イタリア・アマルフィ海岸でのアグリツーリズモ体験!田舎で働きながら料理を学んだ夏

アマルフィ イタリアで働く

旅行といえば、観光都市のホテルなどに宿泊して市内の名所を巡るスタイルが一般的ですが、田舎で農作業をしながら地元の人との交流を楽しむ形態もあります。

私はこのシステム「アグリツーリズモ」を利用して、イタリア留学中のひと夏をアマルフィ海岸で働いて過ごしました。ただ、最初からそれを目的にしていたわけではなく、仕事をすることになったのは偶然でした。

好きな料理について学ぶ機会となった私のアグリツーリズモ体験をご紹介します。

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イタリアのアグリツーリズモとは

農業

農業+観光

日本では一般にグリーンツーリズムと呼ばれ、農業などを体験しながら農村や農家で休暇を過ごすことを指します。イタリア語のアグリツーリズモはAgri=農業の、turismo=観光という意味です。

田舎から都市への人口流出が盛んになった1960年代頃からイタリア国内でこの概念が広がり、田舎の自然環境を保持することと、最低限の人口を守る目的で制度が作られました。

指定条件を満たす必要

アグリツーリズモを名乗って体験者(観光客)を受け入れるためには、自家製品や農業生産物を供給すること、そのテリトリーの価値を高めるためのアクティビティを行う宿泊施設であることなどの条件を満たす必要があります。

私が実際に働いたアマルフィ海岸のアグリツーリズモ施設でも、その場所で収穫された野菜を使用しなければならなかったり色々な規制があり大変だとオーナーの人が話してくれました。

南イタリアのリゾート、アマルフィ海岸

アマルフィ海岸

私がアグリツーリズモを利用して働くことになった経緯をお話しする前に、その仕事場となったアマルフィ海岸をご紹介します。

さまざまな魅力を持つ街が点在

ナポリから突き出しているソレント半島の南側、ソレントからアマルフィを挟んでサレルノまでの海岸がアマルフィ海岸と呼ばれています。海岸線に沿って小さな街が点在し、街によってそれぞれ特徴が違うのがアマルフィ海岸の魅力です。

中でもアマルフィは、2009年に公開された映画「アマルフィ 女神の報酬」によって、日本で一躍有名になりました。この街は欧米からの人気も高い、落ち着いた南イタリアのリゾート地です。

移動が難しいのが玉に瑕

夏の観光シーズンにはたくさんの観光客が訪れますが、この地域の問題はどの街へも交通の便がとても悪いことです。

ナポリを起点に、ソレントまではソレント半島の北側を走るヴェスヴィオ周遊鉄道があり、サレルノへはイタリア鉄道で行くことができます。

けれどもソレントからサレルノの、アマルフィ海岸に点在する街々の移動はバスが主な交通手段になります。海岸線に沿って蛇行する道を走るので、地図上の距離が近くても移動時間がかかります。

そして、シーズン中は道が渋滞、シーズンオフはバスの本数が少ないなど、とにかく移動が難しいのが問題点です。けれども同時に、移動が難しいからこそ街が昔のまま保存され歴史が保たれているのがアマルフィ海岸の魅力でもあるのです。

それぞれの街の特徴

アマルフィ

アマルフィ

人口は5,200人。知名度の割にとても小さな街です。中世にはイタリアの四大海運都市国家としてピサ、ジェノヴァ、ヴェネツィアと共に強盛を誇りました。

港から断崖の上へ上へと街が形成され、入り組んだ細い路地が街中に広がっています。

中心の広場にはアラブ=シチリア様式の有名なアマルフィ大聖堂があり、特産品のリモンチェッロ(レモンリキュール)などが並ぶお土産物屋さんがあります。

サレルノ

アマルフィ海岸の観光拠点になる街で、ナポリからイタリア鉄道で約40分。中世から続く有名なサレルノ医学大学があり落ち着いた雰囲気です。

終着点のソレントまで観光する予定がなければ、アマルフィの街へはこのサレルノから移動した方が便利です。

ヴィエトリ・スル・マーレ

サレルノからバスで15分ほどの小さな街で、マヨルカ焼きの一大産地です。

目抜き通りに色とりどりの陶器が飾られていて、華やかな雰囲気があります。陶器は海や貝殻、レモンなど南イタリアらしいモチーフがいっぱいで、お土産に最適です。

ポジターノ

アマルフィと並ぶ観光都市で、アマルフィ海岸で一番の高級リゾート地です。地元の人に聞くと、アマルフィより観光、買い物、見どころのいずれもポジターノの方が上という意見が多かったほどイタリア人に人気の場所です。

