ニューヨーク在住のJames Nogamiです。さまざまな理由でニューヨークにやって来た日本人にインタビューをしています。
今回はアメリカの小学校で教師をしながら音楽活動をするHさん(25歳・男性)に、14丁目のスターバックスでお話を伺ってきました。
もうすぐニューヨークに来て4年になるというHさん。教師の仕事も音楽も好きだという彼はどんな生活をし、どんなことを感じているのでしょうか。
【海外求人をチェックしたい方はこちら】
- LHH転職エージェント(未経験から幅広く求人を探す)
- JAC Recruitment(海外勤務・外資系を狙う年収600万円以上の方向け)
ニューヨークで教師と音楽活動、二足のわらじ
昼間は仕事、夜は音楽
━よろしくお願いします!始めに、今どんな音楽活動をしていますか?
月に2回ライブをしています。マンハッタン内、ブルックリン、クイーンズなどの近場やワシントンD.C.、ボストンにも行きます。ツアーはできていないですが、バンドのメンバーとして活動しているという状況です。
━教員をしているとのことですが、仕事との兼ね合いはどうですか?
教師として週に6日働いています。平日はだいたい夕方6時まで、土曜日も同じ感じになるので、バンド活動をするのは夜か日曜日です。昼は仕事、夜は自分の好きなことという状況ですね。
━なぜニューヨークに来たのですか?
理由は2つあります。1つは、大学を卒業してから教員の仕事をすぐにやりたかったことです。場所はどこでもよかったんです。
もう1つは、アメリカで音楽をやってみたかったことです。ベースをやっているのですが、いろいろなところで演奏してみたいという思いがあり、ニューヨークには良い音楽が集まっているから活動してみたいと思いました。
中学の頃から二足のわらじ生活を計画
━日本にいた頃から音楽の勉強をしていたんですか?
そうです。中学生の頃からずっと。
━教師になりたいと思ったのはいつ頃でしょう?
それも同じくらいです。小学校高学年ですかね。「こうしよう」というのは、中学生の頃にはある程度決めていました。
━中学生から二足のわらじ生活を想定していたとは、早いですね。大学もその計画で選んだんですか?
そうです。大学時代もバンド活動を続けていました。渡米に関しては、東京で教師として就職する3カ月前くらいに内定を蹴って決意しました。
━なぜそう決断されたんですか?
毎月ちゃんとお給料がもらえるという安定した道を行きたいとずっと思っていたんです。バンドはというと、あきらめた時期もありました。
でも、東京で教員になることが実際に決まって勉強していくうちに、「やっぱりもうちょっと自分のやりたいことをやってみよう」と思ったんです。
そこでいきなり海外に出たのですが、海外のバンドも好きだったので、挑戦しようと。
どちらも好きだから両立できる
━実際にアメリカで教師として働いてみていかがですか?
自分のやりたいことなので、すごく満足しています。
ただ、ビザは結構シビアです。教員はH-1Bというビザです。ビザを提供してくれている企業に勤めなければいけないので、自分のやっていることと仕事を両立するためには、かなりの時間を使います。
例えば、仕事が終わった後に深夜12時からバンドの練習をスタートして、朝の3時までやって、次の日6時から仕事……というように、寝る間も惜しんでという感じですね。
━仕事をしっかりやらないとこっちに残れないから、ということですね。
そういうことです。体力が必要ですね。
どっちもやりたいことだから続くんだと思います。やりたいという精神力があればいいと思います。音楽のためにどうでもいい仕事をやる、というのだと続かないんじゃないかなと思います。
[2col][col]
[/col][col][/col][/2col]ニューヨークで働くなら英語は日本で勉強しておくべし
学習方法はどこにいても変わらない
━英語はニューヨークに来たときから話せましたか?
大学が国立だったので、高校卒業レベルまではできましたが、英語は苦手な科目でした。
それに、アメリカに来るのを決めたのが遅かったので、英語はむしろできなくなっていましたね。数学が専門ということもあり、英会話もまったく勉強していませんでした。
ニューヨークに行って英語を勉強しようという話を聞きますが、僕は日本でやった方がいいと思います。またはニューヨーク以外の州に行くべきです。
━なぜでしょう?
確かに英語を話す環境はありますが、もっと日本人のいないところに行くべきですね。
こっちに来ても、勉強する方法は一緒なんです。会話で学ぶことも多いですが、単語、熟語の勉強もします。結局、参考書を持って来て日本でやっていたのと同じ勉強をしています。
学生の人には特に言えることですね。滞在期間が限られているわけですから、日本でできる勉強をこっちでするのはもったいないと思います。
ニューヨークに行くだけで英語がしゃべれると思ったら間違いです。僕も日本語たっぷりの環境で働いているので、まだまだ日常会話以上の英語はしゃべれません。
勉強以外のことに使う時間を確保
━住んでいてもやっぱり難しいでしょうか?
