を持って行かないといけないなと分かりましたね。

―とんでもない体験ですね(笑)。

ニューヨークと日本の仕事環境の違い

Espresso77

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―仕事の取り方で日本と違うのは?

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違うといえば全部違います、やり方が。日本では、仕事歴が長くなるとオファーが来るから楽です。機材がそろっていて、音響さんに照明さんもいる。リハーサルもしっかりして、環境的に歌いやすいです。

ただ、ライブハウスでは基本的にノルマがあって、チケット何枚売ったら何パーセント返ってくるよ、という感じです。ショッピングモールなんかでやらないと新しいお客さんに聞いてもらうことは難しいかもしれません。

―ニューヨークでは?

こっちでは基本的にギャラはチップなので自分の歌声次第です。全然知らない人の前で歌うことが多いから、出会いがたくさんあります。

でも、どんな機材が用意されているか分からないから必要なものは持って行かないといけなかったり、音響も自分で勉強しないといけないんです。日本は環境が恵まれているって、こっちに来て初めて分かりました。

―どちらの方が活動しやすいですか?良いところ悪いところ、それぞれにあると思いますが。

うーん。私には、日本はただ単に出演して歌う感じに思えます。環境的に楽して音楽できる、じゃないけど。

日本では、音楽を好きな人が来るからみんな真剣に聞いてくれます。でも、自分で呼んだお客さんは自分のプロフィールを知っている状態で聴くわけで、名前が売れていけばいくほど期待値も上がって精神的に辛かったです。

ニューヨークだとそういうハードルがないので気は楽ですね。カフェやバーでやるときは音楽を目的としていない人達に聴かせるから、話し声がうるさいですけど。そういったお客さんに聴いてもらえるのはいいです。

その代わりハプニングが多くて。だから良い音を届けるのが難しいです。

ニューヨークで美意識を捨てて人間性を得た話

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―アーティストとしての美意識というか、普段から気をつけていることはありますか?

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美意識は日本にいたときの方が強かったです。アーティストはこうじゃないといけない、というような。いつもそのことを考えていて、休みの日も休みじゃないんだ、刺激を受けないといけない、幸せになっちゃいけないとか。

―何ですかそれ!詳しくお願いします。

アーティストで幸せな人っている?という偏見があって。私の場合、幸せだと曲が書けなかった。傷ついてダメなときにたくさん書ける傾向にあったから、そう思ってました。なので昔は闇に向かっていましたね。

いかにアーティストとして過ごすかを気にして、いっぱい遊んでなきゃいけないとか。

―夜遊びのような?

夜遊びというより、大人の飲みについて行って先輩の持論を聞く。人脈を広げて、コネを作ろうと。

―それで良いモノが作れますか?

作れません。だから、こっちに来てからそういうことは全部やめました。なんというか、音楽はそんなに無理してやるもんじゃないと、何も考えなくなりました。

日本では売れるための戦略を練っていました。お客さんをどう喜ばせるか、どういうアプローチをしていくか。歌う前も後もいろいろと考えていました。

でも、ニューヨークではその場限りのフィーリングでしか惹き付けるものがないから。練習はするけど、その場で一番いい歌が歌えればそれでいい、あんまり深く考えていません。見る人の感じ方も日本と違うので、その場を楽しむしかないかなと。

―それでうまくいっていますか?

気持ちは楽になりました。アーティストらしくはなくなったけど、人間らしくなった感じ。

―アーティストらしくいたかったという気持ちもあるのでは?

それには限界があるから、うーん、あのガツガツ感は消えました。今の目標は、のんびり穏やかに幸せに生きていくことです。

ニューヨークでは自己中心的な方がうまくいく

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―これから海外に挑戦しようとしている人は積極的な方が多いと思います。でも、そのような方々からすると「のんびり穏やかに生きる」という話は意外かもしれません。

日本で平凡に生きていると感じている人は、ニューヨークでガツガツした生活をして生まれ変わりたいと思ってるんじゃないでしょうか?

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あー、そっちのパターンの方が多いですかね。私は日本でガツガツしてたから、こっちで現実逃避したかったんです。

成果を出したいというよりは好きなことが評価されたらいいなー、ぐらい。こっちにいる人って、わりとゆるい人が多くないですか?日本みたいに無理している人はあんまりいないと思います。

好きでやってて周りに人が寄ってくる。こっちで音楽活動をしている人はそういう感覚の人が多いと思ってます。

―その意見の反対側には昔のタムロリエがいると思います。周りの人に理解されるようにやらないといけないっていう。

それも大事だとは思います。けど、ニューヨークでのやり方としては、周りではなくまず自分が楽しむこと、その価値が日本より大きいと私は思っています。

客を楽しませるのが楽しいという自己犠牲が日本での活動。今の私は、自分が楽しければ周りも楽しい。根本が違います。どっちが正しいとかじゃなくて。

何がお客さんのためになるんだろうって考えたときに、自分のファンは自分が幸せな姿を見るのが好きだろう、って結論にたどり着くと思うんです。人のためにやりすぎるとすべて見失う気がします。ぶれるって言うのかな。

