海外就職と聞くと、スキルのある社会人や語学力の高い帰国子女にしか用意されていない道だと思う人も多いかもしれません。でも実は、就業未経験で英検2級程度の英語力でも海外で働ける可能性はあります。
実際に私も、大学卒業後すぐに英語がほぼ話せない状態で中国へ渡り、上海で日系金融企業に就職しました。
日本での仕事に息が詰まっている方、今のうちに海外勤務を経験したい方、もしくは全く違う環境に飛び込んでみたい方へ、私の経験をご紹介します。
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上海就職のきっかけは大学での留学生との出会い
大学生の頃は祝日や長期休みを利用して旅行へ行くほど海外が好きでしたが、海外で働こうとは就職活動時には少しも考えていませんでした。英語力がなく、海外就職という選択肢は全くと言ってよいほど頭になかったのです。
その様な状況で海外就職を考え始めたのは、大学3年後半からの就職活動期が終わる4年生のとき。大学最後の年です。
英語ができなくても大丈夫かも?
理系であった私が所属した研究室には日本語の話せないたくさんの外国人留学生がおり、日常会話が英語中心という環境でした。
この日本語が話せない留学生達に会ってから、もしかすると英語や他の外国語が話せなくても海外での就職は可能なのかもしれない、と思ったことがきっかけです。
先にも触れた通り、海外就職を考え始めた頃の私の英語力はひどいもので、外国人留学生と意思の疎通をするのがやっとの状態。
つまり、日常会話もままならなかったのですが、しばらくすると英語が十分話せなくてもお互いの意思疎通ができる様になってきたのです。
とても些細なきっかけでしたが、留学生達と出会ったことで将来の可能性が広がりました。
上海を選んだ理由とビザの問題
留学生達と過ごすうちに、英語がしゃべれなくてもどうにかなると感じた私は、海外就職を目指すのは無謀であるとその当時は思うこともなく、他のクラスメートが就職活動を行い次々と就職先を決めていく中、卒業研究に励んでいました。
そして大学卒業後、中国の上海で新卒として就職活動を始めます。世界に数ある国の中から中国、そして上海を選んだ理由は次の通りです。
- 世界の中で一番日系企業進出数が多い国が中国であったこと
- 日本に近く、いざという時に日本へすぐに飛んで戻れる距離
- 英語圏でなく行ったことがある国で、暮らせそうなところだと判断(英語圏では英語が話せないと仕事が見つからないと思った)
- 上海という国際都市であれば、人種が異なることで好奇の目にさらされないと思った
どちらかといえば消極的かつ安易な理由で選びましたが、この選択が吉となりました。
というのも、新卒外国人として海外で就職することは、就労ビザ取得という点を考えるととてもハードルが高いのですが、私が中国へ行ったのは新卒でもビザが取れる時代だったのです。
かつては日本人求人が多数
中国に限らず、海外で日本人を含む外国人が就職する場合、現地の人にはないスキルを持っているなどの理由で採用されるのであれば就労ビザ発行の可能性はあります。
それでも、なるべく自国の人へ職を提供する必要があるので、外国人であり経験も少ない外国人新卒の就労ビザ承認はとても難しいのが現状です。
しかし、私が中国で就職活動をした年は多くの日系企業が日本人人材を求めていました。新卒で就業経験がなくても、語学力が一切なくても、求人がたくさんあったのです。
日本での就業経験がない私でも、書類審査はほとんど通りました。
現在は厳しくなった外国人へのビザ発給
私の知人は2017年に中国で新卒採用されましたが、現在は外国人の新卒採用は難しい状況になっています。
中国人の就業率を高めるためにも、同レベルのスキルがあれば外国人ではなくまずは中国人を雇用するべきという考え方が背景にあるようです。
上海で仕事を探した方法
仕事を探すには日本と同じく人材紹介会社を利用します。
私は上海のありとあらゆる日系人材紹介会社に登録しました。新卒かつスキルなしにもかかわらず、応募可能な案件が次々と紹介されました。
紹介された募集要項を読み、興味があれば人材紹介会社に連絡、そして書類審査に合格すれば一時面接の日時設定を進めてもらいます。
面接当日は早めに出発を