英語をしゃべれるようになるには、自分から日本語漬けの環境を出なくてはいけないですね。そして、勉強することが必要です。でも、こっちに来ると遊びたい人もいるでしょうし、仕事をしたい人もいるでしょう。そうすると時間がなくなります。
僕は音楽と仕事をやっているので、英語の勉強に時間を使えないです。ですから、日本でもっと勉強しておけばよかったと後悔しています。
こっちに来る前に猛勉強して、TOEICで700点を取りました。最初は500点でした。日本でそれくらいスコアを上げてからでないと、ニューヨークに来てから勉強するのは時間がもったいないと思います。
ニューヨークで働くためのビザを取得するまで
まずは情報収集をしっかりと
━先ほどお話にも出ましたが、就労ビザH-1Bをどのように取得したのか教えてください。
日本からインターネットでいろいろな企業の現地採用を探しました。現地採用は、アメリカにいる人だけを採用するのではなく日本からの応募も受け付けていて、ビザを出してくれるところもあります。
いろいろな企業に履歴書を送り、ひとつ引っかかったところで自分もいいなと思ったのでそこを選びました。
━行動は早い方がいいということですね。
そうですね。まずは企業とコンタクトを取りましょう。僕はニューヨークだけではなく、いろんな学校にオファーをかけました。もちろん、(インターンシップなどのための)J1ビザの学校もです。グリーンカードを持っていることが条件というところもありました。
そういうことも調べないと分からないので、まずは調べるところからです。
J1ビザとH-1Bビザの違い
━J1ビザで来ている人もいるみたいですが。
その方が確かに簡単です。でも有効期間が全然違うんですよね。H-1Bは最長6年いられますがJ1は2年で、しかもその後、日本に帰らないといけないという制約付きです。
━H-1Bを取る審査は厳しいですか?
大学卒業の学歴と教員免許だけで大丈夫でした。あとは大学の成績ですね。
H-1Bは取れる企業と取れない企業があるので、労力を使いたくないならJ1の方が楽です。ただし有効期間内でやることを決め、しっかり準備して、有意義に時間が使えるようにして挑んだ方がいいです。
※ビザ情報は2018年3月現在のものです。
ニューヨークで働いて感じる日本とニューヨークの違い
仕事面
━仕事に関してニューヨークと日本の違いは?
上司が上司っぽくないので、対人関係がガチガチしていないです。
━英語自体のフランクさが影響しているのではないですか?
アメリカ人の上司の方がよりフランクなのは確かですが、日本人もそうですよ。それぞれが自分の力を出すというスタイルで、すごく楽だと思います。のびのびできますね。
また、ダメだと思ったことや違うと思ったことを職場で言いやすいです。仕事の話をしているときは誰もが平等です。それぞれの意志を尊重する国民性だからだと思います。
━悪い点はありますか?
法律でビザを振りかざすのはダメだと決まっているのですが、良くも悪くも雇用先と主従関係であることは避けられません。企業のトップが言うことはもちろん聞くべきですし、ここにいられる一番の理由は雇用されていることなので、それを忘れてはいけません。
例えば、どんなにバンドでツアーがしたいと思っても仕事は休めないので、天秤にかけたときバンドは切らないといけません。それは学生でも同じですよね。学校をサボればターミネート(ビザ無効)通知が届きます。
生活面
━普段の生活で日本との違いを感じるのはどのような点ですか?
良い点は、人がとても温かいです。ニューヨークは差別が少ないと思います。一番うれしかったのは、参加したいバンドを探して良いバンドを見つけたので話を持ちかけたら、自分のプレイした音源を聞いてくれてすぐにオーケーがもらえたことです。
メンバーは全員アメリカ人で、中には黒人もいるし、白人もいる。そのバンドにアジア人、日本人である自分が受け入れられたことはすごく気持ちがいいことでした。
こういった点では日本の方が閉鎖的だと思います。例えば、日本の学校に黒人の先生がいないことに気づきませんか?アメリカでも黒人差別は問題になっていますが、ニューヨークには日本のような閉鎖的な部分は見当たりません。
━確かにそうですね。あまり意識していませんでした。しかし、ニューヨークでの差別は表に出てこないだけだと僕は思います。みんな、心の中ではどう思っているかわかりませんよね。
それはそうですね。
また、これは恋愛の話になりますが、男性のタイプがニューヨークと日本では明らかに違いますね。
━男性が、ですか?