―ぶれる!重要なワードですね!ここに居る人はみんな芯がある。

それを自己中心的と捉えるかどうかは、紙一重ですね。自己中心的なのも、ある意味ぶれていない強さです。

―ニューヨークにフィットした人が日本で働き辛いのはそういうところかもしれませんね。

「NOと言えない日本人」を再認識

―逆に自己中心的にやりすぎて失敗したことはありますか?

去年日本に帰ったときに、自分の言葉が強くなっていることを自覚しました。こっちにいたら普通の言い方なのに、私は、私は、私は、って。

―うんうん。

ニューヨークでは「表面上同意していてもモヤっとしている」というのがあんまりないですよね。私はこっちで否定されることばかりだったから、それに慣れている。

だから、日本で同じようにすると、否定が返ってくると思っていたのに肯定された!となってしまう。話がすぐ終わっちゃうんですよね。

―日本で言いたいことを言えないでモヤモヤしている人たちにとっては、希望が持てることですね。

というより、言わなきゃいけなくなる。言わないとやっていけなくなる。妥協で済ませられなくなるから。伝えないと分かってくれないですし。英語をしゃべれないことに引け目を感じないで開き直った方がいいですね。

ニューヨークで出会って1年で結婚、驚きの決断

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―ビザはどうやって取ったんですか?

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夫がアーティストビザだから、O3(結婚ビザ)で。ニューヨークに来たのは21歳のときで、最初の1カ月だけホームステイしていたのですが、そのときに夫と出会って、そのまま付き合って、日本に帰って遠距離恋愛。

その3カ月後に3カ月滞在したときにもう婚約して、さらに2カ月後くらいに10日だけ滞在したときに結婚したんです。

―お、おぉぅ。そのパッションみたいなのはどこから来たんですか?

とりあえず、日本から出たかった。初めてニューヨークに来てから1年経たないうちに4回くらい往復しました。

―少し失礼な質問なのですが、ビザのために結婚したかったんですか?

一緒にいるためにはまずビザが必要だから、そのために結婚したって感じかな。ちゃんと愛はあります。一緒に生活するための手段としての結婚。

アメリカと日本の遠距離恋愛は自分たちの意志だけで成り立たないですよね。3カ月以上滞在できない、何回も行けない、というしばりの中で恋愛するのってめっちゃ難しいじゃないか、と。離れている間に互いを知るのは無理やん、って思って。

―旦那さんも承知で?

うん、とりあえず結婚してみっか、合わなかったら離婚すればいいや、って。

―それで上手くいってるんですもんね。

継続中です(笑)。

―素晴らしい!その行動力がリエさんをここまで運んできたんですね。

海外に挑戦したいなら、とにかく行ってみること

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―最後に。やっぱり安定した生活を壊すのは怖いと思いますが、そんな人達に向けて何かアドバイスはありますか?

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とりあえず来ればいいと思います。来てみればそんなにハードルは高くないから。お金はかかるけど、それだけ払っていい経験ができるのなら、そこまで高くないぞと。

―飛行機代くらい高校生でも稼げますもんね。

まず来なきゃわからない。思っているほど大したことないということに気づけば、どこにでも行けるようになります。

―リエさんは10代の頃からいろいろな土地に足を運んでいたから、行動することに慣れていたんじゃないですか?会社員の人が仕事を辞めてとなると、話は違うのかも。

うん、でも来ちゃえばいいんです。土地に合うかどうかは来なきゃわからない。合わないと思えば帰ればいい。来なあかん。

―ありがとうございました!

まとめ〜迷ったら、迷うなら、まずは行動!

自分の気持ちに素直に従ってニューヨークにやって来たタムロリエさん。マイペースながらしっかりと進むべき道を見つけて歩んでいる印象でした。

海外に挑戦してみようと思っていてもなかなか踏ん切りがつかない皆さん、難しいことは考えずにまずは行ってみるというのも一つの手です。アメリカに限って言えば、ビザがなくてもESTA(エスタ、電子渡航認証システム)で入国することが可能です。

思い立ったが吉日、まずは行動してみてはいかがでしょうか。

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記事を書いた人
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1993年ニューヨーク生まれ、日本育ち。
日本大学芸術学部演劇学科を卒業、2016年にニューヨークに渡る。
現在は日本人と外国人の交流イベント運営に携わる。

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