当たり前のことではありますが、日本の様に公共機関やタクシーがしっかり運行されていない国も多々あります。
予想できないほどの渋滞が起こることもあるので、面接時には時間にしっかり余裕を持って出発することを強くおすすめします。
なお、面接会場への交通費などは全て自己負担です。
上海で内定!面接で重要なポイントとは
いくつか面接を受けた中で最初に内定をもらえたのは日系金融業の法人営業担当でした。法人営業という職種の経験のみならず、会社勤めの経験自体がないにもかかわらずの採用です。
面接時には、将来の上司になる日本人の面接官と、面接にしては和気藹々と話をしたことが今でも印象に残っています。
他の会社へも応募しましたが、最終的に私はこの企業に就職することにしました。なぜかというと、一番最初に内定をもらえ、面接官(将来の上司)との相性もよかったからです。
また、給料が高かったことも理由です。通常、中国での現地採用というと給与は日本でもらえる半分ほどということもありますが、この金融企業からは、中国で新卒としては破格である日本の新卒以上の給与額を提示してもらえました。
面接官との相性で合否がほぼ決定
結果論とはなりますが、その会社に入社してから2年後、私は中国人チームと協力しながらとても大きな契約を獲得し、社内で最優秀営業賞を受賞しました。
面接官だった私の上司が、私に営業の素質があると面接時に判断を下したのだと思います。
海外での就職活動においては、IT系等の特殊な業種を除くと面接官との相性が合うか否かである程度合否が決まると思って間違いないでしょう。
仮に相性が合わないことを隠して面接をパスし内定が出たとしても、その後の就業が辛い環境になります。無理をしたり、自分を隠したりしての面接は避けましょう。
外国人と協力できるかどうかも重要
海外で業務を推進するには、中国人など現地のスタッフとの協力が欠かせません。したがって、その現地スタッフと共に人種の垣根を超えて業務に邁進できるか否かを面接で判断されることもあります。
文化的背景やビジネス慣習の異なる外国人とも歩調を合わせて仕事を進められることも大切な要素のようです。
とはいえ、外国人と協力しながら同じ目線で業務を遂行するというのは、残念ながら日本で生まれ育った日本人には難しいことです。
海外好きをアピールした私の例
私自身は面接時に、よく海外旅行をすると強調していました。また、語学能力が不十分であると感じてはいるものの、外国人ともなんとかコミュニケーションは取れるとも話しました。
面接官であった上司は、私が外国人スタッフとも異なる文化や言語の壁を乗り越えて連携できると判断したのだと思います。
上海で働いて感じたメリット・デメリット
よかった点
仕事を通してよかったと思える点は、多国籍の同僚(当時は中国人と韓国人)と一緒に一つの目的に向かうことで、部門を超え、文化の違いを超えて働く機会をもらえたことです。
新卒入社という立場でこの様な挑戦ができる環境を与えられることは、日本国内ではまず難しいでしょう。
私はこの多国籍チームでの業務連携の経験を糧にその後、転職を繰り返し、英語が苦手であった大学卒業時には想像もできなかった外資系金融会社で勤務することになりました。
今では全世界の同僚と協力しながら、どの様に会社と社会に貢献しながら業務推進ができるかを模索する日々です。
悪かった点
上海で就職した結果、悪かったと思える点は仕事面ではほとんどありません。
強いて言えば、悪い点というより悲しかった点ですが、仲良くなった同僚が次々と転職してしまい、入社時の同僚と退職時の同僚の顔ぶれが一新するほど入れ替わりが激しかったことです。
転職の理由はほとんどがキャリアアップとのことです。私が勤務していたのがブラック企業だったという様なことはありません。
2~3年で転職するのは諸外国では比較的よくあることです。日本以外のアジアにおける他国は転職がとても盛んなので、驚くことではないのです。
また、私を採用してくれた上司も含め、日本人駐在員は一定期間の赴任なので、任期を迎えたり日本本社からの辞令が出たりすると日本へ帰国ということも多々あります。
デメリットがメリットになる場合も
せっかく関係を構築し、良いチームとなっても次々と人が入れ替わることは悲しく残念なことでもありましたが、元同僚の転職先が仕事上の提携先であるなど、立場は代わっても結局一緒に仕事ができることもあるので、悪いことばかりでもありません。