こちらで恋人を作りたいという人は、女の子は大丈夫かもしれませんが、日本人男子は相当頑張らないといけないと思います。日本人男性はリードが足りないというイメージが強いんですよ。
実際に言われます。優しいのはいいのですが、レディーファーストを意識したつもりが違うようにとらえられることもありますね。
アメリカでの生活費
毎月30万円前後は必要
━ビザの取得からこちらでの生活費まで、どのくらいかかっているか教えていただけますか?
ビザは企業側がやってくれました。
家賃は1,050ドル(約11万円)で、光熱費などを合わせて1,200ドル(約13万円)くらいです。
━一人暮らしですか?
はい。広さは20畳程度ですね。場所はマンハッタンからニュージャージー側へ橋を渡ってすぐのエリアです。マンハッタンの中心部まで車で20分から25分の立地です。
車の維持費が月に250ドル(約27,000円)、若いと保険が高いんです。趣味のスタジオ代が月に100ドル(約2万円)。
合わせて月に1,500ドル(約16万円)程度が必要経費、その他食費などを含めると1カ月で2,500ドルから3,000ドル(約27万~32万円)くらい必要になります。
目的や状況に合わせて住居決定を
━稼ぎとの兼ね合いはどうでしょうか?
ちょっとずつ貯金ができる、という感じです。教員は賃金が高くない方なので、もっといい職につける人なら困らないと思います。
家賃に関しては抑えられますね。一人暮らしはかなりぜいたくをしている方だと思います。月800ドル(約85,000円)くらいでシェアハウスもありますから、自分の生活スタイルに合わせて決めるといいです。
━生活上、不便なことはありますか?
車を持っていなかった時期は、地下鉄やバスが通っていない場所だとすごく困りました。
それと、勉強するには不便という言い方もできます。先ほども言いましたが、本当に英語を勉強したい人は都心部じゃない方がいいです。
※1ドル=約106円(2018年3月現在)
ニューヨークに来て自分自身が変化した部分
━来る前と来た後、ご自身の中で何か変わったことはありますか?
何にでも挑戦できるということがわかりました。
以前は保守派で、ずっと教員として生きていくつもりだったんです。公立の教員は何かしでかして逮捕沙汰にならなければ絶対にクビがない、年功序列で安定した仕事です。
でも、こっちに来て思ったのは、30歳になっても40歳になっても自分に素直な人がいっぱいいて、日本と違う刺激があるということです。何でもやってみようという環境だから、意志がある人はどんどん上に行くし、ない人はどんどん帰っていく、そういう場所ですね。
海外に出るなら目的を明確に
━最後に、海外に挑戦しようとしている人たちにアドバイスをお願いします。
大それたことを言えるような立場ではありませんが、遊びたいと思う人は割り切って遊びに行った方がいいと思います。英語を理由にして遊びに行くくらいなら、最初から遊ぶつもりでいる方がいいです。でも、短い期間にしないと自分を見失いそうですね。
━出発前に目的をはっきりさせた方がいいということですね。
逆に勉強を目的に真面目にやっている人もいて、ここで友達になった学生の半分くらいは英語の勉強それ自体が目標になってしまっているように見えました。勉強そのものではなく、むしろその他に目標を設定する方法もあるんじゃないでしょうか。
音楽をやりたい人は結構英語が上手な人が多いんです。英語はあくまでツール、別のことが目標の人は上達が速いのかなと思います。
そして、意志がある人はどんどん挑戦すべきです。人にやってもらうのではなく自分でやる。意志があればやっていけます。何事も経験ですから、そこまで確固たるビジョンがなくても挑戦するのはいいことですね。
━ありがとうございました!
まとめ〜何のために挑戦するのか再考してみよう
教師という職業のせいか、Hさんの歳は私と近いのに、こちらがいろいろと教わることの多いインタビューになりました。特に、英語を勉強すること自体を目標にせず、手段として使う方が上達が速いという話は、個人的に大きく共感できました。
今、日本にいる皆さんも、何のために英語を勉強するのか、何を目標に海外に挑戦するのか、じっくり考えてみてはいかがでしょうか。
最後に、今回お話を伺ったのはニューヨーク14丁目のUnion Square公園西にあるスターバックスでした。
- LHH転職エージェント(未経験から幅広く求人を探す)
- JAC Recruitment(海外勤務・外資系を狙う年収600万円以上の方向け)
海外求人
あなたの挑戦を待っている!あこがれの海外企業へ就職しよう(海外求人)
【アメリカ求人】アメリカ就職を未経験からでもねらえる!転職エージェントまとめ
アメリカで働くには?アメリカで就職・転職をしたい日本人が転職前に知っておきたい11のこと
あわせて読みたい