崖にへばりつくように街が形成されていて、海に続く下り階段に沿うようにお土産物屋さんやレストランが軒を連ねています。華やかな色の手作りのリゾート服、サンダルの店などが多く人気です。

チェターラ

サレルノとアマルフィの間にある漁業の街です。観光の街としてはあまり有名ではありませんが、カタクチイワシ(アンチョビ)の内臓を発酵させて加工した魚醤の一種、コラトゥーラ(・ディ・アリーチ)を生産する街として有名です。

ここに来たら、ぜひこのコラトゥーラを使ったパスタなどの料理を出すレストランに立ち寄ってみましょう。

ラヴェッロ

アマルフィ海岸の他の街と違い、崖の上にあります。

海水浴場がないせいか他の街に比べて落ち着いた雰囲気で、崖に張り出すようにして作られた2つの有名な展望台「ヴィッラ・ルーフォロ」と「ヴィッラ・チンブローネ」からアマルフィ海岸が一望できます。

ソレント

サレルノと同様、アマルフィ海岸観光拠点の街で、ここからヴェスヴィオ周遊鉄道に乗ってヴェスヴィオ山やポンペイ遺跡へも行けます。フェリーでカプリなど近隣の島々へも渡れます。

お土産屋さんやレストラン、ホテル、カフェも多く、海水浴ができるビーチもあります。

アマルフィ海岸でアグリツーリズモ体験することになった経緯

ぶどう

日本のテレビで知った海岸の美しさ

イタリアに留学しようと計画しはじめた頃、テレビでたまたまアマルフィ海岸の特集をしていました。まだ日本でアマルフィの名前も聞いたことがないような頃でした。

海岸と街のあまりの美しさに、最初の留学先をアマルフィ海岸の拠点の街、サレルノにしようと決めて調査を開始します。

けれどもサレルノはやはり小さな街、望むような語学学校がなかったことで留学先をローマに変え、アマルフィ海岸へは留学中にでも短期滞在で行こうと考えました。

行き当たりばったりの旅へ

そして実際にローマに留学中、夏休みを利用してアマルフィ海岸へ旅行に出かけます。友人たちとソレントで数泊した後、1人でアマルフィへ向かいました。

実はこの時点で無計画で、事前に調べてみたもののあまり情報もなく、留学目的の1つであった「食に関する知識を深めること」をかなえるため、どこかで食関係のことを見たり習ったりできる機会があればいいというくらいに考えていました。

夕方にアマルフィに着くと、8月でどこのホテルもいっぱいです。アマルフィの近くの街にあるユースホステルにやっとベッド1つ分の空きがあり、バスで向かいました。

日本人が珍しい小さな街

ユースホステルがあったのはアジェーロラという、アマルフィ北西の標高が高い山の山腹に位置する街でした。

朝になってユースホステルを出て、アマルフィへ下りようとバス停を探してうろうろしていると、数人の老人がこちらをチラチラ見ながら話しかけて来ます。

小さい街だったため日本人が珍しかったようで、何をしに来たのかなどの世間話をしました。そして、せっかくなので、この辺で料理を習えるところはないか聞いてみました。

これはイタリアに住んで後からわかったことですが、イタリア、特に南部の田舎の方では趣味の習い事をするという習慣があまりないようです。

そのため、この時の私の質問もよく理解されなかったらしく、どうやら見習いとして厨房で働く仕事先を探していると解釈されたようでした。

成り行きで働くことが決定

1人の老人が、側にあるレストランを紹介すると言って連れて行ってくれます。

レストランに着くと若いシェフが対応してくれ、スタッフは間に合っているので近くにあるアグリツーリズモの施設を紹介する、と言ってくださいました。

行ってみると、2人のオーナーの男性と2人の女性、手伝いの男の子がいて、忙しいので今すぐ手伝ってほしいとのこと。こうして、あっという間に働くことになってしまったのでした。