むしろ、気心の知れた元同僚が事業提携先にいると話がしやすくなるなど利点もあります。
すべて含めて人生の糧に
この様に、私は上海での勤務において上司と同僚に恵まれ様々なことを学ばせてもらい、現在の基盤を作り上げることができました。
一方、生活面では、日本と異なる環境や水質が合わず髪の毛が抜ける、食あたりの頻度が高くなる、バイクに轢かれてしまっただけでもショックだったのにそのバイクの運転手に舌打された等、色々問題はありました。
しかし、全て大問題には至らず、総じて現在の私の財産になっています。
上海で働くために準備しておくべきもの
語学力
どのような場面においてもあるに越したことはないのが英語などの語学力。
言葉ができなくても仕事を見つけられる可能性はゼロではありませんが、海外での就業を既に目標としているのであれば、最低でも日常英会話程度は身につけておきましょう。
なお、TOEICやTOEFLなどの点数は日本国内での就職・転職ではよく問われるものの、海外では異なります。私自身は英検2級のみの取得でTOEICなどは受けていません。
日系企業か現地・外資系企業かによっても異なりますが、面接官は英語もしくは現地の言語しか話せないケースが多いので、試験の点数よりも実際の面接で会話ができるかどうかに重きが置かれるようです。
応募用書類
- 履歴書(日本語・英語)
- 職務経歴書(日本語・英語)
日系企業の日本人がいる部署への応募であれば日本語のみの準備でも問題ないことはありますが、海外に拠点を置いている日系企業は人事部に日本語の話せない現地人スタッフがいることが多いので、履歴書と職務経歴書は英語でも準備しておきましょう。
最近では、人材会社がオンライン登録時に既に提出を義務付けていることもあります。
有効期限までにゆとりのあるパスポート
いざ内定が出て採用通知が届いても、就労ビザ申請時にパスポートの有効期限が迫っていると、先にパスポートを更新する必要が出てきます。
その様な状況になると就業開始も遅くなり、せっかく採用してくれた会社の人事スタッフにも迷惑をかけることになりかねないので、パスポートの有効期間には数年ほど余裕を持たせておくようにしましょう。
ただし、予想に反して就職活動が長引いてしまうこともあるので、更新・切替時期はよく考えてください。
働きたい国で1ヶ月は暮らせる貯金(就活用)
1回の面接ですぐに内定がもらえることはまずありません。数日おいて2次面接、最終面接となります。
そのため、就職活動を行う国で1ヶ月ほど生活できる資金が必要となります。
卒業・成績証明
- 最終卒業証明(英語)
- 最終在籍校での成績証明(英語)
学歴証明はほとんどの国で就労ビザ申請時に必要となりますが、海外にいながら日本の卒業校からの証明書を取り寄せることは難しいです。
また、英文証明となると大学によっては自動発行ができず、様々な事務手続きを経ることも考えられます。時間が掛かることも見越して早めの申請が必要なので、日本にいる間に取得しておきましょう。
クレジットカード
海外で生活するなら、クレジットカードを持っていると便利です。できる限り日本でクレジットカードを入手しておきましょう。
というのも、日本では一般的に申し込めばすぐに作成できるイメージがありますが、海外で外国人である私達がクレジットカードを作るとなると困難を極めます。
いつまで経ってもクレジットカードを発行する銀行の審査に通らないこともあります。
新しく作るなら、世界中ほとんどの国で利用できるVISAカードがおすすめです。アメックス、JCBはあまり普及していない国も多いです。
まとめ~私の人生を大きく変えた中国就職
海外就職を決めたきっかけや上海を選んだ理由は些細なことでしたが、私の人生は大きく変わりました。
外国で働くことをキャリアアップと見るか否かは人それぞれ、しかし視点を変えるとプラスの見方ができます。また、新しい環境に身を置くことで自分自身の成長が見込めます。
中国には日本の文化にも通じるものがあり、中国人は日本人にとって実は一番仕事をしやすい外国人だと私は感じています。海外就職先として、まずは中国・上海を候補に入れることをおすすめします。
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