アマルフィ海岸でアグリツーリズモ、調理補助として働く

パスタ作り

急に働くことになったアグリツーリズモの施設は、街の外れの山の上にありました。畑で野菜を栽培し、レストランで提供しています。

入り口を入るとレストランがあり、横に厨房と畑、そしてレストランの裏側に4部屋くらいの家族用の宿泊施設がありました。私のアグリツーリズモ滞在中は、余っていた1部屋を貸してもらいそこに寝泊まりしました

働き者の女性シェフ

2人いた女性スタッフのうちの1人が厨房を仕切っているようでした。彼女はもともとは近所に住む主婦でしたが、料理の腕を買われてオーナーの男性2人からスカウトされたそうです。

この女性シェフがとても働き者で、朝は7時前から朝食の準備、夜は11時近くまで仕事をしていました。

いくら昼に休憩があるといってもさすがに長時間労働でしたが、夏季のおよそ6ヶ月間しか営業しないのでそのような労働形態になってしまうそうです。

しかも、この女性は昼食後の午後の休憩時間も家に帰り、3人の娘と夫のために夕食の準備をしたりと常に働いていました。私もよく午後に家に招かれたのですが、娘たちと夫、さらに長女の子供たちの面倒まで見ながら私にもコーヒーやお菓子をふるまってくれ、その働きぶりに感服してしまいました。

働きながら料理を教わる

最初は「なぜこんなところに日本人の女の子が急に仕事をしに来たんだろう」と不思議がられましたが、事情を話してその女性シェフに料理の勉強がしたいと頼み、仕事中に色々教わることができました

調理補助として働きながら、南イタリアの料理、アマルフィ独特のレシピをたくさん教えてもらいました。

語学留学中の夏休みという短期間でしたが、勉強になりました。

イタリア・アマルフィ海岸で仕事を探すには

みかん

私の場合は偶然仕事をすることになりましたが、実際には南イタリアの、特にアマルフィ海岸などの小さい街では家族・親戚・知り合い同士で雇用が完結することがほとんどのようです。

前述した通り、趣味の習い事をする習慣もほとんどないようなので、何かを学ぶ場を見つけるのもなかなか難しそうです。特にイタリアの田舎はそういう傾向が強いです。

現地での情報収集が近道

ただ、南イタリアの人はコミュニケーションを取るのが好きで、移動中のバスでも街なかでも、とにかく話しかけられることが多いです。

そのため、例えば私のように、小さい街で、そこにしかないような料理を習いたい、見てみたい、という方は、その場所へ行って情報収集するのが一番早いように思います。

特に、夏に観光客が押し寄せるアマルフィ海岸は、冬は営業していない観光施設が多いものの、夏場を狙って行くと求人も人も多く、良い機会に恵まれることも多いと思います。

行けなければコネに頼る

直接その場所に行くことが難しくても、知り合いや友人がそこにいれば紹介してもらったりすると話がまとまりやすいです。

仕事でも何でも、とにかく「人に聞いて」「紹介してもらう」のが、特にイタリアの田舎では一番早く確実な方法です。

まとめ~親密な関係を築きながら働ける

パスタ

偶然にも働く機会を得られたアグリツーリズモ体験でしたが、振り返ってみるとイタリアの都市で働くことと大きく違いました。

まるでホームステイをしているようなアットホームな感じで、ひとつの家族のようにスタッフと親密な関係を築きながら働くことができました

畑で栽培された食材をすぐに使った洗練されていない料理は、日本で出会うイタリア料理とは全く違うレシピばかり。その後、ソムリエ、パティシエになった私のように料理人を目指す方にとっては、とても面白い経験になるのではないかと思います。

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記事を書いた人
Chicca

2004年よりイタリア・フランス在住。
イタリアソムリエ協会認定ソムリエ。パティシエール。
ローマ・フィレンツェ・パリ・ボルドーに在住経験あり。
お菓子レシピサイトChicca Foodを運営しています。

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